【ドン・ハーツフェルト特集】『明日の世界Ⅲ:デイヴィッド・プライムの不在なる行き先』クローンをクリーンする

明日の世界Ⅲ:デイヴィッド・プライムの不在なる行き先(2020)
WORLD OF TOMORROW – EPISODE THREE:THE ABSENT DESTINATION OF DAVID PRIME

監督:ドン・ハーツフェルト

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

鬼才ドン・ハーツフェルト『明日の世界』最終章を観ました。三部作の中では一番長い。前2作が20分くらいなのにあれだけの情報量だった。本作が一番情報量が多いのですが、クリストファー・ノーランが観たら実写でやりそうだなと思う内容だった。

『明日の世界Ⅲ:デイヴィッド・プライムの不在なる行き先』あらすじ

A hidden memory sends David across the far reaches of time and space to solve a deadly mystery involving his time-traveling future selves.
訳:隠された記憶を頼りに、デビッドは時空を超えて、タイムトラベルした未来の自分たちが関わる致命的な謎を解き明かす。

imdbより引用

クローンをクリーンする

ドン・ハーツフェルトは『明日の世界』に影響与えた作品として『ラ・ジュテ』や『ブレードランナー』、『2001年宇宙の旅』などを挙げているが、その影響を露骨に受けたのがこの最終章だ。そして本作がシリーズの中で最もアクションをしており、クリストファー・ノーランが観たら、時空の狭間を浮遊する処刑人であるクリーナーが抹殺行為を行う背後に侵入し、射殺し、その背後にまた別のクローンが殺害に現れる展開を真似するのではないかと思うほどノーランっぽい映画であった。

正直、時系列やストーリーはよくわからないものの、アニメーション表現として異次元の領域にいっているのは言及したい。棒人間のような抽象化されたヴィジュアルにもかかわらず、容量不足で概念が削除されていき、ついには歩行の概念を失ったデヴィッドが這いつくばりながら荒野を進む場面の、人間のような滑らか官能的な動きには感動した。抽象化された肉体をここまで人間的に魅せる。

『明日の世界』が抽象的世界から人間心理を捉えたことを象徴させる名シーンだったと言えよう。

『明日の世界』を一気観したのですが、この圧倒的映像の洪水。言葉にできない映像体験はまさしく『20021年宇宙の旅』でスターゲイトを抜けるボウマン船長の気分を疑似体験させてくれるものであった。簡単に言語化して消費したくない。いつまでも自分の中で留めておきたい。ガイ・マディンに匹敵する思い出の映画となりました。

※imdbより画像引用