『香港画』ガンジーは「握り拳と握手はできない」というけれども

香港画(2020)

監督:堀井威久麿

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨年末に公開されて話題となった短編ドキュメンタリー『香港画』。なんと時期も上映館も、上映時間も各映画賞のベストテンに食い込むには厳しいものがありましたが、第94回キネマ旬報ベスト・テン文化映画部門にて10位に輝きました。これはボヤきなんですが、ここ数年のキネマ旬報ベスト・テンは雑誌を購入してもらうために1位しか発表しなくなったのだが、映画雑誌として最大の悪手だと思っている。特に文化映画に関しては、Filmarksで50件にも満たない謎のインディーズ映画をすくい上げていにもかかわらず、誰にも注目されないのはクリエイターにとってもマイナスだと思う。なんだか自分たちの利益を守ろうと必死な感じがして気持ちは分かるのですがよくないなと思っている。特に2020年は劇映画がコロナ禍でそこまで盛り上がらなかった一方で、ドキュメンタリー映画の傑作が沢山公開された年である。Twitterの公式の◯◯位に輝きましたと呟いている姿を見て心苦しくなりましたので、下記にまとめました。

はりぼて』や『空に聞く』、『セノーテ』、『さよならテレビ』が落選している一方で、、全く知らなかった『花のあとさき ムツばあさんの歩いた道』や『タネは誰のもの』が入選しているところが面白いランキングとなっています。

第94回キネマ旬報ベスト・テン~文化映画~

1.なぜ君は総理大臣になれないのか(大島新)
2.プリズン・サークル(坂上香)
3.花のあとさき ムツばあさんの歩いた道(百崎満晴)
4.三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(豊島圭介)
5.音響ハウス Melody-Go-Around(相原裕美)
6.ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ(田部井一真)
7.タネは誰のもの(原村政樹)
8.アリ地獄天国(土屋トカチ)
9.れいわ一揆(原一男)
10.香港画(堀井威久麿)

『香港画』概要

2019年の香港民主化デモを記録した短編ドキュメンタリー。2019年2月、香港政府が逃亡犯条例および刑事相互法的援助条例の改正案提出を発表したことをきっかけに、香港全土で大規模な反対運動が巻き起こる。運動は徐々にエスカレートし、6月には103万人の市民による逃亡条例反対のデモ行進が行われる。同年10月、仕事で香港に滞在していた堀井威久麿監督は、デモに参加している人々の若さに驚き、彼らが何を考え、何を発信しているのかを知るために記録を始める。若者たちの声を聴きながら、デモ隊と警察が衝突するなかでも撮影を続けた堀井監督は、デモ隊とともに催涙ガスやペッパースプレーを浴びながらもカメラを回し続けた。そうして完成した28分の迫真の映像から、香港の若者たちがなぜ戦うのか、またメディアを通じてその様子を目にする人々が、彼らの声にどう向き合い、応えるのかを問う。

※映画.comより引用

ガンジーは「握り拳と握手はできない」というけれども

2019年2月、香港政府が逃亡犯条例および刑事相互法的援助条例の改正案提出を発表。これにより、香港市民は自由を求めて大規模デモを行った。警察と市民の間での軋轢は日に日に激しさを増し、Twitterでは警察による催涙弾、放水、暴行の様子が連日拡散されていった。

そんな香港デモの渦中に堀井威久麿は潜入する。「今できることを撮れるだけ撮っておこう。」とカメラはヒットアンドアウェイ、暴力の中心に喰らいつく。2010年代後半から、世界各地で現実は虚構を上回り始め、暴力と暴力がぶつかるようになった。かつてガンジーは非暴力で社会を変えようとした。しかし、非暴力は巨大な政治システムの中で「なかったこと」にされてしまう。だったら、暴力に訴えるしかない。本当は暴力なんか行使したくないのだが、暴力でしか世間は問題に関心を抱いてくれない。「握り拳と握手はできない」とガンジーは言うけれども、そもそも香港政府は握手すらしようとしないではありませんか!ならば、握り拳に握り拳をぶつけて無理矢理握手するしかないのだ。そんな市民の声を監督は拾い上げてくれる。そして、流石に暴力統治する警察の声は捉えられなかったが、警察の暴力に幻滅し辞職した者の声を拾えあげたところに『香港画』最大の功績がある。

警察も署を出ればただの香港人である。デモ以前は市民と対等な関係を結べていたが、政治状況によってトップダウンで市民を弾圧するようにお達しが来る。市民を弾圧する存在として警察を操る。警察は公務故に反抗できない。唯一の抵抗は辞職しかない。そんな状況が語られるのだ。

誰しもが一番取りたくなかった手法で崩壊していく香港。暴力の先に自由があると信じもがき苦しむ者の葛藤を28分余すことなく伝えたパワフルさにひたすらノックアウトされました。早起きして、あつぎのえいがかんkikiに来た甲斐ありました。

※映画.comより画像引用