【MyFFF】『奥様は妊娠中』奥様は、取り扱い注意、夫はもっと取り扱い注意

奥様は妊娠中(2020)
Énorme

監督:ソフィー・レトゥヌール
出演:Marina Foïs, Jonathan Cohen, Jacqueline Kakou etc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル2021が開幕しました。毎年、映画館で上映されそうでされないタイプのユニークなフランス映画が配信されるので注目しています。今年は、注目作が多い。東京国際映画祭で好評だった『リトル・ガール』のセバスチャン・リフシッツが進路の岐路に立つ少女を捉えたドキュメンタリー『思春期 彼女たちの選択』、カンヌレーベル2020に選出されたアニメーション『ジュゼップ』。そして今回紹介するカイエ ・デュ・シネマベストテン2020選出作『奥様は妊娠中』などが配信されているのです。『奥様は妊娠中』は女性監督ソフィー・レトゥヌールが、子作りしない宣言していた夫婦に訪れる妊娠騒動を描いた作品。一見すると、フランスのローカルコメディにしか見えない。日本公開も微妙な雰囲気を持っているのですが、Bunkamura ル・シネマあたりで公開してほしい、男性必観の辛辣風刺映画でした。

『奥様は妊娠中』あらすじ


クレールは世界的な天才ピアニスト。夫でマネージャーのフレデリックと共に日々世界中を飛び回っている。子供は持たない、それが夫婦の共通認識だった。
ところが、パリ~ニューヨーク間のフライト中に緊急出産に立ち会ったフレデリックは、父になりたいとの強い思いに駆られ、クレールの避妊薬に細工をしてしまう。狙い通りクレールは妊娠、どんどんお腹が膨らんで…。
※myfffより引用

奥様は、取り扱い注意、夫はもっと取り扱い注意

カイエ・デュ・シネマのソフィー・レトゥヌール監督インタビューによれば、本作は彼女の妊娠体験がベースにある。“Je nous trouvais burlesques, dans une autodérision qui permettait sans doute de mieux supporter la fin de la grossesse.(妊娠末期に耐えられるようになったんだろうなと自虐的に、自分をバーレスクな存在であることに気づいた。)※CAHIERS DU CINEMA SEPTEMBRE 2020 N°768より引用”と彼女は語っており、一見通俗なドラマの中に妊娠、子作りにおける当事者とそれ以外の関係性を鋭く風刺している。2020年は『透明人間』、『SWALLOW/スワロウ』、『私というパズル』といった女性目線から社会と当事者の関係性を斬り込む傑作が豊作であった。フランスからもそのラインナップに肩を並べる傑作が発表されていた。

本作では夫フレデリックのキザながらも気持ち悪いほどにダサい姿が浮き彫りとなる。ピアニストのクレールのマネージャーという役を演じ、ワールドツアーをしている彼女を支えている。だが、ホテルでチェックインする時にまくし立てるような口調で、「俺がクレールだぜ!ハハハ冗談だよ。」、「枕かい?俺はピアニストじゃないぜ?でも貰おうか。奥さんとねハハハ」と明らかに間が悪くなっているのに自分に向いた笑いで押し切ろうとする厚顔無恥さに観ている方まで気分が悪くなる。彼は妻に向いていると思いきや、彼女が一生懸命楽譜を読んでいるのに、豹柄オニューのパンツを見て欲しそうに構ってちゃんアピールしたり、オペラ口調で大げさに彼女の面倒を見たりする。そんな彼の本性が明らかになるのは、飛行機での事件からだ。飛行機で、ヒョコんなことから出産の手伝いをすることとなったフレデリック。その極限状態で見た赤ちゃんは美しかった。多忙ゆえ子どもを作らない宣言して、俺が俺がと会食で暴れ散らしていたフレデリックは子どもを欲するようになるのだ。だが、妻のことを思うと、子どもなんて作ってくれない。なので、彼は積極的に彼女を誘惑し、彼女を騙して妊娠させようとするのだ。

定期的にトイレに行き、彼女の妊娠具合をチェックする。このしょうもないバレるかバレないかサスペンスが、男の身勝手さを浮き彫りにする。終始、フィッシャーマンと名乗る宗教家に頼り始めたり、妻が出産するのに軽率に「俺が産みたかった」と言いながら彼女のことを考えない分娩方法を採用したり醜態を晒し続ける彼のリズムにどす黒い笑いが精製されていった。これは男必観の傑作である。

P.S.ショパンの「幻想即興曲」って、ダーンの1音で「幻想即興曲」だと分からせる凄みがあるよね。

※IFFFより画像引用

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