第16回大阪アジアン映画祭総括

第16回大阪アジアン映画祭総括

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2021/3/11~2021/3/14に第16回大阪アジアン映画祭に行ってきました。大阪アジアン映画祭は、私の映画呑み仲間が注目している映画祭で、東京フィルメックスとは一味異なるドープなアジア映画を味わうことができるとのこと。

過去には、タイの鬼才ナワポン・タムロンラタナリット『ハッピー・オールド・イヤー』や第93回アカデミー賞国際映画賞にノミネートされた『少年の君』、『淪落の人』、『コロンバス』、ジョニー・トー『ドラッグ・ウォー 毒戦』と後に一般劇場公開され話題となる作品を多数排出している。エンターテイメントとアートの中間をほとばしるパワフルな作品が多いイメージがある。

今年は、新型コロナウイルス蔓延による国際的にも映画が作れなかったこともあり、苦労の跡が見えるラインナップとなっていましたが、楽しかったので簡単なリポートを書いていきます。

会場について

第16回大阪アジアン映画祭の会場は、
・シネ・リーブル梅田
・梅田ブルク7
・ABCホール

の3箇所で行われます。東京フィルメックスや東京国際映画祭と比べると会場と会場の距離がそれぞれ20分くらいあります。また、大阪駅は地下街こそ発達しており、雨天時の移動には便利ですが結構複雑なので、映画のハシゴをする際には十分な時間を取る必要があります。また、予告編がほとんどないので走って滑り込むのは困難な点は要注意です。

シネ・リーブル梅田

テアトルシネマグループの一つであるシネ・リーブル梅田。梅田スカイビルタワーイーストの中にあります。大阪駅から歩いて行くと、映画館がありそうに思えない役所のような施設群がありますが、その中のに入っています。段差は緩やかな為、前の席に背の高い人が座っていると字幕が読みにくい場合があります。個人的には、後方左側を取ることをオススメします。

梅田ブルク7

東映系映画館ティ・ジョイ系の梅田ブルクが会場になっていました。雰囲気は新宿バルト9に近く、エレベーターを上がって、さらにエスカレーターを昇って行くスタイルの映画館である。

映画館といえばコンセッション。多くの映画館ではポップコーンやチュリトスが販売されているが、ここ梅田ブルク7ではなんと和菓子セット(¥550)が楽しめる。サクッとした食感と餡子の甘みが広がるユニークなお菓子がツボでした。

ABCホール

ABCホールは、音楽堂のような施設だ。神殿のような間を通り抜け中に入る。大阪は東京よりもユニークで自由な建築物が多いのが特徴的だが、ABCホールは観客の快適な芸術体験を意識して、通路が広めに取られているのが嬉しい。東京フィルメックス会場で使われている朝日ホールに似ているが、圧倒的スペースの広さを持っておりのびのびと映画を堪能しました。

スケジュール

3/11(木)

12:00 キラー・スパイダー(シネ・リーブル梅田)

14:05 ハネムード(シネ・リーブル梅田)

16:00 空(くう)(シネ・リーブル梅田)

この日は朝7時の新幹線に乗り、10時頃に大阪入りをしました。荷物はホテルに預け、その足でシネ・リーブル梅田で3本立てをしました。1本目のイラン映画『キラー・スパイダー』がかなりハードな作品だったので精神的に来ましたが、イスラエルのスクリューボールコメディ『ハネムード』に爆笑し、エクアドルで中国人がAnother Skyする『空(くう)』に興奮しました。

3/12(金)

10:10 ジェミル・ショー(ABCホール)

12:50 ブラックミルク(ABCホール)

18:30 シン・エヴァンゲリオン劇場版:||(大阪エキスポシティ)

この日は、雨。ABCホールまでホテルから30分の道のりを歩きました。トルコ版ジョーカーこと『ジェミル・ショー』に新鮮さを感じるものの、期待していた『ブラックミルク』がNot for meでがっかり。映画祭あるあるだ。その足で1時間くらいかけて大阪エキスポシティのIMAXに行き『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を観ました。この時は知らない、衝撃の事件がこの時起きることに……

3/13

09:00 A SUMMER TRIP~僕とじいじ、1300キロの旅(シネ・リーブル梅田)

12:20こことよそ(シネ・リーブル梅田)

16:00 君のための歌(梅田ブルク7)

18:10 ナディア、バタフライ(梅田ブルク7)

映画祭も中盤戦、この日は4本観ました。久石譲が音楽を手がけており、明らかに『菊次郎の夏』を意識した『A SUMMER TRIP~僕とじいじ、1300キロの旅』。ゆるい爺さん×子ども映画にもかかわらず道中が過酷すぎて衝撃。フィリピン映画『こことよそ』はTwitterのフォロワーさんが紹介していたコロナ映画なのですが、2020年パンデミック初期の感情をアーカイブした興味深い作品でした。

『君のための歌』はジャ・ジャンクーとペマ・ツェテンが製作に関わっているのですが、荒唐無稽なチベットロードムービーで意外であった。

『ナディア、バタフライ』はKnights of Odessaさんが2020年のベストに選んでいた作品。これは予想通りホームランであり、スポーツ映画にもかかわらず冒頭10分でクライマックを迎え、その先に力点を置いているところが面白かった。

3/14

09:20 いとみち(シネ・リーブル梅田)

最終日、横浜聡子監督の三味線とメイドのマリアージュ映画『いとみち』を観た。横浜聡子監督だから期待しすぎてしまったのが運の尽き。三味線とメイドのマリアージュがうまくいっていないように見えた。

第16回大阪アジアン映画祭受賞結果

【グランプリ&観客賞】『いとみち』
横浜聡子監督

【来るべき才能賞】チェ・ジニョン
(『生まれてよかった』)

【ABCテレビ賞】『姉姉妹妹』
キャシー・ウエン監督

【薬師真珠賞】リー・リンウェイ
(『人として生まれる』)

【JAPAN CUTS Award】『B/B』
中濱宏介監督

【JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション】『4人のあいだで』中村真夕監督

【芳泉短編賞】『イニョンのカムコーダー』
オ・ジョンソン監督

課題点1:Filmarksに全然登録されていない

大阪アジアン映画祭を楽しんだ私ですが、幾つか気になったところもありました。

映画祭が意外と軽視しているポイントに、Filmarksの作品登録作業がある。個人的に、映画祭が始まる前に上映作品を映画レビューサイトに登録していただきたいところがあります。折角面白い映画を観ても、多くの方に周知できるプラットフォームがないと、他の人の感想とか気になる私は寂しい気持ちになります。

そこそこ大きな映画祭であれば、写真とタイトル、キャスト名をまとめてFilmarksに送れば登録してもらえそうな気もするが技術的政治的に難しいのだろうか?

課題点2:Q&Aがほしい……

映画祭といえば、監督やキャストとのQ&Aだ。新型コロナウイルスの蔓延で、以前のようにはQ&Aが行えないのは十分承知ですが、映画祭の熱気があまり味わえなかったのは寂しいところ。

東京フィルメックスでは、オンラインでQ&Aが行われていました。画面にQRコードを表示し、そこから質問を投げる方式が採用され、映画祭にありがちな支離滅裂な質問や自分語り屋の大暴れも抑止できたりしたので有効な方法かなと思いました。予算の都合があるとは思うのですが、『キラー・スパイダー』や『ブラックミルク』について監督に訊きたいことがあった自分はQ&Aに飢えたのでありました。

最後に……

福岡国際映画祭が解散したり、東京国際映画祭が実質の規模縮小となったり日本の映画祭は逆境の時代に入っていますが、映画好きとしては映画ファンたちが同じ空間で未知なる傑作を共有する場としての映画祭は大切なものです。

来年はどうなるのか?そもそもコロナがどうなっているのか全く読めませんが、また映画発掘に行きたいなと思いました。

第16回大阪アジアン映画祭レビュー

【OAFF2021】『ナディア、バタフライ』身体の一部が喪失する倦怠感
【OAFF2021】『いとみち』メイドと三味線の不思議なマリアージュ
【OAFF2021】『こことよそ』対話不全のコロナ禍において
【OAFF2021】『キラー・スパイダー』神の名の下に開き直る
【OAFF2021】『ハネムード』ルンバを抱えた花嫁によるスクリューボールコメディ
【OAFF2021】『ブラックミルク』ゲル生活のかけら
【OAFF2021】『空(くう)』Another Sky ハードモード編
【OAFF2021】『ジェミル・ショー』トルコのジョーカーは役者になりたい
【OAFF2021】『君のための歌』チベットの意識高い系CDを作るドン!
【OAFF2021】『A SUMMER TRIP~僕とじいじ、1300キロの旅』エクストリーム菊次郎の夏
【ネタバレ考察】『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』L’amor che move il sole e l’altre stelle