【CPH:DOX】『PRESIDENT』正義を蹂躙する不正義

PRESIDENT(2021)

監督:Camilla Nielsson

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

CPH:DOXでジンバブエ大統領選の闇を描いた『PRESIDENT』を観た。デンマークは闇ドキュメンタリーのキレが凄い国の一つであり、インドネシアの虐殺を当事者に再現させる『アクト・オブ・キリング』や国連事務総長ダグ・ハマーショルドの死の真相を探る『誰がハマーショルドを殺したか』などを輩出している。最近、ドキュメンタリー映画界隈では女性の活躍が著しく『フリーソロ』で第91回アカデミー賞を撮ったエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィが『セネガルの春』でセネガル大統領選を撮ったように、またペトラ・コスタが『ブラジル-消えゆく民主主義-』でブラジルの政治腐敗を暴いたように力強いドキュメンタリーが多数生まれている。この『PRESIDENT』も女性監督による作品で、劇映画に比べ女性の活躍が進んでいます。また本作はサンダンス映画祭ワールドシネマドキュメンタリー部門で審査員賞を受賞しています。というわけで感想書いていきます。

『PRESIDENT』概要

Hopes for a democratic future in Zimbabwe were given a new lease of life in 2017, when the military ousted the 93-year-old President Mugabe after decades of repression. The dictator is gone, but old power structures remain. This is what the young leader of the opposition, Nelson Chamisa, comes to experience during his first election campaign, which was otherwise meant to be free and fair. He is not just up against the established party, but also corruption, fraud and an economy on the brink of collapse. With unique access to the idealistic Chamisa and his team, Camilla Nielsson follows the events leading up to an election where the incumbent party controls the electoral system, the media and the police, but where the young generation has had enough. Chamisa himself is an eminent strategist who is several moves ahead of his opponents – also when the game continues in a parody of a trial after election day itself. ‘President’ is an epic and captivating film about the long and hard road to freedom and change.
訳:ジンバブエの民主的な未来への期待は、数十年にわたる抑圧の末、軍が93歳のムガベ大統領を追放した2017年に新たな息吹を吹き込みました。独裁者はいなくなりましたが、古い権力構造は残っています。これは、野党の若きリーダーであるネルソン・チャミサが、本来ならば自由で公正であるはずの初めての選挙戦で経験することになるものです。彼は、既成政党だけでなく、汚職、不正、そして崩壊寸前の経済にも直面しています。カミラ・ニエルソンは、理想主義者のチャミサと彼のチームに独自のアクセス権を持ち、選挙制度、メディア、警察を現職の政党が支配しているが、若い世代はもう十分だと考えている選挙に至るまでの出来事を追っています。チャミサ氏自身は卓越した戦略家であり、相手の数歩先を行っています。また、選挙後には裁判のパロディのようなゲームが続きます。『President』は、自由と変革への長く険しい道のりを描いた、壮大で魅力的な映画である。

※CPH:DOXより引用

正義を蹂躙する不正義

アフリカ南部に位置するジンバブエは30年も続くロバート・ムガベによる独裁に疲弊していた。2000年には白人から農地を無理やり奪う政策を観光したことにより、農作物の生産性が落ちてしまう。経済を回復させるために通貨を大量生産した結果、1ドル=3京5000兆ジンバブエドルという異常なハイパーインフレが発生し、通貨単位の切り下げを行うデノミネーションを2回実施するほど深刻な問題となった。

国民の不満が爆発し2017年にクーデターが勃発し、市民はムガベ大統領を倒した。この国に平和が訪れたかに思えた。本作の始まりは、時期大統領戦の中盤戦から始まる。若きリーダー、ネルソン・チャミサはムガベ大統領時代の政治腐敗から脱却し、人々をよき方向に導こうとしている。積極的に、各地を巡り演説をしている。そのカリスマ性もあって大人気だ。

しかし、既に腐敗しきっているジンバブエではトップが変わっただけではそうそう簡単に悪事から足を洗うことができない。選挙の投票結果をしっかり監視していないと、票が盗まれたり、短時間にありえない数の得票が集まったりするのだ。

しかも軍部が嫌がらせをしてきて、突然ネルソン・チャミサの事務所の職員が軍の車によって誘拐されそうになったり、団結する市民に対して放水したり、銃や警棒でボコボコにし始めたりするのだ。明らかに勝てると分かっている選挙なのに、恐ろしいほどの邪魔が一寸たりとも気が抜けない極限状態の選挙戦。

ルーマニアの政治腐敗を描いた『Colective』もそうだが、一度腐敗を許してしまうと、立ち上がるまでに相当なイバラ道を歩まねばならない。その地を這うような道中にカメラが食らいついた本作は日本でも上映されてほしいなと思いました。

山形国際ドキュメンタリー映画祭とかどうですかね?

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※CPH:DOXより画像引用