【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『女相続人』胸キュン少女漫画映画から胸クソ映画へ

女相続人(1949)
THE HEIRESS

監督:ウィリアム・ワイラー
出演:オリヴィア・デ・ハヴィランド、モンゴメリー・クリフト、ラルフ・リチャードソンetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

皆さんは2021年、映画館初めどこで行いましたか?

私はシネマヴェーラのオリヴィア・デ・ハヴィランド特集にしました。シネマヴェーラはTwitter上では静かなものの、私含めコロナ関係なく映画を追い求める人で押し寄せ、本作は8割ぐらい席が埋まる大盛況でした。若干、咳き込む老人が多く、身の危険も感じたのですが、「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載の『女相続人』とても面白かったです。尚、結末に触れているネタバレ記事なので注意。

『女相続人』あらすじ


1850年のこと。ニューヨーク社交界の中心をなす富豪の邸宅が居並ぶワシントン街に居を占めるオースティン・スローパー博士は一人娘のキャサリンと未亡人の妹ラヴィニアと女中の4人暮らしだった。博士の亡妻は才色ともにすぐれた婦人だったにもかかわらず、娘のキャサリンは容貌も人並み以下で、そのうえ社交性の乏しい引っ込み思案の娘だった。それが父にとってはやりきれない一事で、日頃、この不出来な娘に対し、憐憫とも軽侮ともつかぬ態度をもって向かっていたのである。キャサリンは父に対してはまったく頭のあがらない存在に過ぎなかった。叔母のラヴィニアは日頃、キャサリンの味方役をつとめていたが、スローパー家のおどんだ空気をどうすることもできない有り様だった。1日、キャサリンは従妹のマリアンの婚約の宴に父や叔母と共に出席した。踊りの下手で美しくない彼女の相手を勤める男もなかったのに、この夜、彼女の前に立つモーリス・タウンゼンドという秀麗な青年の存在、キャサリンにとって夢かとばかり思われ、次第にこの青年の魅力に惹きこまれていった。スローパー博士はモーリスが定職ももたぬ遊情の青年であることを見ぬいていた。博士はモーリスが娘に求婚したと聞くとはげしく反対し、娘が彼を忘れるようにと欧州旅行に伴って行く。しかし、6カ月の旅行もキャサリンの気持ちを変えることはできなかった。博士はモーリスが望んでいるのは娘でなく、娘の財産以外の何物でもない、もし娘がモーリスと結婚するなら相続権を棄てたものと覚悟するようにと言い放つ。キャサリンは一切を棄ててもモーリスと結婚しようと決意する。だが、迎えに来てくれるはずの青年は遂に現われなかった。キャサリンはモーリスが西部に去ったことを聞いて、彼を憎むとともに、父にも深い恨みの心を抱いた。父娘の間にどうすることもできぬ溝のできたまま、スローパー博士は肺炎で急逝した。ワシントン街の邸宅はキャサリンの思いのままとなり、5年過ぎた。その夏のある日、ラヴィニアが西部から帰ってきたモーリスを伴ってきた。彼は尾羽打ち枯していたが、野心満々たる様子だった。モーリスは5年前の違約を深く詫び、彼女が自分のために莫大な遺産を失うことを見るに忍びなかったこと、いまなお彼女を愛していることを告白した。キャサリンは5年前彼に与えようとパリで購めた高価なカフス・リングを渡して、今晩訪ねてくるようにと言った。モーリスはその夜再びスローパー家の扉を叩いた。キャサリンはその音を聞きながら身動きもしなかった。彼女にはモーリスが5年前のように、自分の財産を欲しがったばかりか、今はなお愛情まで手に入れようと同じ嘘をいっていることをはっきり知っていたのである。
映画.comより引用

胸キュン少女漫画映画から胸クソ映画へ

日本人は童顔な女性がモテる傾向にあるのだが、アメリカは違うらしい。童顔で引っ込み思案で不器用なキャサリン(オリヴィア・デ・ハヴィランド)の前に白馬の王子様が現れず家族は心配する日々。そんなある日、ダンス会場で運命の人が現れた!序盤は、ラブコメ少女漫画映画のような胸キュンドラマが炸裂し、オリヴィア・デ・ハヴィランドの可愛らしさに惚れ惚れします。

白馬の王子様ことモーリス・タウンゼンド(モンゴメリー・クリフト)との出会いの場面が微笑ましい。馴れ馴れしく、彼女の横に座るモーリスは、「何曲目に踊るかい?」と言う。すると彼女はセットリスト表(どうやら踊る曲と相手をメモする専用の紙がこの時代にはあるらしい)を開いて書き込むのだが、彼に見られないよう必死に隠している。実は、彼女はモテないので誰もダンスを申し込んでいないのだ。そんな彼女に対して、「僕も白紙さ、だからこう書くよ、5曲目キャサリン、6曲目キャサリン」と口説く。

こうしてダンスが始まるのだが、不器用故にぎこちない動きをするキャサリンを温かく教える。そこに、デブのダンス男爵が現れてキャサリンを「若者に負けておらん」と奪い、彼女がどうしよう嫌われちゃうと狼狽するのだが、どうでしょう。少女漫画あるあるですよね?

そんな甘酸っぱい展開はまだまだ続くモーリスは彼女の家にやってくるのだ。そしてピアノ弾いてあげるよ。だから座ってと言う。彼女は恥ずかしさ故に、ちょっと離れたソファに座る。彼はもっと近くにというと、50cm前にちょこんと移動するのだ。なんて可愛いんだろうか。そんな彼女をジャン・ポール・マルティーニ「愛の喜びは」(エルヴィス・プレスリーの「好きにならずにいられない」の原曲でもある)で口説くのであった。

こんな胸キュン話は突如終了を知らせる。彼がニートの遊び人だと見抜いた父は、破局させるために彼女をヨーロッパ旅に連行する。そして帰宅してもまだモーリスのことが好きな彼女は、駆け落ちしようとする。彼に「今夜迎えに来てね」と言うのだが、彼はきっと来ないSilent Nightが彼女の前に現れる。「あっ馬車だわ、じゃあね」と飛び出したら、彼女の前を馬車が通過する。そして次の日になっても彼はやって来なかったのだ。彼は結局、財産目当てのクズ野郎だと判明し、彼女の中で何かが壊れた。

重々しい憎悪渦巻くヴォイスで父親をイジメ始め、そして再び現れるモーリスに復讐を企てるのだ。突然ジェットコースターのように胸クソエンディングに向かってハイスピードで急旋回・急上昇・急降下・急停止する、スリリングでゆれの激しい物語にノックアウトされました。

オリヴィア・デ・ハヴィランドの魅力を知る入門としてオススメでした。
※letterboxdより画像引用

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