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【MyFFF】『1:54』ダークホース!フランスの陸上部スポ根映画はブンブンの人生そのものだった件

【MyFFF】『1:54』ダークホース!フランスの陸上部スポ根映画はブンブンの人生そのものだった件

1:54(2016)


監督:ヤン・イングランド
出演:アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン、
ルー・パスカル・トレンブレイ、
ソフィー・ネリッセetc

評価:95点

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル映画祭出品作品もようやく半分観終えたところ。半分近くまで観ると、ノーマークだった作品にも手を出すようになる。MyFFFの全作品鑑賞パックを契約する前は全く、眼中になかったのだが、SNSで「アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン主演の陸上部映画がある」という情報を聞いた。アントワーヌ・オリヴィエ・ピロンといえば、グザヴィエ・ドランの『MOMMY/マミー』の主役だ。ブンブン大好きな作品だけに早速挑戦してみた。すると、これがダークホース大傑作だったのだ!それもまるで監督がブンブンの為に本作を作ったのでは?と疑いたくなる程、自分の高校時代とシンクロする作品であった。

『1:54』あらすじ

16歳の少年ティムは相棒と化学部の活動に明け暮れていた。実験動画をSNSにアップして陰日向の青春を送っていたのだが、いじめっ子集団による執拗ないじめの標的にされ、相棒が自殺してしまう。

怒りに震えるティムは宿敵、ジェフを見返す為陸上部に入り、800mで全国大会出場を目指すことにする。全国大会出場には《1:54》のタイムが必要。そして、全国大会にいけるのは1人のみ。果たしてティムはジェフを倒し、全国大会へ出場できるのであろうか?

驚きのスポ根映画

ここ近年痛感することだが、この世には映画祭でしか出会えないような作品が山ほどある。その国の特有の癖が中途半端に出ていたり、映画会社の宣伝力が乏しかったり、超個人的な映画だったりetc そして、映画祭というのは時期と立地の関係で、観たいときにいけなかったりする。だからこそ、MyFFFのような世界規模オンラインで行う映画祭は貴重であり、NetflixやAmazonのようなVOD文化が発達する中でとても重要な映画祭だ。そして、ブンブン既に7本ぐらいMyFFF出品作品を観てきたのだが、ここに来て大傑作との邂逅を果たした。それも日本公開はしなさそうな、ニッチ分野の傑作だ。何たって、化学部だった少年が陸上部に転身して、しかも長距離でも短距離でもなく800mという、陸上部以外の人からしたら取っ付きにくい題材がテーマ(一応、廣木隆一が昔『800 TWO LAP RUNNERS』という中距離走映画を撮っている。)。これを配給する映画会社が日本にあるだろうか。強いていえば、新宿武蔵野館やシネマカリテで上映しそうな感じはするが、本作が日本公開する姿を私は想像できない。

また上記のあらすじを読むとよくあるスポ根映画に見えるかもしれない。これが一筋縄ではいかない。

本作は、三部構成からなっており、第一部では2人のいじめられっ子の地獄のスクールライフが描かれる。そして第二部では復讐の為に陸上に打ち込むドラマが展開される。ここで違和感を抱くであろう。通常のスポ根ドラマだったら、第二部のクライマックスで宿敵と闘い、勝ち負け問わず主人公は試合に答えを見出していくもの。それがこの映画、試合後に壮絶な第三部を仕込んで来るのだ。第一部、第二部ではSNS時代のいじめの凄惨さを克明に抱き、それを歪な形で克服する物語がリアリズムを意識した作風で綴られていく。リアリズム至上主義の映画ファンは舌からヨダレが出るほど堪らない生々しさがここにある。ただ、第三部では第一部、第二部で渦巻き溜まりに溜まった憎悪を映画的に爆発させるのだ。

学生時代にいじめを受けた人なら分かるだろう。いくらいじめた人を、テストや部活で倒しても、余程満足のいく結果でなければそこにあるのは憎悪の塊だったりする。現実世界では、その憎悪を爆発させてしまうと、人生に多大な悪影響を与えるので、心の奥底にしまっていかないといけない。しかし、本作では第三部で現実世界の人はやらないであろう憎悪の核爆発を魅せるのだ。もやはスポーツマンシップどころの話ではありません。それも、なんと出オチエピソードだと思っていた《化学部》という設定が伏線として使用されているのだ。映画は、弱い者の味方という側面があるが、この映画はまさにその代表。そして、その爆発による後処理も見事な形で施されていて、これぞ映画的。リアリズム至上主義に陥って、貧相な映画に成り果てることを回避している。

こう聞くと、第一部と第二部はあたかもダルデンヌ兄弟映画のようなもはやドキュメンタリーレベルのリアリズムが全体的に広がっているのかと思うかもしれないが、この2部もここぞ!というときに映画的表現を織り交ぜているので、物語の心地よい波が流れ飽きることなく楽しめる。例えば、第一部、前半でティムが相棒にキスをしようとする場面がある。そして、第一部の中盤にいじめっ子ジェフが相棒をいじり倒す場面で、相棒が「実は俺ホモなんだ—-」と公共の場で絶叫する。そして、それをティムが拒む。それが引き金となりで相棒が自殺してしまう一連の流れは、学校という狭いコミュニティで政治的立ち回りを意識するが故に、友情以上の関係に大きな溝を入れてしまうという構図を象徴しているといえよう。これは文章でも演劇でも表現しにくい、映画的表現と言える。

これは自分の人生だった

本作が何故、ブンブンの心を鷲掴みにしたのかというと、実は本作のティムの人生がブンブンの高校一年生そのものだったのだ。ブンブン、中学時代囲碁将棋部(というなの遊戯王orモンハン部)だった。スクールカーストは当然最下位でいじめにも度々遭っていた。体育に関しては絶滅してほしい程に嫌いだった。しかし、そんなブンブンが唯一体育の授業で輝けたのがシャトルランだった。シャトルランとは、20mの距離を一定時間までに走りきるのを延々と繰り返す種目。スポーツマンにとってはあまりに退屈過ぎるということから嫌われ、運動音痴からは辛すぎるということから嫌われ、誰得感ある代物。しかしこれだけは、サッカー部や野球部に負けない勢いで110~130ぐらいまでこなすことができた。体育の成績が赤点ギリギリだったこともあり、これで点数悪かったら行きたい学部に行けない(ブンブンの高校は大学付属で、成績上位から学部を奪い合うシステムだった)と思ったブンブンは『ドーン・オブ・ザ・デッド』のようなゾンビ走りで毎回クラスで輝いていました。そして、文化部で華のない中学時代から脱却すべく、いじめっ子を見返すべく高校生になるや否や陸上部に入った。

なんとこの『1:54』は化学部陰日向の少年ティムが陸上部に入ったきっかけが、まさにシャトルラン。シャトルランで宿敵ジェフの記録を潰したことから、「俺はマジで陸上部に入って相棒の仇を討つ」と決心し入部するのだ。まさにいじめっ子を見返す為に陸上部に入る過程がティムと一致していた。ブンブンの為の映画だったのだ。

しかも、大会シーンなんか。舞台はフランスにも関わらず、陸上部時代と全く一緒だった。レーンに立ったときの緊張感、トラックのカーブで発生する転倒事故、走り終わると掲示板に紙でドン!と結果が表示されるくだり、全てブンブンが陸上部時代に感じた触感がそこにはあった。陸上部時代楽しかったかと言われると、先輩とも同期とも仲が悪く、コーチともよく喧嘩しており、そこまで華やかな青春ではなかったが(映画ライフの方が華やかだったぞw)、この映画を観た後振り返ると、『ライ麦畑でつかまえて』ホールデン・コールフィールドのように痛い思い出も大切な一部だなと感じる。

ってことで、大傑作です。是非みなさんも挑戦してみてください!!

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