【CPH:DOX】『TAMING THE GARDEN』巨木は精気を奪いどこへいくの?

TAMING THE GARDEN(2021)

監督:Salomé Jashi

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

主要国際ドキュメンタリー映画祭のひとつであるCinéma du RéelでYoung Jury Award – Mentionを受賞し、2021年重要ドキュメンタリーに名乗りをあげている『TAMING THE GARDEN』が面白いと評判を聞きつけ、CPH:DOXで観賞しました。

『TAMING THE GARDEN』概要

A mysterious millionaire has ordered some new trees for his garden. The only problem is that they are 15 storeys tall, 100 years old and have to be transported from faraway villages to his palace. Thus begins the Georgian filmmaker Salome Jashi’s festival hit. With surrealist motifs, absurd humour, and an exquisite cinematic aesthetic, she portrays the eccentric project, which seems inspired by both René Magritte and Herzog’s ‘Fitzcarraldo’, and which a team of workers are struggling to achieve. The brains behind it all (the former Prime Minister Bidzina Ivanishvili) remains out of sight as a hidden, surreal force in Jashi’s almost dialogue-free film, which elevates the privilege debate to a staggering new level of hubris.
訳:謎の大富豪が、庭に新しい木を注文した。しかし問題は、その木が15階建てで樹齢100年のものであり、遠く離れた村から彼の宮殿まで運ばなければならないことだ。ジョージア出身の映画監督、サロメ・ジャシの映画祭でのヒット作はこうして始まった。ルネ・マグリットとヘルツォークの「フィツカラルド」に触発されたと思われるこの風変わりなプロジェクトを、彼女はシュールレアリズムのモチーフ、不条理なユーモア、そして絶妙な映画の美学をもって描き、作業員のチームはその実現に向けて奮闘します。ほとんどセリフのないジャシ監督の映画では、このプロジェクトのブレーン(元首相のビジナ・イバニシビリ)は、隠れたシュールな存在として目立たないようになっており、特権論争を驚異的な傲慢さにまで高めている。

※CPH:DOXより引用

巨木は精気を奪いどこへいくの?

ジョージアのとある村には忙しなく村の木々を薙ぎ倒していく。大富豪が、村にある樹齢100年の木を購入したからだ。しかし、その巨木は遠く離れた大富豪の庭へ運ばねばならない。村人総動員、夜間もフル稼働で、道を切り開き、巨木を根っこごと運送する。

誰しもが連想するであろうヴェルナー・ヘルツォーク『フィツカラルド』の世界が紛れもなくノンフィクションとして眼前に広がる。唖然と見守る村人。20年近く前に木を植えた張本人が現れ、村から木々が失われていくことに切なさを感じている。しかし、指を咥えてこのビッグプロジェクトを見守るしかない。脳筋とも言えるジワジワと根っこごと動き出す巨木の狂気と荘厳さは『フィツカラルド』の船頭一人で船山に登る儀式と一致する。

美しく圧巻な巨木の行進。美しき海を流れる巨木とそれを見守る人の完璧な構図。本作は、リアルタイムに進行する工事を捉えたドキュメンタリーでありながら、どのショット切り取っても画になるよう設計されており、それが本作のテーマにも繋がっている。

それは美による暴力である。大富豪は、富の限りを尽くし、そして安全面にも配慮して巨木を庭に植えた。しかし、そのプロセスの中で、村人の、土地の精気が奪われてしまった。そして、大富豪の庭で、自動水やり機でメンテナンスされる巨木はどこか窮屈そうである。

ドライに被写体を撮ることだけに専念したミニマムな作品でありながら、その力強いショットから漂う哀愁に胸が締め付けられました。

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※CPH:DOXより画像引用