【Netflix】『ROMA/ローマ 完成までの道』キュアロンの企画を通す力にただただ平伏すのみ

ROMA/ローマ 完成までの道(2020)
Camino a Roma

監督:アンドレス・クラリオンド、ガブリエル・ナンシオ

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、Netflixで『ROMA/ローマ 完成までの道』が配信されました。本作は、鬼才アルフォンソ・キュアロンが極私的映画にして第75回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞、第91回アカデミー賞10ノミネート3部門受賞の快挙に輝いた『ROMA/ローマ』の制作舞台裏を描いたドキュメンタリーです。色彩を得た舞台裏で、どのように本作が作られたのかが明かされていきます。

『ROMA/ローマ 完成までの道』概要


子供の頃の思い出とその時代を忠実に再現するために、アカデミー賞受賞映画「ROMA/ローマ」で貫いた妥協を許さぬこだわりをアルフォンソ・キュアロン監督が語る。
Netflixより引用

キュアロンの企画を通す力にただただ平伏すのみ

本作を観ると、抽象的で極私的世界を映画として企画し、完成に漕ぎ着けたアルフォンソ・キュアロンの企画力とリーダーシップに圧倒されます。日本であれば、上司や関係者の会議で速攻却下されるようなことを平然と彼は具現化してしまうのです。彼は、今回、自分の幼少期の記憶を鮮明に捉えるために、一切他の映像作品を参考にしなかったと語ります。そしてスタッフと一緒に、幼少期に存在していた家具や景色を完璧に再現しようとするのです。タイルの一つとっても、記憶と違うものであればそこで止まってしまう。そして記憶から生み出されるものを歴史的裏付けでブラッシュアップしていくので、ファクトチェックを十分に通している。

撮影は、即興的で子供たちには軽い説明を与えるのみで、自由に世界の中を動き回らせる。それ故、演技経験のある役者は、今までの知識や経験を一度忘れる必要がある。演じようとすればするほど、現場で起こるハプニングに対処できなくなってしまうからです。

アルフォンソ・キュアロンは、自分の感性だけを信じ、仲間が理論を基に提案してきた撮影案を否定する。そうじゃない。心で映画を作るのだと。そして、大勢のエキストラを、人口統計を基にして、完璧にあの時代を再現しようとしていったのだ。

まさしく、『ROMA/ローマ』はアルフォンソ・キュアロンにとっての『失われた時を求めて』である。プルーストとは違い、彼は映画監督だ。何百人ものスタッフをコントロールして作り出す、この豊穣なる私小説。それを生み出すだけの土壌と、それを生み出してしまう底力にただただ、指を咥えて見守るしかなかった。

これは『ROMA/ローマ』を観た方はもちろん、会社で上手くいかず悩んでいる人にとってのサプリメントになり得る作品と言えよう。

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