【東京国際映画祭】『ザ・ドーター』言葉の呪いが不安定の渦に追い込む

ザ・ドーター(2021)
原題:La hija
出演:The Daughter

監督:マヌエル・マルティン・クエンカ
出演:イレネ・ビルグェス、ハビエル・グティエレス、パトリシア・ロペス、デリエン・アジアン、Sofian El Benaissati、マリア・モラールズetc

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第33回東京国際映画祭コンペティション作品である『ザ・ドーター』を観ました。マヌエル・マルティン・クエンカは『カニバル』で知られている監督だが果たして…

『ザ・ドーター』あらすじ

少年犯罪者の更生施設に住む少女が妊娠する。施設の教師とその妻は、人目を避けて出産できるように少女と山小屋で共同生活を始める。雪の中で展開される衝撃的な心理ドラマ。

※第33回東京国際映画祭より引用

言葉の呪いが不安定の渦に追い込む

更生施設の少女が教師の家に転がり込む。精神が不安定な彼女にとって教師は救いのような存在だ。しかし、段々と様子が変わってくる。教師とその妻が彼女に「お前に子供を育てることは無理だ」と言い始めるのだ。少女のカレシは不自然な死を遂げる。

少女は最初こそ、教師に従い生まれてくるであろう子供を教師夫婦に養子として引き渡すことにしていたが、彼女の中で「子供を育てたい」気持ちが芽生えていく。

本作は、妊娠をする者が自分の肉体の一部として子供を認識することになり子育てを強く意識するまでを描いている。また、精神不安定な若き妊婦に対し周囲の大人が言葉の呪いをかける状況を描いている。大人は、子育てに対してやたらと干渉してこようとする。それに対する爽快なアクションが後半20分に用意されており、雪降る空間で犬と戦い、車の中に籠城するアクションは観応えがあった。

一方で、2時間かけている割には、あまりに陳腐で中身のない話となっており、80分くらいで事足りたのではと思ってしまう。そもそも、妊婦の不安定な精神状態を丁寧に100分ぐらいかけて描いているにもかかわらず、ラストにショッキングなアクションによる暴力解決を安易に取ってしまうことが問題である。現実では、彼女のような立場は大人の圧力によって窒息しそうな程に抑圧されている。虚構の特権で簡単に暴力のトリガーを必殺技のように展開するのはいいとは思えない。やるのであれば、中盤から開き直ったように大量殺戮するぐらいにしないと虚構に逃げたイメージが強いなと感じてしまうのだ。

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※第33回東京国際映画祭より画像引用

 

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