【ネタバレ考察】『デッドゾーン』クローネンバーグはドナルド・トランプと闘っていた?

デッドゾーン(1983)
THE DEAD ZONE

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:クリストファー・ウォーケン、ブルック・アダムス、マーティン・シーン、ニコラス・キャンベルetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

クラッシュ 4K』でデヴィッド・クローネンバーグ熱がついた私は『デッドゾーン』にも挑戦してみました。スティーヴン・キング映画は割と地雷が多いことで有名なのですが、これは中々の秀作でした。尚、終盤の展開に触れているネタバレ記事なので注意。

『デッドゾーン』あらすじ

教師のジョニーは恋人サラとのデートの帰りに事故に遭い、昏睡状態に。5年後、目を覚ましたジョニーには手に触れた者の未来と過去を見通す超能力が身についていた。ジョニーの能力は凄惨な殺人事件を解決に導いたが、その一方で彼自身を疲弊させていくことに。やがてジョニーは上院議員候補スティルソンにまつわる恐るべきビジョンを目の当たりにするが……。超能力者の孤独な戦いと悲劇を描いたサスペンス・スリラー。

映画.comより引用

クローネンバーグはドナルド・トランプと闘っていた?

デヴィッド・クローネンバーグは未来世界の心理を予言することで有名だ。『コズモポリス』では、情報の目まぐるしい流動によって痛みすら感じなくなる世界を描いていた。『裸のランチ』ではノマドワーカーの存在、スターバックスでMac Bookを開いて作業をする意識高い系の存在を予言していた。『クラッシュ』では、合理化、最適化により人間が部品化されていくことへの反動を描いていたように見える。

スティーヴン・キング原作ものの『デッドゾーン』はどうか?

驚いたことに、ドナルド・トランプが大統領選に出馬するような状況を描いていたのだ。主人公ジョニー(クリストファー・ウォーケン)は、デートの帰り道、交通事故に遭ってしまい昏睡状態となる。5年後、目覚めた彼は、人の手を握るとその人の未来や過去が見える能力が備わっていた。マスコミに注目される彼は一応、警察に手を貸してみるが、あまりに凄惨な事件を目の当たりにしゲンナリしていく。そんなある日、彼はPR活動をしている上院議員候補スティルソン(マーティン・シーン)と握手を交わすと、彼が核ミサイルのスイッチを押している未来が見えてしまう。それを阻止しようと、彼は暗殺を企てようとするのだ。

このスティルソンが妙にドナルド・トランプに似ているのだ。カリスマ的オーラ、そして不気味な動きをする支持者たちは今回のアメリカ大統領選挙の熱気を感じさせます。デヴィッド・クローネンバーグは、ジョニーになりきって未来が見えたのだろうか?未来のドナルド・トランプと闘っているように見えて興味深い。そして、本作では単にジョニーをヒーローとして描くのではなく、未来という不確定要素が見えることにより、自分独自の論に嵌っていく恐怖を捉えているとも言える。

クローネンバーグ特有の肉体的演出は控えめで、握手をすると痛みを伴いながら他者の世界を覗き見できる描写程度に留まっているのですが、2021年に観ると驚きが多い作品でした。

※映画.comより画像引用