【ネタバレなし】『Pinocchio』不気味の谷から狂気のチャラ男ピノキオ爆誕!

ピノッキオ(2019)
Pinocchio

監督:マッテオ・ガローネ
出演:Federico Ielapi、ロベルト・ベニーニ、ロッコ・パパレオ、マリーヌ・ヴァクトetc

 

評価:95点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

皆さんは、『ピノキオ』をご存知だろうか?

カルロ・コッローディの童話でありディズニー映画にもなった名作だ。私は絵本レベルでしか知らないのですが、ピノキオっておじゃる丸におけるデンボポジションのキャラクターからめちゃくちゃ警告されているのに誘惑に負けて大惨事になっているイメージがあります。さて、今何故か『ピノキオ』の映画化に挑む人が増えている。

ロバート・ゼメキスやギレルモ・デル・トロが製作している中、『五日物語-3つの王国と3人の女-』でファンタジーに目覚めたマッテオ・ガローネが一足早く完成させた。ピノキオを爆誕させるおじいさん役にはロベルト・ベニーニが配役されている。予告編を観る限り、ピノキオが気持ち悪いイメージしか持たなかったのですが、これが狂気の大傑作であった。なるほど、これは鬼才たちがこぞって映画化したがる訳だ。今回はネタバレなしで魅力について語っていきます。

『Pinocchio』あらすじ

Old woodcarver Geppetto’s puppet creation, Pinocchio, magically comes to life with dreams of becoming a real boy. Easily led astray, Pinocchio tumbles from one misadventure to another as he is tricked, kidnapped and chased by bandits.
訳:年老いた木彫り職人ジェペットの人形、ピノキオは、本物の少年になることを夢見て、魔法のように命を吹き込まれます。騙されたり、誘拐されたり、盗賊に追われたりして、ピノキオはすぐに迷子になってしまいます。

※imdbより引用

不気味の谷から狂気のチャラ男ピノキオ爆誕!

昔々あるところに、ロベルト・ベニーニ演じるそれは頭の狂ったおじいさんがおりました。おじいさんは、木彫りに取り憑かれており、食堂に着くや否や、「机が傾いているぞ、扉もおかしいぞ」と喚き散らす有様。町人から白い目で見られています。彼はサーカスに来た木彫り人形を見て、「俺も最強の人形を作るぞ!」と息巻いている。

その頃、木材ショップでは店長が大層立派な丸太を斧で粉砕しようとしたところ、ズズズッ!と後ずさりし「ボクを殺さないでーーーーーー」と店長に圧をかけ始める。「ヤベェ丸太だな」と思った店長はそれを狂った木彫り爺さんに売りつける。そんなことと知らずに爺さんは、木彫り人形を完成すると、何故か心臓部分がバックンバックン動き始める。終いには「バブゥ」と語りかけるのだ。明らかにどうかしている状態にもかかわらず「俺に息子ができたぞー、皆の衆聞け」と深夜1時に町中の人々を起こし始め、早々にピノキオを学校に通わせようとするのだ。

マッテオ・ガローネは原作を忠実になぞりながらも、実写化という解像度を上げる作業で生じる不気味の谷の中で遊ぶことに全力を注いでいる。童話映画だから、エンターテイメントだからと妥協することなく、ヤン・シュヴァンクマイエルの作風を参考にしながらも監督の性癖、悪趣味の限界に挑戦している。

例えば、冒頭で小さな因果応報を描くことで本作の全体像を象徴させる場面がある。ピノキオは爆誕して早々、「あばよ」と爺さん置いて逃走する。家に帰ると、爺さんのことなど一切考えず寛ぎはじめる。竃に薪を入れはじめるのだが、木彫り人形のくせにやたらと竃に近い。これが伏線となっている。そこにコオロギが警告しに現れるのだが、「うるせー」とハンマーを投げつけ顔面に直撃するのだ。なんて暴力的なピノキオなんだと思っていると、次のシーンでは、彼の足が盛大に炎上している。これは善悪の概念がないピノキオがクズな性格によって今後も大惨事に見舞われることを暗示している。

折角、爺さんが「学校で勉強してきな」と教科書を渡して送り出したのに、秒で教科書を売却してサーカスに入り、悪徳サーカス主に捕まってしまう。サーカス主が鬼畜なのは明らかなのだが、ピノキオは頭が弱い。ピノキオはサーカス主に焚き火に突きつけられ「お前燃やすぞ」と言われ、嫌だーと叫ぶ。すると彼は「じゃあ代わりにこいつを燃やすか?」と言われ、「だったら俺を殺してくれ」と叫ぶとサーカス主が泣き始め「お前はいい人形だな。仲間だ。」と語る場面があるのですが、これは明らかにDV男やブラック企業経営者がやりがちな人を支配する術である。それにまんまと嵌り、その後も事あるごとに人に騙されていく。なんどもコオロギが警告するのに全力で無視していくところに頭が痛くなります。基本的に本作のピノキオは、イキって大惨事に遭うと甲高い声で「タスケテ」と言うドラえもんスタイルで進んでいくのですが、急に妖精にモテ始めるとスカした顔で「あん?お薬要らねぇよ」と言い始めたりするので、どこまでいってもクズだなと思う。だからこそ、終盤に説得力があります。

そんなクズ男のオデュッセイアなのですが、マッテオ・ガローネは様々な癖を盛り込み、王道の『ピノキオ』ながら全く飽きることがない。鼻が伸びる場面は、「どこまで伸びるかな?」と観客の期待に応えてくれ、さらには人口密集地フェチ、ケモナー、擬人化フェチと『メイドインアビス』さながらの多彩なフェチズムを発揮しており、これは今後『ふしぎの国のアリス』や『美女と野獣』の実写化も期待したいところでした。

上半期ベスト候補です。

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※imdbより画像引用