【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『ケミカル・シンドローム SAFE』コロナ時代を予見?

ケミカル・シンドローム SAFE(1995)
SAFE

監督:トッド・ヘインズ
出演:ジュリアン・ムーア、ザンダー・バークレイ、ピーター・フリードマン、スーザン・ノーマンetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『死ぬまでに観たい映画1001本』掲載のトッド・ヘインズ作品。日本ではVHS時代に『ケミカル・シンドローム』という題で知られていたらしい。トッド・ヘインズは日本では『ベルベット・ゴールドマイン』以降に注目されたイメージが強く、初期作の『ポイズン』や本作は見逃されガチなのですが、面白そうだったので『死ぬまでに観たい映画1001本』フルマラソンという名目で触れてみました。

『ケミカル・シンドローム SAFE』あらすじ


日本でも潜在患者が1000万人いるといわれる“化学物質過敏症”。その、いつ誰が感染してもおかしくはない環境病の恐怖を『マグノリア』のジュリアン・ムーアが熱演。
TSUTAYAより引用

コロナ時代を予見?

本作は1995年の作品にもかかわらず全く色褪せない。寧ろ、コロナ時代を予見していたかのような作品となっている。

ブルジョワ家庭の主婦は、ヘアサロンにフィットネスに家のリフォームに大忙し!しかし、最近倦怠感に悩まされている。医者に診てもらっても原因がよくわからない。状況はドンドン悪くなり、ヘアサロン中に鼻血が出たり、フィットネスもまともにできなくなる。やがて、それが《化学物質過敏症》だと気づき、セラピーに通うという内容だ。

トッド・ヘインズは、空間でもって倦怠を表象し、単なる化学物質過敏症の話を超えた世界を描こうとしている。

例えば、前半と後半の空間構造に注目してほしい。ある間で家政婦が家事をし、その横でリフォーム業者が仕事をしている、その先の空間で主婦が右往左往する居心地の悪さやヘアサロン、フィットネスクラブの密と疎を分離させた居心地の悪さは彼女の心理を端的に表している。また、彼女は怪しい集団に入る。「安全の場=オアシス」を作ろうと異様な空気に包まれる共同体に彼女は身を投じるのだが、何処か疎外された感触があり、それが段々と広大な空間にポツンと佇む彼女という構図に表れていく。彼女はフィットネスクラブや集団セラピーで容易にコミュニティの中心に入ることができる。コミュ障ではない。しかし、彼女が話したり行動すると、周囲の目は一瞬冷めたような雰囲気を醸し出す。彼女は満たされているのに満たされていない。そんな感情を《化学物質過敏症》という人工物に対する嫌悪感に象徴させたのだろう。

恐らく、当時としては分かりにくい感覚だっただろう。単純な過敏症の映画に見えただろう。しかし、SNS時代になり人工的なコミュニティや、情報過多により心身が蝕まれていく今の方が刺さること間違いなしだ。そして何よりも、食事中にビニールの壁越しに会話する、マスク生活を強いられるといった描写が、コロナ時代の今を象徴しているようで、日本での再評価が求められる作品に感じた。

※画像はnewyokerより引用

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