TIKTOK, BOOM.(2022)
監督:シャリニィ・カンティア
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
CPH:DOXに『AIに潜む偏見: 人工知能における公平とは』で話題となったシャリニィ・カンティア最新作『TIKTOK, BOOM.』が来ていたので観ました。TikTokといえば映画界でもTikTokで映画紹介を行う方が注目されているだけに興味深い。本作は、そんなTikTokの光と闇を語るだけでなく、2020年代以降考える必要がある企業と国家の関係性についての問題提起を投げかけている良作であった。
『TIKTOK, BOOM.』概要
With over two billion downloads, TikTok is the most downloaded app ever, knocking both Facebook and Instagram off the throne. But the success story behind the Chinese social media, which is particularly popular with children and young people, is also a story of racism, censorship, fear and algorithms that punish you if you venture outside TikTok’s strict rules. Not least if it’s about China. Through meetings with the site’s young users and conversations with experts, tech-positive director Shalini Kantayya (‘Coded Bias’) explores the flip side of its success and what it can tell us about the tense relationship between the West and China. An Afghan-American teenage girl uses the medium to spread her political messages, a beatboxer has his big dream fulfilled through TikTok, and a Chinese-American skater is censored if his tattoos are too visible. The question is, what does Tiktok do with the endless amounts of data it collects from the app that looks back at you as you look at it?
訳:20億ダウンロードを超えたTikTokは、FacebookとInstagramの両アプリを押しのけて、史上最もダウンロードされたアプリとなりました。しかし、特に子供や若者に人気のあるこの中国のソーシャルメディアのサクセスストーリーは、人種差別、検閲、恐怖、TikTokの厳しいルールから外れると罰を受けるアルゴリズムなどの物語でもあります。特に中国に関することであれば、なおさらです。Coded Bias』のシャリーニ・カンタイヤ監督は、このサイトの若いユーザーとの出会いや専門家との対話を通して、その成功の裏側と、西洋と中国の緊迫した関係について教えてくれるものを探っている。アフガン系アメリカ人の10代の少女がTikTokを使って政治的メッセージを発信し、ビートボクサーはTikTokで大きな夢を実現し、中国系アメリカ人のスケーターはタトゥーが目立ちすぎると検閲を受ける。問題は、あなたが見ているように振り返るアプリから収集した無限のデータを、Tiktokはどうするのか、ということです。
※CPH:DOXより引用
巨大すぎるプラットフォームがもたらすディストピア
TikTokは居場所のない者に輝ける場所を提供した。学校で孤独を抱いている者は民族衣装を着る動画で一気にインフルエンサーとなった。エクアドル系の移民も、ヒューマンビートボックスで新たな人生を切り拓いた。「小さな場所から大きな夢を」をモットーに、ユーザーを増やしいつしかインスタグラムやWhatsAppを超え、世界最大規模のプラットフォームとなった。
しかしながら、そこに翳りが生まれてくる。インフルエンサーのアカウントが納得いく理由もなしに凍結されたり、他のユーザーから投稿が見えなくなるシャドウバンがされたりする。またアメリカでBlack Lives Matterが活発化して、ハッシュタグ付きの投稿が増えたが、View数が軒並み0にされたりする。さらには、顔認識でタトゥー等アプリの厳格な基準に満たない動画であれば投稿できないルールが実装されたりした。
これにメタ(旧:Facebook)のマーク・ザッカーバーグが斬り込み、TikTokと論争を繰り広げた。中国の会社が生んだTikTok。そこで収集されたデータはどのように扱われるのだろうか?これは個人情報保護に抵触してないか?居場所のない者へ輝ける場を提供してきた空間が巨大になり、やがて現実の国家や社会へ侵食する。するとプラットフォームは政治的振る舞いをはじめ、企業はもちろん国家ですら制御が難しい監視社会が生み出されてしまう。
本作は、TikTok叩きで終わることなく、巨大化したプラットフォームに対する警鐘を鳴らしているのだ。
実際、マーク・ザッカーバーグがドナルド・トランプと会談したり、TikTokを叩いたりしているところも怖い部分がある。ビッグデータを扱っているメタも、TikTokと同様の情報の扱いや監視をしている気がするのだ。しかし、TikTokを敵視することにより、その批判から目を逸そうとしているようにも見えるのだ。これは日本でも配信してほしい作品でありました。
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※CPH:DOXより画像引用