『孤狼の血 LEVEL2』狼が遠吠えするだけでは傑作は生まれない

孤狼の血 LEVEL2(2021)

監督:白石和彌
出演:松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、西野七瀬、中村梅雀、早乙女太一、斎藤工(齊藤工)、吉田鋼太郎、滝藤賢一、中村獅童etc

評価:35点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

友人からのリクエストで『孤狼の血』の続編『孤狼の血 LEVEL2』を観てきました。前作は、役所広司演じる大上の怪演が『トレーニング デイ』のデンゼル・ワシントンを彷彿とさせられまあまあ面白かったのですが、今回は彼不在である。一抹の不安は…杞憂ではありませんでした。

『孤狼の血 LEVEL2』あらすじ

柚月裕子の小説を原作に、広島の架空都市を舞台に警察とやくざの攻防戦を過激に描いて評判を呼んだ、白石和彌監督による「孤狼の血」の続編。前作で新人刑事として登場した松坂桃李演じる日岡秀一を主人公に、3年後の呉原を舞台にした物語が完全オリジナルストーリーで展開する。3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれて殺害された、伝説のマル暴刑事・大上の跡を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡。権力を用い、裏の社会を取り仕切る日岡に立ちはだかったのは、上林組組長・上林成浩だった。悪魔のような上林によって、呉原の危うい秩序が崩れていく。日岡役を松坂、上林役を鈴木亮平が演じ、吉田鋼太郎、村上虹郎、西野七瀬、中村梅雀、滝藤賢一、中村獅童、斎藤工らが脇を固める。前作に続き、白石和彌監督がメガホンを取った。

映画.comより引用

狼が遠吠えするだけでは傑作は生まれない

『ヤクザと家族 The Family』が擦り倒された深作テイスト、つまり『仁義なき戦い』オマージュからの脱却を行っているのに対し、こちらは正面から深作テイストに迫る。前作では、モンスター大上(役所広司)の制御不能な動きが、深作テイストに頼りすぎてしまうことから逃れられていた。しかし、本作はどうだろうか?

確かに内容は面白い。大上のある種後継者となった日岡(松坂桃李)。風格はあるが、大上程の度胸のない彼は、表向き荒々しく警察と裏社会を行き来しながらも、手口に大胆さはなく、こそこそ敵組織・上林組に刺客を送り込む。悪魔のように残忍な上林成浩(鈴木亮平)が牙を剥くことで、自分のはりぼて の狼が身ぐるみ剥がされていく。

だが、演出があまりにも退屈だ。とにかく恐ろしい怒声と悲鳴を捉えておけば様になるだろうという浅はかさが、似たようなシーンの連続を生み出し、飽きてくる。思い出したかのように、『仁義なき戦い』のナレーションオマージュをする。このセンスのなさにダサさを感じる。

アクションは、カットを割りすぎていて、突発的な暴力による恐怖が画に落とし込めておらず、内容はフィルムノワールのように人間の闇まで迫っており、わざわざ暗闇に雨の反射による光を取り入れているのに、それが活かされず、ただただ汚い絵面の回転寿司となってしまっている。『鵞鳥湖の夜』を観てご覧なさい。官能的な水から不吉な腐敗臭が流れ、突然得体の知れない場所からの発砲で群れが散り散りになる画的快感があるではないか。汚い食事シーンも、そのどうしようもない麺が食べたくなるほどの魔力がある。この映画の、例えば指詰めする直前のハンバーガーにその魅力はあるのか?

ただただ勢い任せで空ぶっている、その癖イキっている。まさしく日岡そのものな映画に大変がっかりした。

実は藤井道人監督と共同で撮っていれば、『ヤクザと家族 The Family』も本作もいい作品になったのかもしれませんね。

※映画.comより画像引用