【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『処刑の丘』死は静かに激しくやってくる

処刑の丘(1976)
原題:Восхождение
英題:The Ascent

監督:ラリーサ・シェピチコ
出演:Boris Plotnikov, Vladimir Gostyukhin, Sergei Yakovlev etc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されているラリーサ・シェピチコ『処刑の丘』をモスフィルムの公式youtubeチャンネルで英語字幕付き配信されていたので観ました。ラリーサ・シェピチコと言えば『炎628』のエレム・クリモフの妻として有名で、彼女の代表作である『処刑の丘』シネマヴェーラのソ連映画特集でよく上映されているイメージがある。本作は、「死ぬまでに観たい映画1001本」マラソンランナーの間でも人気な作品のようなので万全の体調で挑みました。

『処刑の丘』あらすじ

Two Soviet partisans on a mission to gather food contend with the winter cold, the occupying Germans, and their own psyches.
訳:食料調達を目的とした2人のソビエトのパルチザンが、冬の寒さ、占領軍であるドイツ軍、そして自分たちの精神に立ち向かう。

imdbより引用

死は静かに激しくやってくる

何もないような雪の空間から兵士がむっくりと現れ唐突に激しく銃撃戦が行われる。しかし、誰が敵なのかが分からない。観客はまるで戦場に放り込まれた子羊のように至近距離で死んでいく人々を目撃する。それを嘲笑うかのように、ドライに出演者やスタッフがテロップで表示される。このシークエンスだけで『処刑の丘』がただならない作品であることがよく分かる。

生き残った2人の兵士Sotnikov(Boris Plotnikov)とRybak(Vladimir Gostyukhin)は雪の荒野を彷徨う。Sotnikovは体調が悪そうだ。ねっとりとした咳が銀世界に響き渡る。敵はいつ、どこで現れるのか分からない。現れて銃撃戦になっても、カメラはひたすらこの2人を捉えているので、観客は戦況のわからなさに恐怖する。フレームの外側を豊かに使い込んだ演出に痺れます。

そして雪の荒野だけの演出でなく、B級映画で雑に演出されそうな熱の金属を皮膚に押し付けられる拷問場面も、ラリーサ・シェピチコの手にかけられれば、巨男に拘束される絶体絶命と、観念しても痛みがその観念による逃げを許さない執拗さを画の圧で叩きつける。

極め付けは、邦題になっている「処刑の丘」である。丘を登ると、処刑場が見える。その時の絶望感。それを強調するように対位法として、恐怖の対極にある曲をバックに流すのだ。

本作は、戦争映画、アクション映画の枠組みを超えて、映画の演出技法の教科書として素晴らしい。もし私が映画論を教えるのであれば、『処刑の丘』でレポートを書かせたいなと思う。

 

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