【ブンブンシネマランキング2021】ワースト1位はあの映画制作映画…私は悲しいよ

【ブンブンシネマランキング2021】ワースト部門

あけましておめでとうございます。

皆さんにとって2021年はどんな年になったでしょうか?

私は、なかなか激しい1年でした。さて、毎年恒例ですがワーストの映画について語っていきます。毎回そうですが、単純につまらない作品はいれていません。問題のある作品が入っております。それではいってみましょう。

※タイトルクリックすると詳細作品評に飛べます。

10.サマーフィルムにのって

監督:松本壮史
出演:伊藤万理華、金子大地、河合優実、祷キララ、板橋駿谷、甲田まひる、ゆうたろう、小日向星一、池田永吉、篠田諒etc

時代劇を作る女子高生の話であり、その情熱は「映像研には手を出すな!」に匹敵するものがあった。しかしながら、青春キラキラ映画でありながら青春キラキラ映画に対する解像度の低さが鼻についた。時代劇に関しては高校名を「三隈」にする三隅研次問題に言及したりと芸が細かいのですが、ライバルが作る少女漫画映画に関しては見下しているような雑さが目立った。2015年頃から増えた少女漫画映画ですが、『黒崎くんの言いなりになんてならない』、『ヒロイン失格』などまるでプレストン・スタージェスのスクリューボールコメディのような豪快なアクションの連鎖が魅力的だったりする。山戸結希が独特な動きを少女漫画映画に持ち込んでおり、技術力が研ぎ澄まされているジャンルである。それをふわっとした解像度で作り込んでいるところがナンセンスだと思った。だったら青春映画のフレームで作ってはいけないと思う。

【ネタバレ】『サマーフィルムにのって』高解像度の時代劇/低解像度の青春キラキラ映画

9.映画大好きポンポさん

監督:平尾隆之
出演:清水尋也、小原好美、大谷凜香、加隈亜衣、大塚明夫、木島隆一etc

映画の制作現場を描いた作品は映画ファンを熱くさせるもの。それが映画の編集現場を舞台とするなら、そのニッチさに興奮するだろう。確かに地味で映画映えしにくい編集現場。それをアニメならではの、熱量の具現化で描写したところに熱くなる。しかしながら、いくらなんでも困難が少なすぎな気がして、挫折描写が弱いので全体的にぼんやりとした出来になっていた。そして致命的なのは、本作で制作される映画がアカデミー賞を総ナメするとは思えないところにある。古臭いメロドラマの印象が強く、ならば舞台を1940年代〜1950年代にした方が良かったのではと思った。あと、虚構だからある程度許容しないといけない部分ではあるが、コンプライアンスが問われる現在の映画業界にあのクライマックスの仕掛けはマズい気がした。

【ネタバレ考察】『映画大好きポンポさん』映画とは時間のエンターテイメントだ!

8.007 ノー・タイム・トゥ・ダイ(NO TIME TO DIE)

監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
出演:ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥ、ラッシャーナ・リンチ、ベン・ウィショー、ナオミ・ハリス、ビリー・マグヌッセン、アナ・デ・アルマス、ロリー・キニア、デヴィッド・デンシックetc

007シリーズといえば『ユア・アイズ・オンリー』のメテオラなど、観光地を魅力的にみせながらドンパチするのが特徴的である。本作は折角、キューバロケがかなったのに、役者を捉え切れていないカメラワークに、「キューバ」の要素が欠落した画とがっかりすることが多かった。また、ラストがいくら最近ハリウッドで流行っている手法だからといってあまりにも乱暴で良くないなと思ってしまった。

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7.JUNK HEAD

監督:堀貴秀

ストップモーションアニメは、言葉がわからなくても仕草のおかしさから魅力が染み出すものだ。本作は字幕をつけたことにより、その魅力が半減してしまったところが痛い。また、冒険が非常に短調で、主人公は様々なキャラクターに会うのだが、会う→騒動に発展する動きを繰り返しているだけで段々と飽きてきてしまった。元々は短編映画だったそうだが、短編の方が傑作だったのではと思う。

『JUNK HEAD』本作最大の敵、それは「字幕」だ!!

6.ソウルフル・ワールド(Soul)

監督:ピート・ドクター
出演:ジェイミー・フォックス、ティナ・フェイ、ジョン・ラッツェンバーガー、ダヴィード・ディグス、フィリシア・ラシャドetc

ピクサーやディズニーが映画界の頂点になってしまったせいか、若干カルト教団っぽいなと思うところがあるのだが、本作はまさしくカルト教団の布教ビデオのような気持ち悪さがあった。映像はとても綺麗で実写と観間違えるほどのクオリティであった。一方で、終始幸せであることを強要する展開にげんなりし、結局人生成功している人が、陰キャラに「人生は楽しい」と押し付けているだけに見えてしまった。「幸せ」「ときめき」を強要し、不幸でいること、ネガティブであることを禁じられた世界、これってディストピアだよね。

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5.ラ・フロール 花(La Flor)

監督:Mariano Llinás
出演:Elisa Carricajo、バレリア・コレア、パイラー・ガンボア、ローラ・パレーズ、エステバン・ラモチェetc

2021年は14時間の魔界『ラ・フロール 花』から始まった。時間も内容もバラバラな作品の結合体、確かに第三部スパイパートによる粛々と人を殺していく場面は面白かったりするのだが、いかんせん監督の傲慢さが鼻につく。特にエンドロールが40分もあり、上限反転した世界で延々と現場のかたしをしている様子を魅せられるのが苦行でした。まさかイメージフォーラム・フェスティバルで上映されるとはこの時思いもよらなかった。

『ラ・フロール 花(第1部)』14時間の船出、骸の落とした瞳と不協和音

4.クレーン・ランタン(Crane Lantern)

監督:ヒラル・バイダロフ
出演:オルハン・イスカンダルリ、エルシャン・アッバソフ、ニガル・イサエヴァetc

アゼルバイジャンから現れた新気鋭ヒラル・バイダロフ。前作の『死ぬ間際』はとても面白かったのだが、本作は致命的だった。確かに、監督も何をしているのか理解できない作品はデヴィッド・リンチが作っていたりするが、本作は単にアゼルバイジャンの美しい風景を撮っていれば後は観客が解釈してくれるであろうという傲慢さの塊となってしまい有害だなと思った。通俗でガバガバ脚本な映画、内輪受けを狙ったどうしようもない映画よりもこの手のアート映画の方が致命的であり見過ごすことができないと感じています。

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3.SNS 少女たちの10日間(V síti)

監督:バーラ・ハルポヴァー、ヴィート・クルサーク
出演:テレザ・チェジュカー、アネジュカ・ピタルトヴァー、サビナ・ドロウハーetc

日本でも話題となり、同じような実験をしたことで物議を醸した作品。ドキュメンタリーは時として人間の闇に踏み込む為、モラルの境界線を飛び越えることがあるが、本作は流石に赤の一線を越えてしまった。制作人がSNSを使った性的暴力の実情にヒートアップして、警察に通報するよりも先に、犯人をドッキリにかけて正義の鉄槌を下すビジランティズムに陥ってしまっている。そこは冷静になって欲しいし、果たして実験台にされた女性たちのメンタルケアは入念にされたのか疑問が残る作品であった。

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2.茜色に焼かれる

監督:石井裕也
出演:尾野真千子、和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏、大塚ヒロタ、芹澤興人、前田亜季etc

石井裕也監督は、不幸や日本の閉塞感を並べておけば世間に評価されると勘違いしているところがあり苦手である。本作はそんな彼の集大成であり、不幸の回転寿司映画となっている。交通事故に始まり、シングルマザーの辛さ、コロナ禍を並べて観客に同情を誘うところに芸のなさを感じた。スピリチュアル路線に走るところも悪い面で気持ち悪さを感じた。

【ネタバレ酷評】『茜色に焼かれる』激情に不幸を過剰積載していく日本閉塞感ものの最終兵器

1.キネマの神様

監督:山田洋次
出演:沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子、リリー・フランキー、前田旺志郎etc

山田洋次監督は結構好きで、『男はつらいよ』全作品観賞している程なのだが、これには失望と憤りを抱いた。あれだけ社会のはぐれものに手を差し伸べた山田洋次監督が、アルコールと博打を見下す描写を入れているのだ。映画を高尚なものとし、アルコールや賭博を低俗な文化として見る様子に落ちぶれたなと思い映画を観ていくと、映画に関してもリスペクトがない。フランク・キャプラは実在する名前使っているのに、日本の映画監督は巨匠の名を借りている。だが、銀幕に映し出されるのは露骨に『東京物語』だったりする。まるで小津安二郎の手柄を自分のものにしようとしているのだ。そんな状態で『カイロの紫のバラ』の薄っぺらいオマージュをやられてもただ冷めるだけ。今年、最凶の有害な映画であったと思う。

【ネタバレ】『キネマの神様』私はつらいよ