『暗くなるまでには』アノーチャ・スウィチャーゴーンポン、記憶を継承すること

暗くなるまでには(2016)
原題:Dao khanong
出演:BY THE TIME IT GETS DARK

監督:アノーチャ・スウィチャーゴーンポン
出演:アーラック・アモーンスパシリ、アピニャ・サクジャロエンスク、アッチャラー・スワン、ワイワイリー・イティヌンクンetc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、Twitterのスペースでフォロワーさんからアノーチャ・スウィチャーゴーンポン『暗くなるまでには』を観てほしいとリクエストされました。アピチャートポン・ウィーラセータクンの台頭以降、タイのアート映画は盛り上がりを魅せており、ネオンが生み出す世界観が魅力的なプッティポン・アルンペン『マンタレイ』、そしてアノーチャ・スウィチャーゴーンポン(『クラビ、2562』、『ありふれた話』etc)が世界に傑作を突き刺そうと暗躍している。新作『COME HERE』が東京国際映画祭、東京フィルメックスに来ることを祈りつつ『暗くなるまでには』を観ました。本作は、第12回大阪アジアン映画祭に出品された作品である。

『暗くなるまでには』あらすじ

タイのインディーズ映画業界で最も有名なのは2010年、タイ映画史上初、パルム・ドールを受賞したある監督だが、彼以降タイのインディーズ映画作家の層は確かに厚くなった。アノーチャ監督も現在のタイのインディーズ映画業界を牽引するひとりである。本作は10年に発表した長編デビュー作『ありふれた話』(Mundane History)後、6年越しの構想で完成した2作目の長編作品。2016年以降世界の約20の映画祭で上映された。タイのインディーズ映画は国外だけでなく、タイ国内でも注目を集めるようになり、バンコクでは定期的にインディーズ映画を上映するシネコンも出てきた。本作はある女性映画監督が70年代のタイの学生運動活動家で後に作家になった女性をインタビューする場面から始まる。そしてタイの有名男優・女優が自分自身を演じている。また、次々と転職するウェイトレスと異なる人々の人生が見えない縁で繋がれていく。

タイの映画やドラマで活躍する有名男優・女優が多数出演しているのがタイのインディーズ映画としてはとても珍しい。

※大阪アジアン映画祭サイトより引用

アノーチャ・スウィチャーゴーンポン、記憶を継承すること

ある女性映画監督が70年代のタイの学生運動活動家にインタビューする。短編映画を作っている彼女は、この元活動家の話をどのように映画へ落としこもうか考えている。

映画は学生運動の結果、軍に拘束されてしまった状況を再現し、白黒写真へと変換していく。さらにはインタビューの内容を再現したりと、ドラマとして再現したりとありとあらゆるフォーマットを使って自在に行き来する。さらには、魔法のキノコやサイケデリックな映像、デヴィッド・リンチばり(明らかに『ロスト・ハイウェイ』を意識した場面がある)の怪しげな空間に包み込んでいくためプロットを追うのは至難の業だ。

しかしながら、これはコロンブスの卵でもあり、映画監督の脳内ヴィジョンだとすれば簡単に解ける。つまり、映画の形が決まっていない状況下でインタビューを行う。インタビューを通じて得た真実をどのようなフォーマットで自分の真実として変換すれば良いのか迷う姿を画面に描きこんでいく作品なのだ。

だから同じ俳優がフォーマットが異なる世界で別人を演じていたりするのも納得がいく。ここ最近、継承の映画が熱い。デミアン・マニヴェルがイサドラ・ダンカンの踊りが継承されていく過程を撮った『イサドラの子どもたち』、震災の記憶を複雑なプロセスで継承していく『二重のまち/交代地のうたを編む』、メキシコの警察事情をドキュメンタリーから通俗なバディものへと変貌遂げながら掴み取る『A COP MOVIE』と斬新な手法で、ジャンル横断することで情報が継承される中で加工されていく過程をむき出しにした作品が沢山作られている。

アノーチャ・スウィチャーゴーンポン新作は本作の手法をブラッシュアップした作品とのことなので楽しみだ。どうですか?東京国際映画祭、東京FILMEX持ってきませんか?

※大阪アジアン映画祭サイトより画像引用

 

created by Rinker
日経ナショナルジオグラフィック社