【東京国際映画祭】『アリサカ』修羅場映画のスペシャリスト、ミカイル・レッド

アリサカ(2021)
ARISAKA

監督:ミカイル・レッド
出演:マハ・サルバドール、モン・コンフィアード etc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第34回東京国際映画祭コンペティション部門にミカイル・レッド最新作『アリサカ』が選出された。ミカイル・レッドといえば映画泥棒がひたすら逃げる作品『レコーダー 目撃者』の緊迫感が記憶に新しい。本作でも修羅場映画になっていると聞いて駆けつけました。

『アリサカ』あらすじ

護送中の証人が襲撃され、ただひとり生き残った女性警官が先住民の家にかくまわれる。だが、そこにも追手が迫ってきて…。バターンを舞台に繰り広げられるアクション・スリラー。

※第33回東京国際映画祭サイトより引用

修羅場映画のスペシャリスト、ミカイル・レッド

今年の東京国際映画祭はやたらと車に籠城する映画に出会う。『ザ・ドーター』では、獰猛な犬に追いかけられ、女が赤子を片手に車に引きこもる。『リンボ』では精神不安定な女が、ヤクザ集団に追われて車に逃げ込むが全力でガラスを破られる。そして、本作はパトカーの籠城戦から始まる。急襲に遭い、同僚皆殺しとなったパトカー。女は、鮮血に覆われたパトカーの中で体力を回復させていたが、そこへ死体確認のグループがやってくる。パトカーの下で息を潜める彼女。そこに、仲間の一人がヌルッと覗き込み、銃撃戦が始まる。ボロボロになりながら逃げる彼女は道中、部族に助けられる。

本作は『レコーダー 目撃者』同様、ミカイル・レッド監督お得意の修羅場釣瓶打ち芸によって手汗握るサスペンスが展開される。絶体絶命の、パトカー下からの脱出から始まり、川での乾いた銃声が響き渡る戦闘など一瞬たりとも目が離せない。

そんなアクションをシームレスに西部劇へと繋げていく。部族の世話になる彼女だったが、ヤクザ集団が部族を皆殺しにしてしまう。唯一生き残った少女は洞窟へ案内し、伝説の銃と思しき有坂銃を託す。

そして復讐の対決が始まるのだ。

追われる者が、有坂銃を持ったことにより追う側へと変容し、一人、また一人と血祭りに上げていくのが痛快だ。一方で、人間らしい泥臭い戦いも用意されており、ナイフを持ったヤクザの長に対して肉弾戦にまで発展する様子は生々しい。有坂銃が長すぎる為、至近距離での射撃に向いておらず、間合いに入られてしまうのだ。終盤の一進一退の攻防に興奮しました。

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※第33回東京国際映画祭サイトより画像引用