【CPH:DOX】『The Metamorphosis of Birds』そのノスタル自慰は文学でやった方がいいのでは?

The Metamorphosis of Birds(2020)
A Metamorfose dos Pássaros

監督:Catarina Vasconcelos

評価:35点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Catarina Vasconcelosデビュー作にして第70回ベルリン国際映画祭にて国際批評家連盟賞を受賞し、2020年の海外批評家のベストでも時たま挙がる映画『The Metamorphosis of Birds』がCPH:DOXにきていたので観ました。

『The Metamorphosis of Birds』概要

The passing away of their mothers makes Catarina and her own father meet in an emotional place that is different from the one most fathers and daughters know.
訳:母親が亡くなったことで、カタリーナと実の父親は、多くの父親と娘が知っているものとは異なる感情的な場所で出会うことになる。

※imdbより引用

そのノスタル自慰は文学でやった方がいいのでは?

ノスタル自慰映画というジャンルがある。それはテレンス・マリックを筆頭に自分の人生や感情を吐露しまくるタイプの映画だ。映画監督というのはある意味でナルシストで自分の最強の世界を作るために果てしない作業に明け暮れる。それだけにノスタル自慰映画は決してネガティブな暴言ではないと思っている。『花に嵐』や『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』といった感傷的な感情を最大の武器にした傑作もある。一方で、独り善がりになりがちなのがノスタル自慰の弱点であり、好き嫌いが極端に別れる。

さて『The Metamorphosis of Birds』はどうだったかというと御察しの通りNot For Meであった。監督の祖父エンリキへの想い、家族の年代記とポルトガル社会に対する感情というのを16mmのペドロ・コスタ映画を彷彿とさせるバキバキに決まったショットで紡いでいる。そして、そこに詩的なナレーションを付加させていくのだが、Catarina Vasconcelosのテクニックに陶酔している感じが鼻につく。もちろん、台所の扉が開き、子どもが出てきたり、潜水艦ゲームをする場面、そしてGoogleで検索すると出てくる映えな画はどれも素敵なのだが、ナレーションの主張が激しいこともあり、だったら小説でやった方がうまくいったんじゃないかな?と思ってしまう。つまり二兎追うものは一頭も得ずをやってしまっているのだ。

監督にとっては、忘れたくない記憶の美しきアーカイブなんだろうけれども私にとっては風のようにスルスルと記憶から抜け落ちてしまいそうな映画でした。

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※CPH:DOXより画像引用