【 #死ぬまでに観たい映画1001本】『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』制作が「闇の奥」になる瞬間

ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録(1991)
HEARTS OF DARKNESS: A FILMMAKER’S APOCALYPSE

監督:ファックス・バー、ジョージ・ヒッケンルーパー、エレノア・コッポラ
出演:サム・ボトムズ、マーロン・ブランド、コリーン・キャンプ、エレノア・コッポラ、フランシス・フォード・コッポラ、ロマン・コッポラ、ソフィア・コッポラ、ロバート・デ・ニーロ、ロバート・デュヴァル、ローレンス・フィッシュバーンetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

伝説の映画『地獄の黙示録』舞台裏を撮ったドキュメンタリー『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』が「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されている。元祖メイキングビデオでもある。ところで、最近思うのだが、かつてメイキング映像は本作のように別々に公開された。それが90年代以降DVDの時代になってからDVDやブルーレイの特典として付けられるようになった。しかし、最近はDVD、ブルーレイ文化がVODの台頭で消滅しかけている。Netflixでは『ROMA/ローマ』の舞台裏を撮った『ROMA/ローマ 完成までの道』が別配信されるようになった。つまり、メイキング映像が映画の付属として存在した時代は約20〜30年だったという映画史が刻まれようとしているのではないだろうか。それはさておき、『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』の感想を書いていく。

『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』

フランシス・フォード・コッポラ監督が巨額の私財を投じて撮りあげた戦争映画の傑作「地獄の黙示録」の製作過程を捉えたドキュメンタリー。フィリピンでの映画撮影に同行した監督の妻エレノア・コッポラが撮影した約80時間にも及ぶ映像とプライベートな録音テープを中心に、マーティン・シーン、デニス・ホッパー、ジョージ・ルーカスらキャスト・スタッフ・関係者へのインタビューや、劇場公開版でカットされたシーンなどを交えながら、困難を極めた撮影の舞台裏と、全てを懸けて作品を完成させようとするコッポラ監督の姿を映し出す。

映画.comより引用

制作が「闇の奥」になる瞬間

膨れ上がる製作費、度重なる天候による撮影遅延により延々と終わらず狂乱の現場だった一方で、完成した作品はカンヌ国際映画祭最高賞のパルム・ドール受賞はもちろんヒットもした伝説の映画『地獄の黙示録』。フランシス・フォード・コッポラの妻エレノア・コッポラの視点で撮られた本作は、彼が段々と「闇の奥」におけるクルツになっていく様子が描かれていく。「アメリカはショーに関して一流だ」と豪語しながら、本物の戦闘機を出動させる。アメリカ人1名の給料でフィリピン人100名雇える為、600名近い現地人を使って巨大なセットを作り上げる。この様子は奴隷に巨石を運ばせてピラミッドを作らせる様子に近い禍々しさを感じる。そして、常時破壊と狂乱が渦巻くうだるような暑さの白昼夢に、観るものも危険だと分かりながら取り込まれていってしまうのだ。何よりも、撮影現場が楽しそうに思えてしまう。

一方で、本作を見るといかに白人が東洋人を見下しているのかがよく分かる。それは現場の中心にいる者だけではなく、エレノアの現地の文化に対して軽く扱っているような視線からも感じる。表向きは「彼らを搾取したくない。」と言っても、行動の片鱗に見下しているようなものを感じるのだ。本作は、「闇の奥」を作る者が原作に取り込まれ、映画の制作事態が「闇の奥」そのものになってしまう様子を捉えた奇妙な作品と言えよう。

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※IMDbより画像引用

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