【カンヌ国際映画祭特集】「リアリティー」ゴージャスすぎて怖すぎるホラー

リアリティー(2012)
REALITY(2012)

監督:マッテオ・ガローネ
出演:アニエッロ・アレーナ、
ロレダーナ・シミオーリ、
ナンド・パオーネetc

評価:75点

五日物語

』のマッテオ・ガローネがカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品。2012年は、『ホーリー・モーターズ』や『パラダイス:愛』といった強豪がいたにもかかわらず、一見すると賞と無縁そうな本作や、批評家から酷評されたカルロス・レイガダス『闇のあとの光』が受賞している変な年でした。今回紹介する「リアリティー」はネットの評判こそ悪いが、実はブンブンの心に染みる良作でしたよ!

「リアリティー」あらすじ

リアリティー番組「ビッグ・ブラザー」のオーディションに手応えを感じた男ルチャーノ。いままで冴えない人生を歩んでいただけに、このチャンスばかりは逃すまいと考える。いつしかそれが妄想となり、人生の歯車が狂い始める…

特定の人に刺さる怪作

本作は正直、観る人をかなり選びます。なんといっても、イタリア版テラスハウスにでようと躍起になる男の狂気がドンビキレベルだから。映画だから多少のぶっ飛んだキャラは許容できると思ったそこのあなたも、あまりにもバカで、哀しくなるほどどうしようもない主人公を観ると腹が立ってくるでしょう。

しかし、ブンブンはこの主人公の気持ちにじーんときた。というのも、主人公の必死さが痛いほど分かるから。主人公のルチャーノはナポリで魚屋を営んでいる。貧しく、周りから十分に褒められていない。だからこそ、家族や町の人に認めて貰おうと、頑張る。ただそれに応じて、家族や町の人がヨイショするもんだからもう背水の陣。リアリティー番組に出られなくなったら一生心の傷を負ってしまう恐怖と闘わないといけなくなる。

この、自分で目標を立て公言したは良いものの、周りから見られて引くに引けない状態のいやーな感じ、ブンブン何度も経験したことがある。それだけに主人公の追い詰められていく様子に胸が締め付けられました。

また、本作は美術の凄さも切なさを増幅させる要因となっています。リアリティー番組の豪華絢爛さ。誰も怒らない、希望に溢れる美しき世界をマッテオ・ガローネは徹底的に演出している。正直、「五日物語」以上にファンタジック。あまりに美しい世界だからこそ、主人公の世界が崩壊していく過程が恐ろしく見える。

確かに、『ホーリー・モーターズ』や『パラダイス:愛』を差し置いて、本作がグランプリを受賞するのはないな~と思うのだが、それでも素敵な作品と言えよう。

そんなマッテオ・ガローネの新作『ドッグマン(DOGMAN)』はまたギャングスタ映画だそうなので楽しみだ。

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