【CPH:DOX】『THE MONOPOLY OF VIOLENCE』「わきまえている」の暴力性

THE MONOPOLY OF VIOLENCE(2020)
Un pays qui se tient sage

監督:デイビット・デュフレーヌ

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨年、フランスで話題になったドキュメンタリー『Un pays qui se tient sage』がCPH:DOXにて配信されていたので観ました。本作は、黄色いベスト運動を収めたドキュメンタリーである。タイトルは2018年12月に151人もの高校生が警察官に拘束された際に、警察官が「ほらな、わきまえているクラスだろ(Voilà une classe qui se tient sage)」と言ったことに由来している。マクロン大統領の富裕層優遇政策により、貧困層に対しての無関心さが露呈し、燃料税の増税がきっかけとなって始まった黄色いベスト運動は、市民と警察の激しい暴力の応酬となっている。本ドキュメンタリーでは、様々な人が黄色いベスト運動における暴力性を多角的に分析している。かなり物議を醸している映画らしく、日本語で簡単な感想を書いた自分のレビューに英語やフランス語でクソリプがつくほど熱気がある作品となっている。折角観たので感想を書いていく。

『THE MONOPOLY OF VIOLENCE』概要

The violent street protests in Paris during the Yellow Vest protests are at the root of a debate that is highly topical – from the United States to Hong Kong and Denmark. Its starting point is Max Weber’s famous thesis that a state has the monopoly of the legitimate use of physical force. All aspects of this viewpoint are challenged in a refreshingly intelligent film, which confronts a panel of different people with footage from the street riots to discuss them in a darkened TV studio. Protesters, philosophers, sociologists and police officers react to the clips and each other in a film that strongly appeals to both emotions and intellect.
訳:パリで起きた「黄色いベスト」を着ての暴力的な街頭抗議活動は、米国、香港、デンマークなどで非常に話題になっている議論の根幹をなすものである。その出発点は、「国家は物理的な力の正当な使用を独占する」というマックス・ウェーバーの有名なテーゼです。暗いテレビスタジオで、様々な人々が街頭での暴動の映像を見ながら議論するという、爽やかで知的なこの映画では、この視点のあらゆる側面が問われている。デモ参加者、哲学者、社会学者、警察官などが、映像やお互いの意見に反応し、感情と知性の両方に強く訴えかける作品である。

※CPH:DOXより引用

「わきまえている」の暴力性

本作は、黄色いベスト運動の強烈な暴力映像を前にデモ関係者や学者が議論、思索を展開していく内容となっている。頭にゴム弾のようなものが命中し、血だらけになって倒れる人を一切妥協することなく映画に取り込んでいるため、吐き気が出てくる。デモの外側にいる私からすると、この暴力が実に不気味だ。というのも法則性がなかなか見えないのだ。香港のデモ以上に、一見普通の人に警察が殴りかかって来たりするのだ。カメラで撮影していても攻撃したり、してこなかったりする。ファストフード店や車の中に逃げても、警察は追ってくる。ファストフード店の中で殴りつけたり、車はガラスを割ってでも引きずり出したりするのだ。

一方で、デモ参加者のカフェなどに対する破壊行為は、正当なのだろうか?という懸念も出てくる。暴力で抵抗するから暴力で制圧する、ニワトリが先かタマゴが先かのスパイラルに陥ってしまっている黄色いベスト運動における暴力の連鎖を、マックス・ウェーバーの権力の定義を引用して考察したりしている。白熱興奮状態にある運動だからこそ、映画は冷静さを保ち、絶妙な両論併記の塩梅で普遍的に現象を分析しようとしているのだ。

そこへ映画的アプローチを盛り込んでいるのが興味深い。本作ではデモで破壊されたパリの街並みと、平常時のパリの街並みを対比させて暴力の凄惨さを強調していたりするのだ。

香港民主化デモを描いた『香港画』、『DO NOT SPLIT』とは異なり、フランスらしい激しい政治議論が中心となるドキュメンタリーで中々ハードなものでしたが、黄色いベスト運動への理解が進みました。

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※CPH:DOXより画像引用