『鳩の撃退法』藤原竜也から煌めく胡散臭さを引き出す方法

鳩の撃退法(2021)

監督:タカハタ秀太
出演:藤原竜也、土屋太鳳、風間俊介、西野七瀬、佐津川愛美、桜井ユキ、柿澤勇人、駿河太郎、浜野謙太、岩松了etc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

皆さんは好きな俳優はいますでしょうか?

私も映画好きとしてよく訊かれるのですが、正直「あなたの生涯ベストを教えてください」よりも難しい。というのも、私はあまり俳優で映画を観ることはな異からだ。なので、好きな俳優はほとんどいないのが実情である。特に女優は困る。仕方がないのでエル・ファニングと言ったりして誤魔化している。そんな私にも、積極的に拝みたい俳優は数人いる。ジェイソン・ステイサム、草彅剛、そして藤原竜也だ。彼らが出ていると元気が貰える。観るレッドブルとして出演作が公開されれば、なるべく観に行きます。

さて、今回は藤原竜也The Movie『鳩の撃退法』を観に行きました。

『鳩の撃退法』あらすじ

直木賞作家・佐藤正午の同名ベストセラーを藤原竜也主演で映画化。都内のバー。かつて直木賞を受賞した天才小説家・津田伸一は、担当編集者の鳥飼なほみに執筆中の新作小説を読ませていた。その内容に心を踊らせる鳥飼だったが、津田の話を聞けば聞くほど小説の中だけの話とは思えない。この小説が本当にフィクションなのか検証を始めた鳥飼は、やがて驚きの真実にたどり着く。謎めいた小説家・津田を藤原、津田に翻弄される担当編集者・鳥飼を土屋太鳳、津田とコーヒーショップで出会った日に失踪したバーのマスター、幸地秀吉を風間俊介、津田の行きつけのコーヒーショップ店員・沼本を西野七瀬、彼らが暮らす街の裏社会を仕切る倉田健次郎を豊川悦司が演じる。監督は「ホテル ビーナス」のタカハタ秀太。

映画.comより引用

藤原竜也から煌めく胡散臭さを引き出す方法

藤原竜也は演劇的迫真の演技が個性となっており、その暑苦しさからお笑い芸人に物真似されたり、通俗な映画ばかり出演しバカにされる傾向がありますが、私は彼は素晴らしい俳優だと思っている。

彼の真骨頂はついつい信じてみたくなる胡散臭さを醸造し、映画全体を通して観客を世界に引き摺り込むことにある。例えば、『カイジ』シリーズでは、そもそも原作とは全く似ていない主人公の仮面を奪い取り、世間に漫画のヴィジュアルと実写のビジュアルを共存させてしまう偉業を成し遂げている。そして映画では、クズでカリスマ性ゼロな側面と、窮地に人々を引きつけるカリスマ性のシーソーゲームを胡散臭さ、貧乏くささ、暑苦しさのガソリンで的確にコントロールしていく姿がスリリングだ。このアンバランスさが、勝てるかもしれないし負けるかもしれないフィフティ・フィフティの緊張感を生んでいる。彼が人を仲間し、敵を欺くのに説得力があるのです。

さて、『鳩の撃退法』ではどうか?タカハタ秀太監督は、藤原竜也から煌めく胡散臭さを引き出すことに成功している。スキャンダルによって文壇を退いた小説家・津田伸一が新作を書き始め、原稿を担当者なほみ(土屋太鳳)に渡す。彼が語る内容が明らかに実際に彼の身に起きた内容であり、どうもヤクザが絡んでいる。もし彼の新作を出版したら、クビが飛ぶかもしれないが、彼の嘘に付き合いたくなる。藤原竜也演じる、津田はクズであり、すぐ「金貸して」と言うどうしようもない奴だ。だけれども、彼の捲し立てるような話術はどこか、彼の罠に嵌ってみたくなる甘美なものを感じる。

本作は佐藤正午の同名小説の映画化である。映画が視覚芸術であることを意識して、敢えて序盤から決定的なシーン、例えば津田が無人駅に人を送り届けたら、彼が別の車で女と交わるといった強烈なヴィジョンを描く。それを点のように散りばめ、文章からさらに掻い摘んで行間を広くする。これにより、中盤にかけて、偽札がある種のマクガフィンのように人を軽妙に動かすトリガーとなって線を形成する。そして、そこから思わぬ扉が開いていく。こうした映画的翻訳の妙もあり、映画館も満席近く埋まるのも納得な入れたり尽せたりな作品となっているのだ。

細かい謎解きの部分は他のブロガーにお任せしますが、ワクチン注射2回目でテンション下がった私の心を癒してくれました。

※映画.comより画像引用