【アフリカ映画】第27回ワガドゥグ全アフリカ映画祭ラインナップ発表

【アフリカ映画】第27回ワガドゥグ全アフリカ映画祭ラインナップ発表

おはようございます、チェ・ブンブンです。

皆さんはブルキナファソをご存知だろうか?アフリカ北西部に位置する国である。ここで2年に一度、アフリカ人のアフリカ人によるアフリカ人のための映画祭ワガドゥグ全アフリカ映画祭(FESPACO)が開催されている。映画に詳しい方もブルキナファソと映画はあまりピンと来ないかと思うが、アフリカ映画史に置いてブルキナファソは非常に重要な拠点となっている。

アフリカ映画史入門

それについて話す前に、まずアフリカ大陸と映画の関係性について軽く語る。アフリカはアメリカやフランス、インドと違って「アフリカ」という雑な括りで語られがちだが、これは批判すべき事象である一方、100%否定することはできなかったりする。映画史初期、ロバート・フラハティがサモア島やイヌイットの人々を撮るドキュメンタリーを作ったように、フランスやベルギーの映画監督は啓蒙の為アフリカへ渡り、映画撮影をした。オリエンタリズムの観点からアフリカが撮られていた。それに対して、アフリカの映画監督たちは映画に可能性を見出しつつ、やがて「アフリカ人のアフリカ人によるアフリカ人のための映画」を作ろうとし、1955年の『セーヌ河畔のアフリカ(Afrique-sur-Seine,1955)』を筆頭に映画が作られるようになった。小説家の道を歩もうとしていたセンベーヌ・ウスマンは、文盲が多いセネガルの地において文章によって問題提起することの限界を感じ映画監督として活躍するようになる。自身の小説『ハラ(不能者)(Xala,1975)』も映画化した。一方で、フィルムの管理方法や映画の撮影技法の共有、コートジボワールのように国内に20もの言語がある環境での映画文法の確立といった多くの問題を抱えており、経済的に一つの国で対処できるものではなかった。

ブルキナファソ=アフリカ映画の拠点

ブルキナファソの首都ワガドゥグはアフリカ人の映画のノウハウを集約する拠点として1960年代から活動を開始した。また、FESPACOは1969年から隔年でここ数年のアフリカ映画のトレンドを集める見本市として機能するようになった。そして、全アフリカ映画センター(CIPROFILM)、全アフリカ映画社(CINAFRIC)、アフリカ映画教育学院(INAFEC)が設立され、アフリカの映画業界を支えることとなった。しかしながら、ブルキナファソが本格的に長編映画を作るようになり、国際的に評価されるには1980年代後半、イドリッサ・ウエドラオゴの登場まで待たないといけません。1982年までには長編映画は3本しか作られなかったのだ。1982年に国立映画センター館長であるガストン・カボーレが製作した『ウエンド・クーニ(Wend Kuuni,1982)』がフランス・セザール賞でフランス語圏映画賞(Meilleur film francophone)を受賞するまでは、国際的にもほとんど認知されていなかった。尚、本作は行商人が道中倒れていた無口の子を拾ってくる人情ドラマとのこと。ちなみに、日本ではTSUTAYA渋谷店にてVHSですが2本のブルキナファソ映画を借りることができる。『ヤーバ(Yaaba,1989)』、『掟(Tilaï,1990)』どちらもイドリッサ・ウエドラオゴ監督の作品である。

さてそんなブルキナファソで開催されるFESPACOだが、アフリカ映画を追っている人は要チェックである。実はこの映画祭のコンペ経験者が、後に大出世することがあるのだ。直近の例で言えば、第93回アカデミー賞視覚効果賞にノミネートされたNetflix配信作品『ラブ&モンスターズ』。この監督であるマイケル・マシューズは、南アフリカ版西部劇『ファイブ・ウォリアーズ(Five Fingers for Marseilles,2017)』が第26回FESPACOの長編映画部門に選出されている。グランプリ作品を確認すると、「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載作品である『アリ・ザウラ(Ali Zaoua,2000)』や日本でも一般公開された『テザ 慟哭の大地(Teza,2008)』、『わたしは、幸福(フェリシテ)(Félicité,2017)』などが受賞している。

2021年2月に開催予定だったものの新型コロナウイルスCOVID-19のパンデミックにより第27回大会は無期限延期となり開催が危ぶまれていましたが、この度2021年10月16日から27日の期間で開催が決定しました。

今回はアフリカ55ヶ国中50もの国、そしてアジア、アメリカ、ヨーロッパから27ヶ国から1,132本の映画が集まり、239本の作品が選出されました。今回の審査員長は『禁じられた歌声(Timbuktu,2014)』のアブデラマン・シサコでメンバーには『アトランティックス(Atlantique,2019)』のマティ・ディオップがいる。

という訳でFESPACOの選出作品を紹介していく。

今回取り上げるのは、公式コンペティション長編ノンフィクション部門(COMPETITION OFFICIELLE:FICTIONS LONG METRAGE)全17作品。それ以外の部門については、公式のPDFを確認していただきたい。

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