【ドン・ハーツフェルト特集】『明日の世界Ⅱ:他人の思考の重荷』不完全な鏡像

明日の世界Ⅱ:他人の思考の重荷(2017)
World of Tomorrow Episode Two: The Burden of Other People’s Thoughts

監督:ドン・ハーツフェルト

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

鬼才ドン・ハーツフェルト『明日の世界』三部作第二弾を観賞しました。これまた情報の暴力で観る者を殴りつけてくる作品でした。

『明日の世界Ⅱ 他人の思考の重荷』あらすじ

Emily is visited by a backup clone of herself from the even-more distant future, as they must venture into each other’s psyches in order to restore the clone’s deteriorating mind.
訳:エミリーは、さらに遠い未来から来た自分のバックアップクローンの訪問を受け、劣化したクローンの精神を回復させるために、お互いの精神に踏み込むことになる。

imdbより引用

不完全な鏡像

『明日の世界』が大人が幼少期の無意識に羨望を抱く行動を描いているのだとすれば、その時の大人のステータスは精神疲労である。ならば、クローンも精神疲労を患わせるべきと思ったのだろうか。本作では、不完全なバックアップであるエミリー6がエミリー・プライムの前に現れ、強引に彼女の脳内をスキャンするところから始まる。

自己を増殖させ、痛みや孤独を癒そうとしてもどうすることもできなかったクローンのエミリー。傷を多く背負ったエミリー6は、自己崩壊しながら純粋無垢なエミリー・プライムに話しかける。エミリー・プライムと同化し、不完全な鏡像として彼女に成り済ます事で内なる自己を観察するエミリー6はその混沌の中で更なる自己破壊が行われる。

一方で、エミリー・プライムは三角形しかない世界、四角形しかない世界。無意識にウサギを出現させられる世界に身を投じながらも自己を一定に保つ。知識や他者との関係の蓄積がないからこそ、内なる世界の闇に潰されることはないのだ。

大人になればなるほど、他者は大きくなり政治レベルにまで発展する。Twitterをみると、多様な正論に押しつぶされ、内なる世界で自己崩壊しそうになっている人が多い。この映像の洪水は、そんな内なる自分の混沌に押し潰されてしまう状況に気づかせてくれ癒しを与えてくれる作品と言えよう。

正直、難解過ぎて全く咀嚼できていないのですが、こうした租借不能な映画と出会う嬉しさは格別と言える。

※imdbより画像引用