スワッガー(2016)
Swagger(2016)

監督:Olivier Babinet
出演:Aïssatou Dia, Mariyama Diallo, Abou Fofana etc
評価:80点
マイフレンチフィルムフェスティバルで上映されているドキュメンタリーを観てみた。
『スワッガー』概要
フランス郊外のシテを舞台にそこで暮らす二世の子供たちをカメラは追う…フランス二世の苦悩
マイフレンチフィルムフェスティバルここ二日ハズレくじを引いていたのだが、ここにきてホームランを引き当てる。
フランス郊外の所謂バンリューにあたる場所で暮らす子ども達を追ったドキュメンタリー。バンリューと言えば『憎しみ』『ディーパンの闘い
』を思い浮かべるが、本作を観るとバンリューの闇は深い底なし沼だと気づかされる。
バンリューはかつて、フランス人が暮らしていた。なので、日本における団地みたいな場所なのにソフィテル東京(かつて不忍池にあったホテル)のような斬新でオシャレな空間になっている。その姿に驚かされる。しかし、そのバンリューにアフリカ系、アラブ系の移民が移住してくるうちに、フランス人は誰一人住まない地域になったと子ども達は言う。
子ども達は所謂二世。家族と故郷に遊びに行くものの、「ここが故郷?」と思ってしまうほどフランスにアイデンティティがある。しかし、かといって子ども達の生活圏にはフランス人は誰一人いない。いるのは宗教も言葉も違う異質な存在(他国からの移民)のみ。この貧しくスラムになっているバンリューで、アイデンティティが揺らぐ様子が延々と語られるのだ。
昨年、芥川賞の選定の場で、温又柔の『真ん中の子どもたち』に対し宮本輝が
「これは、当事者たちには深刻なアイデンティティーと向き合うテーマかもしれないが、日本人の読み手にとっては対岸の火事であって、同調しにくい。なるほど、そういう問題も起こるのであろうという程度で、他人事を延々と読まされて退屈だった」(「文藝春秋」2017年9月号より)と酷評し大問題となった。
この作品を観ることで、宮本輝が何故あの発言をしてしまったかがよくわかる。日本人として日本で生きていると、遠いようで近い日本にある外国人だけの区域に気付かない。
同様に、フランス人としてフランスで生きていると、バンリューで暮らしている外国人に気付かない。まるで鎖国、いや被差別部落のように見えざる断絶が発生しているのだ。
このドキュメンタリーは、知っていそうで知らない現代の事実を教えてくれる。しかも、非常に映画的手法、自由でドープな表現で魅せてくれるのだ。
』が観られたり、来月には『ビッグ・シック
』が公開される。日本も少しずつではあるが、二世の苦痛が常識として広まりつつある。これは喜ばしいことだ。
悪いことは言わない。是非挑戦してください!
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