【Netflix】『BLUE/ブルー』あるいは吉田恵輔の『ゴングなき戦い』

BLUE/ブルー(2021)

監督:吉田恵輔
出演:松山ケンイチ、木村文乃、柄本時生、東出昌大、守谷周徒、吉永アユリ、長瀬絹也、松浦慎一郎、松木大輔、竹原ピストルetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

師走ですね、この時期は映画の年末調整。観逃した映画を配信サイトで観ていきます。Netflixで吉田恵輔監督の『BLUE/ブルー』の配信が始まりました。吉田恵輔監督といえば『空白』が第43回ヨコハマ映画祭日本映画ベストテンにて1位を獲得した。映画の飲み会に参加すると、『BLUE/ブルー』も傑作だと伺ったのでNetflixで観てみました。

『BLUE/ブルー』あらすじ

「ヒメアノ~ル」「犬猿」の吉田恵輔監督によるオリジナル脚本で、ボクシングに情熱を燃やす挑戦者たちの熱い生き様を描いたドラマ。ボクサーの瓜田は誰よりもボクシングを愛しているが、どれだけ努力を重ねても試合に勝てずにいた。一方、瓜田の誘いでボクシングを始めた後輩・小川は才能とセンスに恵まれ、日本チャンピオンに王手をかける。かつて瓜田をボクシングの世界へ導いた初恋の女性・千佳は、今では小川の婚約者だ。強さも恋も、瓜田が望んだものは全て小川に奪われたが、それでも瓜田はひたむきに努力し続ける。しかし、ある出来事をきっかけに、瓜田はこれまで抱えてきた思いを2人の前で吐露し、彼らの関係は変わり始める。松山ケンイチが主演を務め、後輩ボクサーの小川を東出昌大、初恋の人・千佳を木村文乃、新人ボクサーの楢崎を柄本時生が演じる。

映画.comより引用

あるいは吉田恵輔の『ゴングなき戦い』

ボクシング映画といえば、練習を重ねていってリングで輝くまでを描く熱いスポ根映画を思い浮かべるであろう。しかし、『BLUE/ブルー』はまるでジョン・ヒューストン『ゴングなき戦い』さながら、晴れ舞台の外側にいる者。晴れ舞台に立てども、輝きとは程遠い泥臭さを纏うものに焦点を当てる。吉田恵輔特有のヒリヒリとした会話がスパイスとなり、辛辣なボクシング映画に仕上がっている。

パチンコ屋で働く楢崎は同僚の女にいいところ見せようと不良中学生に立ち向かいボコボコにされる。自分を強く見せるために、ボクシングをやっている演技をするためにジムへと通いだす。そんな彼を迎えたのは瓜田だった。悟りを開いたように手取り足取り教える彼は、全く試合に勝てない男だった。そんな彼とは裏腹に、後輩の小川は勝利を着実に収めていき、チャンピオンの座へと上り詰めようとしていた。

本作は瓜田と小川、楢崎と赤髪のライバルの2つの関係性から残酷に才能による停滞を描いていく。ヘナチョコだった楢崎が着実に型を身につけ、不器用ながらもプロの資格を得る。一方で、強いが試験で落ちた赤髪のライバルの存在がいる。彼は「なんでアイツが合格したんだよ」と叫ぶが、実際にスパーリングをしてみると、徐々に楢崎の拳が追い詰めていき、ライバルをぶちのめす。それは瓜田の希望を継承したものだろう。そして、病院で楢崎と赤髪のライバルが対面し、仲直りする場面を通じて本作は陰日向に手を差し伸べる。

もちろん、主軸となる瓜田と小川の関係性でも重厚な苦悩像を浮き彫りにする。瓜田は、勝てないことに悟りを抱き、でもボクシングしかない人生に身を投じる。一方で、小川はチャンピオンに近づきつつあるが、ある異変と対峙せざる得なくなる。勝者も負け犬にも苦悩がある。その苦悩は情けないものだが、それでも前に進むことで、自らを救う。吉田恵輔監督なりの意地悪な人生賛歌。閉塞感ものは毎年沢山作られるが、多層的で希望の手もやんわりと差し出す本作は確かに2021年を代表とする作品であった。

※映画.comより画像引用