【 #サンクスシアター 14】『永遠に君を愛す』愛の惑い/永遠への不安

永遠に君を愛す(2009)

監督:濱口竜介
出演:河井青葉、杉山彦々、岡部尚、菅野莉央、小田豊etc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Mini-Theater AIDのリターンであるサンクスシアターの期限が迫っているので追い込みをかけている自分。今回は濱口竜介監督の短編『永遠に君を愛す』を観ました。

『永遠に君を愛す』あらすじ

待望の結婚式当日を迎えた花嫁、 永子は幸福の絶頂…のはずだが、永子には婚約者・誠一に言い出せないある「秘密」が あった。

※Filmarksより引用

愛の惑い/永遠への不安

濱口竜介監督は、人間誰しも持っているクズ属性や闇を浮き彫りにさせるのを得意としている。長い会話の中でヒリヒリとした空間を作り上げる様子は演劇的であるが、ギリギリのところで映画に倒す為魅力的だ。

本作は結婚を控えた女が何ヶ月か前に男優と肉体関係を持っていた事実をカミングアウトするかどうかを通じて、結婚というイニシエーションを通過する不安を捉えた作品となっている。

自分の思考の外部化として手紙を用いる。そして、心の中の自問自答を外部化する為に菅野莉央演じる魔性の女を配置させる。男優が何故か魔性の女に絡まれるところから歯車が狂うのだが、まるで幽霊のように男優と新婦以外見えていないかのように画を作り込むところからこのような思考の外部化の要素が強調される。

そして、修羅場を経て結婚式が敢行されるのだが、これこそが結婚であると説得力を持つ。つまり、結婚とは互いの秘密や恥を知った時、それを認め合って前に前進することだと。相変わらず不穏な修羅場を作り出す濱口竜介監督であるが、短い時間の中に哲学をガツンとねじ込んだ意欲作でした。

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