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2021映画

【ラヴ・ディアス】『停止/THE HALT』この時、誰も知らなかった。パンデミックによる虚無の時が延々と続く世界が来ることに

シネフィル向けサブスクリプションサービスMUBIにおいて日本は冷遇されがちだ。もちろん、権利の関係もありますが、ケリー・ライカートの『First Cow』などといった目玉作品は大抵日本配信されません。海外のMUBIを覗くと、『ファイト・クラブ』のようなメジャー作品もあるのですが、こうした作品もとことん除外されるので、日本版MUBIは謎のスリランカ映画やレバノン映画が立ち並ぶエクストリームなサービスとなっている。そんなMUBIですがカンヌ国際映画祭特集の一環としてラヴ・ディアスの4時間越え作品『停止』が配信されました。日本では、数年前の東京国際映画祭で上映されたのですが、平日だった為、サラリーマンである私は観に行くことができませんでした。最近、イメージフォーラムがこの手の超長尺映画を果敢に上映してくれるのですが、ラヴ・ディアスに至ってはハードルが高過ぎて『立ち去った女』以外はまともに公開されていない。そしてラヴ・ディアス作品はMUBIが配信しなかった場合、観賞難易度が一気に上がる。というわけでMUBIにやってきた時、とても嬉しかった。

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【MUBI】『Beginning』燃ゆる終わりの始まりは果てしなく

白い教会にゾロゾロと人が集まる。そして神の教えの授業が始まる。荘厳で穢れなき空間は突如業火に包まれる。過激派が投げつけた火炎瓶によって地獄絵図となるのだ。人々は、袋の鼠となり、必死に窓ガラスを割ろうとするが、中々割れない。次のカットでは、荒ぶる業火とは対極にある草原が映し出される。大樹がそこにあり、側には女性がいる。周りでは子どもが遊んでいる。だが、フレームの外ではボウボウと業火の音が聞こえる。カットが切り替わると、人々が、心の拠り所にしていた教会が大炎上しており立ち尽くしている。その次の場面では夜になっても消えることのない炎が映し出される。と同時に、火災そっちのけで遊ぶ少年と、野次馬のように火災を見に行く少年が映し出される。事態の凄惨さをたった4カットで、紡いで行く演出だけでもこの映画の凄まじさが良くわかる。

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【ネタバレ】『Go Go Tales』ウィレム・デフォーのイケイケ物語!

正直、『アンカット・ダイヤモンド』が登場した今考えると、本作の修羅場修羅場の釣瓶打ち映画としてはワチャワチャし過ぎてそこまで評価は高くない。ましてや『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』を引用しているという点でも、どうしてもジョン・カサヴェテスの舐めるような撮影に劣る部分がある。しかし、それでもウィレム・デフォーの常時ガンギマリな演技は大迫力である。

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【MUBI】『MALMKROG』貴族のマウント合戦に参加しないか?

本作は偶然にもコロナ禍とリンクしており、前作『シエラネバダ』では狭い部屋に何人もの人を密集させてルーマニア史における世代断絶によるヒリヒリとした会話と遅々として進まない物事が描かれてきたのに対してこの『MALMKROG』では終始ソーシャルディスタンスを取りながら同様の属性違いによる意見の対立とマウント合戦が描かれていく。間合いを取り、終始絵画的構図を作っていく人間の配置の美学に圧倒される一方で、展開される哲学的な議論は非常に難解で一度観ただけではわからないところも多い。内容と歴史背景に関しては他の方に考察を譲りたいと思う。

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【MUBI】『The Seventh Walk』アミット・ダッタは絵画の立体機動装置だ

アミット・ダッタは、都会の喧騒とした時間の流れから逃れ、スピリチュアルな音楽と美しさを極めた自然や建築構造の中で絵画の再現を行い、強烈な没入感を与える。その催眠効果の五感に訴える世界は何も考えずとも楽しいものがある。

ただ、よくよく画を見つめているとアミット・ダッタによる巧妙な戦略が見えてくる。Paramjit SinghとGoogleで検索すると、印象派テイストの油絵が沢山出てくる。しかし、映画では木炭画を中心に据えてくる。息を飲むような後光差し込む森林と木炭画の陰影を対比させることで、Paramjit Singhの作品に立体感を与えていく。

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【MUBI】『波紋』セルビア、10年もの呪縛をもたらすタバコ

セルビア人兵士のマルコはボスニア、トレビニェに帰る。婚約者と会うために。マルコは親友のネボイシャと束の間の憩いを求めてカフェに訪れる。途中で小さなタバコ屋に立ち寄り「ドリナ」という銘柄を買った。その直後、タバコ屋に3人の兵士がやってくる。

「『ドリナ』を寄越せ!」

と横暴な態度で店員に話しかける。しかし、「ドリナ」はマルコが買ってしまった。売り切れだ。そのことにキレる兵士。IDを出せと威嚇し、しまいにはリンチを始める。その様子を見ていたマルコは勇敢にも彼らに立ち向かう。

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【アフリカ映画】『IN THE NAME OF CHRIST』コートジボワールの不穏すぎる儀式

豚を仕留めようとする男。彼はナイフを研ぎ、そろりそろりと豚に近づき殺めようとする。しかし、豚におしっこをかけられてしまう。それを見ていたチンピラがケラケラと笑い、村人の女性からも見下しの目が注がれる。学校でクラスメイトから笑われる羞恥の厭らしさを伝えるのに十分な笑みが画面を木霊する。

怒れる男は森の中で暴れている。自ら儀式を行なっているようだ。しかし、『メートル・フ』で描かれるガーナ・ハウカ運動のように異常な動きを行う主人公に観る者は恐怖を覚えることでしょう。『オーディション』で突然動き始める袋のような気持ち悪さがあります。そうこうしていると、子どもの霊が現れ次のように告げる。

「この世は酷い、貴方が世界を平和に導いてください。」