【東京フィルメックス】『照射されたものたち』3画面に刻む記憶

照射されたものたち(2020)
Irradiés

監督:リティ・パン

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第70回ベルリン国際映画祭でドキュメンタリー賞を獲った『照射されたものたち』を第21回東京フィルメックスで観た。リティ・パンと言えば、『消えた画 クメール・ルージュの真実』でポル・ポト政権による虐殺を土人形を用いて再現するユニークな手法で有名である。そんな彼が今回、3画面という手法を用いて広島、長崎の原爆投下、ナチスのホロコースト、カンボジアのポル・ポト政権下の虐殺を描いた意欲作である。これが厄介な作品であった。

『照射されたものたち』あらすじ


広島、長崎の原爆投下、ナチスのホロコースト、カンボジアのポル・ポト政権下の虐殺。人類史上の3つの悲劇を大量の資料映像のモンタージュによって描いたリティ・パンの最新作。ベルリン映画祭コンペティションで上映され、最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞。
※東京フィルメックスサイトより引用

3画面に刻む記憶

3画面の中に、広島、長崎原爆投下後の街並みが映し出される。かつてアベル・ガンスは『ナポレオン』の中で3画面という手法を用いてスペクタクルを表現していたが、3画面とも同じ風景が投影される。映画とは一回性の現実を複製できる存在だ。複製できることは、痛みをアーカイブすることであり、痛くも未来にその痛みを伝える役割がある。それを強調するために3画面を使ったと思えるこの演出に驚かされる。そして自由自在画面サイズを変え、途中からナレーションで語ることを諦め、観客の感性に全て委ね始める。回転するネズミ、宝石のように煌めくDNA配列と思しき画、太陽か爆発かそれとも瞳なのか判別し難い代物を観客に突きつけてくる。ヴェルナー・ヘルツォークやテレンス・マリックのようなスピリチュアルに包まれた本作には圧倒される。コラージュ映画として面白いのだが、同時に同祭上映の『平静』でのワンシーンのように、「これは映画館で上映する意味はあるのか?」という疑問が湧いてくる。東京都写真美術館や森美術館で上映すればいいのではないだろうか?3画面で何かを語ろうとするのは、数年前に森美術館でのインスタレーションで目撃しているだけに、本作は第70回ベルリン国際映画祭の受賞を意識し過ぎた作品に思えた。

※映画.comより画像引用

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