【NETFLIX・ネタバレ】『ドント・ルック・アップ』下を向いて歩こう歪んだ星を数えて

ドント・ルック・アップ(2021)
Don’t Look Up

監督:アダム・マッケイ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、ロブ・モーガン、ジョナ・ヒル、マーク・ライランス、タイラー・ペリー、ティモシー・シャラメ、ロン・パールマン、アリアナ・グランデ、キッド・カディ(スコット・メスカディ)etc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2021年12月は寄稿6本抱えていた為、なかなか新作映画を追うことができなかった。でも年間ベストで次々とNETFLIX映画『ドント・ルック・アップ』が挙がっていたので、観てみました。NETFLIX映画もアダム・マッケイ映画もそこまで得意ではないのだが、これがとても良かった。特に、コロナ禍で政治に振り回され、最大の愚行である東京五輪が開催されてしまった日本にとってこれほど辛辣なビターコメディはないでしょう。痴話喧嘩レベルが『日本沈没』の100倍となっている猛毒作品『ドント・ルック・アップ』の感想をネタバレありで書いていきます。

『ドント・ルック・アップ』あらすじ

巨大彗星(すいせい)が地球に衝突する可能性を必死に訴える2人の天文学者。だが、情報が氾濫する世界では、誰ひとりとしてその警告に耳を貸そうとせず…。

※NETFLIXより引用

下を向いて歩こう歪んだ星を数えて

『アルマゲドン』をはじめ、多くの隕石もの宇宙襲来ものでは人類が一致団結し困難に立ち向かったり、とりあえず核ミサイルを発射したりする。しかし、コロナ禍を経て、人類は団結することはない。どんなに悪手だと分かっていても利権や政治関係によって、誰しもがドン引きしてしまう愚行をとってしまうことがよく分かった。特に日本では東京五輪の強行開催に始まり、給付金、アベノマスクといった様々な不条理が日夜降り注いでおり、民意が全く反映されていない。人類が気づきはじめた、人類は団結などできない事実を滑稽に描いた作品が『ドント・ルック・アップ』だ。2時間半ぐらいある作品ではあるが、全く飽きさせることなく愚行による修羅場を迎える。

レオナルド・ディカプリオ演じるランドール・ミンディ博士が大学院生ケイト(ジェニファー・ローレンス)が見つけた彗星を解析する。すると6ヶ月後に彗星が日本に堕ちて人類が滅亡することに気づく。すぐさま関係者に連絡し、アメリカ合衆国大統領に会いに行く。しかし、延々と待たされた上で「選挙に影響するから。」と取り合ってくれない。仕方がないので、新聞社に行ったり、テレビに出演するが、人々の関心はゴシップである。発狂するケイトはネットミーム化され嘲笑に晒される。一方でミンディ博士はゆるキャラとして、どんなにキレても持ち上げられる。グレタ・トゥーンベリをはじめとする怒れる若い女性に対する嘲笑と男性優位社会をここでぶった斬るのだ。

運がいいことに「大統領選に好印象」と判断され、彗星破壊ミッションが始まる。核ミサイルと愛国者を彗星に送り込むのだが、途中でスティーブ・ジョブスのようなIT企業のスポンサーに邪魔されてしまう。なんということでしょう。彗星にスマホの部品に使える資源が大量にあったのだ。中国とこ関係が悪いアメリカ。彗星の資源を占有することで打破しようと考え、自社開発の専用マシンで、隕石を幾つかにわけて地球に落とそうと考えるのだ。

世間は分断され、遅々として迫りくる危機を直視しない。IT企業では最近技術者が大量にプロジェクトから離脱しているのが判明する。いつの間にか、選択肢が、隕石を細切れにして地球に落とすしかなくなってしまう。

一般市民は、何故政府は愚行を犯してしまうのかとフラストレーションが溜まるであろう。ランドール博士とケイトの地獄めぐりを通じてそのメカニズムが解明される。これはある種の心の処方箋になっている。利権が絡む、政治が絡む。強者は周囲にYESマンしか置かない。信じたい真実しか信じなくなることで、目の前の有事を見過ごす。そのくせ、本当に緊急事態となったらトンズラするのだ。

終盤の、無数の専用マシンが彗星に向かっていくが、次々と爆発し、彗星に着陸しても故障が頻発し、なんとか爆発させても一切ダメージを与えられていない場面は爆笑した。世の中はクソだ。だからフィクションもとことん奈落まで堕ちてほしい欲望はこの映画で満たせるであろう。と同時に、どんなにクソみたいな世界でも人々は前に進むしかないことを描いており、来年も元気にしぶとく人生を生き延びようと思いました。

※NETFLIXより画像引用

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