【東京国際映画祭】『一人と四人』ペマ・ツェテンの息子が『ヘイトフル・エイト』を撮っていた件

一人と四人(2021)
原題:一个和四个
英題:One and Four

監督:ジグメ・ティンレー
出演:ジンパ、ワン・ジェンetc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

スペースで第34回東京国際映画祭作戦会議を開いた際に、フォロワーさんから『一人と四人』の監督はペマ・ツェテンの息子だよと教えてもらった。近年、チベットや中国映画界はジャ・ジャンクーとペマ・ツェテンがサポートに入り、新鋭を育てている風潮がある。第16回大阪アジアン映画祭で上映されたチベット映画『君のための歌』に引き続き、二人が携わっている映画が日本でお披露目となったのだ。ただ、ペマ・ツェテン映画のイメージで観たらタランティーノ映画で思わぬボディーブローを喰らいました。

『一人と四人』あらすじ

密猟が横行する雪山。山小屋の管理人の前にひとりの男が現れ、やがてひとり、またひとりとクセのある男たちが山小屋を訪れる。チベット映画の雄、ペマ・ツェテンがプロデュース。

※第34回東京国際映画祭より引用

ペマ・ツェテンの息子が『ヘイトフル・エイト』を撮っていた件

山小屋を守る男。食料は尽き、硬いパンを食べようとするが硬すぎて投げ捨てる。そしてヤケ酒で時間を潰す。そこへ次から次へと男がやってくる。この中に警察と密猟者がいるらしい。犯人を調べる鍵は、管理人が事件があるたびに記述する日記帳だった。酷寒の地で、手汗握る人狼ゲームが勃発する。

本作は明らかに『ヘイトフル・エイト』の文法に則った作りをしている。次から次へと現れる癖者に対して、味わい深い会話を与え、回想シーンでアクションや虚実曖昧な真実を展開していく。突如現れるアクションは強烈でありスパイスが効いている。タランティーノ味をチベット映画で味わえるとは驚かされる。

一方で、テクニックに溺れている印象が強く、終盤のやたらと多用するスローモーションや早回しは無意味な映画の連動にしか見えず、単なる子供騙しに終わってしまったのが残念だ。

結局は『ヘイトフル・エイト』好きがそれっぽい映画を作ったレベルに留まっていたと言えよう。

※第34回東京国際映画祭より画像引用

第34回東京国際映画祭関連記事

【東京国際映画祭】『スワン・ソング』ウド・キアの頭にシャンデリア
【東京国際映画祭】『洞窟』タナトスとエロス
『CRYPTOZOO』天才!キメラどうぶつ園
【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭】『夜を越える旅』モラトリアムが背中で語るまで
【東京国際映画祭】『クレーン・ランタン』ヒラル・バイダロフ物語らない※ネタバレ
【東京国際映画祭】『ザ・ドーター』言葉の呪いが不安定の渦に追い込む
【東京国際映画祭】『ある詩人』広大な文学の地が失われる轍※ネタバレ
【東京国際映画祭】『アリサカ』修羅場映画のスペシャリスト、ミカイル・レッド
【東京国際映画祭】『カリフォルニエ』自分のモノがないこと、自分のジカンがないこと
【東京国際映画祭】『ヴェラは海の夢を見る』身体と言葉を繋ぐ者ですら
【東京国際映画祭】『牛』アンドレア・アーノルドの軟禁牛小屋※ネタバレ
【東京国際映画祭】『リンボ』辺獄の果てまでどこまでも