【フランス団地映画】『GAGARINE』団地は青かった

ガガーリン(2020)
GAGARINE

監督:ファニー・リアタール、ジェレミー・トルイ
出演:Alséni Bathily、Lyna Khoudri、Jamil McCraven etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

カンヌレーベル2020に選出されたファニー・リアタール、ジェレミー・トルイ長編デビュー作『GAGARINE』を観ました。本作は2015年の短編映画の長編映画化であり、パリ郊外にある公営団地シテ・ガガーリンの解体直前に撮影された作品だ。シテ・ガガーリンは1961年に建設、1963年に落成した。ソビエト宇宙飛行士ユーリイ・ガガーリンに因んで命名され、落成式には彼も訪れている。しかし、70年代からフランスの産業構造の変化に伴い、団地を離れる人が増えていき、団地を維持するために移民を受け入れるようになった。そして2019年から解体工事が始まり2020年、完全に取り壊された。本作は、そんなシテ・ガガーリンの最期がドラマチックに描かれた傑作であった。

『GAGARINE』あらすじ

Yuri fights to save his home town – which he shares with his namesake, Yuri Gagarin – from demolition.

imdbより引用

団地は青かった

若者がボタンを押す。

「ダメだ、動かねぇ」

女性が通りかかり、隣のボタンを押すが、これも動かない。エレベーターは両方故障している。落書きだらけ、廃墟同然となった団地。そこには半世紀近い歴史の層が剥き出しになって積み重なっている。貼り紙、落書きを見ていると、そこがデモの集合場所だったりするのがよくわかる。そんな廃墟で、移民たちがたむろっている。彼らに明日はないのか?いや、彼らにとってここは桃源郷だったりする。

エレベーターを修理する。火花が散る。エレベーターが動き出し、「うわっあぶね」と穴から出る。そこにはSF映画のようなドラマがある。ボロボロで、ガラクタを繋ぎ合わせて出来ているこの空間は彼らにとって大きな大きな宇宙船なのだ。

住めば都とはまさにこれのことで、パリの街並みとは隔絶され、独自の世界を形成しているこの世界は貧しくても、彼ら/彼女らにとって心の拠り所だったりする。

そんな団地シテ・ガガーリンが遂に役目を終える。取り壊しが決まってしまうのだ。住人の抗議の声も虚しく、着実に取り壊しのXデーが近づく中、住人は団地を本気で宇宙船に見立てることで、内なる世界に最期の楽園を作ろうとする。この宇宙船描写が、かつて人類が宇宙に希望を見出していた頃のロマンがあり、時折挿入されるアーカイブ映像と融合し、とてつもない感傷的な波が観る者に降りかかる。

人は時に、手放せないものがある。手放さないといけなくても、最後の一瞬までそれを手元に残そうとするものだ。本作は、そんな感情をドラマティックに包み込んだ素晴らしい作品でした。

フランス団地映画

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※MUBIより画像引用