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【ネタバレ解説】『カメラを止めるな!』鑑賞前に《絶対に》読まないでください

【ネタバレ解説】『カメラを止めるな!』鑑賞前に《絶対に》読まないでください

【ネタバレ解説】徹底分析!『カメラを止めるな!』の超絶脚本を振り返る


※WARNING:まだ『カメラを止めるな!』本編をご覧になっていない方へ。この記事は完全ネタバレ記事です。近所で上映しておらず気になってこの記事にたどり着いてしまった貴方の気持ちはよく分かる。しかし、一生のお願いだ。本記事は読まないでくれ!いつか訪れる本作を観る時まで耐えてください。どうしても、事前情報を知りたければ、下記ネタバレなし記事をお読みください。

【ネタバレなし】『カメラを止めるな!』有給を使ってでも、地を這ってでも観て欲しい7つの理由

先日、新宿K’s cinemaで鑑賞し、『ファントム・スレッド』や『君の名前で僕を呼んで』2018年上半期ベストテンの2位に躍り出たダークホース『カメラを止めるな!』。本作は、ネタバレ地雷原につき、先日8千字かけて書いたネタバレなし記事では、全く本編に触れることができませんでした。ってことで、今日は、鑑賞した人だけが読める本作の面白さを7のポイントから振り返る復習記事を書いていきます。

1.37分ワンカットゾンビ映画は、本編ではなかった

本作は、96分の映画にも関わらず37分ワンカットゾンビ映画という情報しかSNS上で拡散されていない。というのも、残り59分はネタバレの塊。観た人は、あまりの面白さに、この59分は隠さねば!と全力で伏せているのだ!観た人のほとんどがネタバレを全力で防ごうとする程愛されている映画なのだ。

さて、本作はどんな映画なのか?まず、実は三部構成になっていたのだ。第一部で、ダメダメ低予算ゾンビ映画が展開される。そして、残りの二部でそのゾンビ映画が作られるまでの過程を描かれる。第二部で、下準備を整えた上で、第三部に移る。第三部では、37分ワンカットゾンビ映画を舞台裏目線で描写していくのだ。なので、第一部で「このゾンビ映画ダメダメじゃん!」と思っていた人は、第二部、第三部で裏切られることとなる。

そして、この第二部、第三部のドタバタコメディは明らかに三谷幸喜の『ラヂオの時間』を意識しているのだが、あっさりとそれを超えるクオリティ。見事なまでの伏線回収、意外性のある物語展開を魅せたのだ。全く予想もつかない展開。コロンブスの卵ともいえよう、今まで何故誰も映画にしなかったのだ!というシャープに攻めたテーマに圧倒された。

2.伏線は二度貼られる
(しゅはまはるみ扮する日暮晴海に注目)

37分ワンカットゾンビ映画の正体が、映画内幕ものだと言うことは、コロンブスの卵、言われれば分かる。しかし、こうもまんまと第二部に衝撃を受けてしまったのはなんなんだろうと思って、800円のパンフレットに掲載されている脚本を熟読した。そして気が付いた。第一部内で伏線を張り、しっかり回収する描写があったのだ。それが、しゅはまはるみ扮するメイクさんの描写にある。

突如、扉の方から「ドン!」と音がする。

すると急に怖くなったのか、男優がメイクさんに「趣味って何ですか?趣味」と訊く。急に訊かれたもんだから、メイクさんは「護身術」という。急に冷めていく会話。何とかギコチナイ空間を元どおりに戻そうとする三人。そしてメイクさんは男優さんに、羽交い締めされた時の対処として「ポン!」っと両手をあげる技を魅せる。このシュールな珍場面が、劇中で伏線として使われるのだ。ガチなゾンビに襲われていくスタッフ。極限状態により狂気にかられるメイクさんを周りは止めようとする。その時に、あの「ポン!」という技が使われ、伏線として回収されるのだ。

ワンカットの中で既に小さな伏線張り及び回収を行うので、その外側にある大きな伏線が見えなくなるのだ。この細かいテクニックに一本やられました。

3.鬼畜ゲス監督は、涙のアクションだった
(濱津隆之扮する日暮隆之に注目)

ブンブンが本作で一番気に入ったキャラクターは、濱津隆之扮する日暮隆之だ。第一部では、狂気にかられるクソ監督にしか見えない。どうかしている鬼畜さっぷりに、サイコ以外のものは一切感じなかった。しかし、第二部に移ると、ゾンビ専門チャンネルの企画で30分生放送のゾンビドラマ制作に携わる羽目になってしまった男としての彼が映し出される。家族からは尊敬されておらず、いく先々で謝ってばかり。涙が出るくらい気弱な男なのだ。しかも、第二部の前半の時点では、ゾンビドラマ本編に出演しないことになっているのだ。

そんな彼が、何故、本編で監督役として出演し、女優に対して狂気じみた演技をするようになったのかという謎解きが第二部全体で描かれていたのだ。

突如、監督役が当日に欠席するアクシデントが発生してしまうのだ。窮地に陥った監督は、自らその役を演じる。
そんな彼が放つ「本物をくれよ!恐怖に染まった本物の顔、顔、顔!」というセリフは、娘が撮影現場で役者である少女に本物の涙を引き出す為放った言葉でもある。娘が、本気で仕事をしている姿に自らを重ね、あまりにもリハーサルで生意気な態度をとる女優に対して、自分も何とかしないといけないという想いが炸裂する。

そして、狂気じみた監督を止めようとする男優に対してのビンタも本気のものと化けた。文句だけいって、何も改善しようとしない彼に対する怒りのビンタを日暮隆之は男優にするのだ。そう、ドラマでの彼の振る舞いは、無茶振りに耐えきれない、でも企画を成功させたい男の《演技》を超えたものだったのだ。この哀しすぎる展開、泣けてきます。

4.2つの顔を持つ女優、確かに主演女優賞ものだ
(秋山ゆずき扮する松本逢花に注目)

K’s cinemaで並んでいる時、前に並んでいた上田慎一郎監督ファン、『カメラを止めるな!』ファンの方がこう語っていた。

「ある業界人が言っていたのだが、これは今年の作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞を与えるべきなんだって」

鑑賞前、「作品賞、監督賞、脚本賞は分かるが、主演女優賞?」と疑問だった。しかし、これはマジで秋山ゆずきに主演女優賞を与えたい素晴らしい演技を魅せていた。ネタバレなし評でも書いたが、第一部の37分ワンカットゾンビ映画で彼女は成長を遂げる。最初は大根演技。監督が、「本物をくれよ!恐怖に染まった本物の顔、顔、顔!」罵声を浴びせるのも無理ない程酷い。それが、「ゾンビ映画を撮っていたら、本物のゾンビに襲われ窮地に陥る」という極限状態を通じて彼女は成長していくのだ。37分後半では、もはや《演技》であることは捨てられ、《本物》を魅せる。この『ハッピーアワー』に近い女優の演技の変化に燃えた。本作はENBUゼミナール映画。ワークショップ映画だ。なので、『ハッピーアワー』のように等身大の演技の成長を撮ったものだろうと思い込んでいた。しかし、この演技の変化は、本物ではなくフェイク、《演技》だったのだ。

第二部で本作が作られるまでの過程が描かれる。そこで37分ワンカットゾンビ映画のヒロインを演じた女優が相当な大根、クズ女であることが分かる。できない、やりたくない演技は「事務所がNGなんで」「涙は目薬でいいですか」と飄々と回避する。本作に情熱はなく、ただギャラの為に仕事しているだけの女優なのだ。そう、37分ワンカットゾンビ映画本編での彼女の変貌は、本当に大根女優が成長する姿を収めたドキュメントとなっているのだ。

つまり、秋山ゆずきは、「大根女優が成長するまで」を重層的に演じきった。その姿は、虚実が分からなくなるほど精巧で、もはや秋山ゆずきというアイデンティティは映画の中では無となっていた。これは凄い!凄すぎる!

5.録音マンは何故フレームに?
(山﨑俊太郎扮する山﨑俊助に注目)

第一部で、謎に映り込む録音マン。彼の扱いがありそうでなかった。てっきり、演出ミスかと思ったら、いきなり扉を飛び出し、「うわーーーーー」と叫ぶ。あまりにトリッキーなゾンビに襲われる場面だと思い込む。

そんな彼の正体の答え合わせは、じっくりと時間をかけて明かされていく。第二部での彼は、強面の録音マン。スタッフにいちゃもんをつけるイヤーなスタッフだ。彼のこだわりは、「水」。硬水は苦手なんだとか。そんな彼が、生放送直前に、うっかり他のスタッフの「水」を飲んでしまうのだ。それが硬水だった。そして、彼は本番生放送中にゲリラゲリに襲われてしまうのだ。

もう、録音どころじゃない。彼の脳裏にはもはや「ゲリラゲリ ゲリゲリゲリラ ゲリラゲリ」とゲリ川柳しか流れない。それ故に、うっかりカメラに写り込んでしまったのだ。そして、彼が飛び出した扉の先で何が行われていたのか?それは、ウンコに行きたい彼と、それを止めるスタッフのバトルだった。この展開にまたしても一本取られました。

6.乱れカメラワークその訳は…

ドラマ本編、途中でカメラワークが変わる。これにもきちんと仕掛けがある。腰痛持ちのカメラマンが撮影中にコケて、戦闘不能となり、その助手がその後の撮影を担当していたのだ。この腰痛持ちのカメラマンという要素、さらっと流していたので無意識の彼方に追いやられ気がつかなかった。それだけにネタあかしされた時、そこも伏線回収するんだと驚かされました。

7.組体操は演技ではなく、マジだった!

そして、本作のクライマックスは、壊れてしまったカメラのクレーン装置の代わりにスタッフ、役者の組体操でもって代用する。このシーン、めちゃくちゃスリリングで手汗にぎる緊張感がある。カメラが何度パンしても、組体操が出来上がっていないのだ。パンフレットを読むと驚きの事実が明らかに!何と、本番当日まで組体操は一度も成功していなかったのだ。あそこのスリリングな場面は、演出ではなく、ガチで組体操に苦戦している人を撮ったドキュメンタリーだったのだ。完全にまいりました。

最後に…

本作は、改めて、今年の作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、主演男優賞ノミネート確実、何なら賞を総ナメしてもおかしくないほどに面白い作品でした。最近の賞を獲るような映画、ベストテンに挙がるような映画は政治的だったり貧困等の社会問題を扱った作品が多い。どうしてもそういった作品の方が評価しやすい。しかし、ここまで純度の高い娯楽に徹した映画を観ると、ブンブンがすっかり忘れてしまった映画の《娯楽性》を思い出させてくれる。

ゾンビ映画をジョージ・A・ロメロ寄りの社会派ではなく、かといって『インド・オブ・ザ・デッド』のようなバカ映画寄りでもない新境地を開拓し、尚且つフェリーニさながら映画愛に満ち溢れた映画内幕モノを完成させてしまう超絶技巧、本当に素晴らしかった。上田慎一郎監督および、役者スタッフの皆さん、ブラボー!!!

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