【CPH:DOX】『JUST A MOVEMENT』ゴダール『中国女』をセネガルでリメイク

JUST A MOVEMENT(2021)
Juste un Mouvement

監督:Vincent Meessen

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

CPH:DOXにセネガルで『中国女』をリメイクする謎の映画『JUST A MOVEMENT』が配信されていたので観ました。

『JUST A MOVEMENT』概要

Paris, May 1968. Here, the post-colonial revolution for a moment found its natural leader in Omar Blondin Diop. A revolutionary, Foucault-reading literate with Senegalese roots, who was in Paris at the right time and landed an iconic role in Godard’s film ‘La Chinoise (which is also the subject of the film ‘The Inheritance’ at this year’s CPH:DOX). A young man in the midst of a historic moment of hope and upheaval, whose short life the artist Vincent Meessen unfolds in his elliptical new film. Instead of separating the tragedy of Diop (and Senegal), Meessen brings together the inner contradictions in a thought-provoking synthesis of past and present.
訳:1968年5月、パリ。ここでは、ポストコロニアル革命が一瞬、オマール・ブロンディン・ディオップという自然なリーダーを見つけた。セネガルにルーツを持つ革命家でフーコーを読む文学者であり、時宜を得てパリに滞在し、ゴダールの映画『La Chinoise』(今年のCPH:DOXで上映された映画『The Inheritance』の主題でもある)で象徴的な役を得た。希望と激動の歴史的瞬間の真っ只中にいた青年の短い人生を、芸術家Vincent Meessenが楕円形の新作映画で展開しています。Meessenは、ディオップ(とセネガル)の悲劇を切り離すのではなく、過去と現在の示唆に富む統合の中で、内面の矛盾をまとめ上げています。

※CPH:DOXより引用

ゴダール『中国女』をセネガルでリメイク

ジャン=リュック・ゴダール監督の『中国女』は強烈な色彩の中、文化大革命や五月革命前夜の荒ぶるフランス若者の心理を叩きつけた作品である。その中にニジェール出身の革命家Omar Blondin Diopが出演していた。彼は本作出演後は、セネガルの革命に参加し投獄の末死亡した。

本作は、『中国女』が持つ力を信じ、本作をリメイクすることで、歴史のアーカイブ、思想の継承を行おうとするプロセスを描いている。セネガル映画史にとって、映画は非常に重要なメディアである。あのアフリカ映画の父センベーヌ・ウスマンは小説では、大衆に思想を啓蒙することは難しいと考え、映画に転向していった。識字率の問題や言語の問題を乗り越えるツールとして、視覚メディアである映画が重要視されてきた。

そして『中国女』はヴィジュアルによる思想の啓蒙の最たるものである為、本プロジェクトに強い必要性が帯びてくる。私はゴダールとジャームッシュは安易に引用してはいけないと思っており、アカデミー賞を撮った某監督ですらゴダールの伝記映画を撮ったところ安直な三番煎じの醜態を晒してしまった。一方、『JUST A MOMENT』の垣間から見えるリメイクは、横移動の連動含めてゴダールの切れ味をそのまま引き継いでおり、尚且つセネガル人女性が中国語で演説するパートなどユニークなアレンジもみられる。軸が定まっているので、こうしたアレンジは単なる人員の問題ではなく、言語を超えた歴史や思想の継承を象徴させる演出であると分かってくる。

確かに荒削りな作品で、迷いながら作っている雰囲気はあるのですが、『二重のまち 交代地のうたを編む』にも通じる継承の難しさに果敢に挑んだ意欲作といえよう。

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※CPH:DOXより画像引用