『はりぼて』富山の《はりぼて》 政治に《はりぼて》取材がメスを入れる

はりぼて(2020)

監督:五百旗頭幸男、砂沢智史

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨年末から政治ドキュメンタリーが熱気を帯びている。森達也の『i-新聞記者ドキュメント-』に始まり、『なぜ君は総理大臣になれないのか』、『れいわ一揆』と次々と政治ドキュメンタリーが作られ毎回話題となっている。今回、有給を取ってユーロスペースで『はりぼて』を観てきました。本作は、富山県政界で政治活動費を不正使用していた事件をチューリップテレビが追った作品。テレビ局が骨太ドキュメンタリーを作るケースは東海テレビが有名であるが、今回富山の小さなテレビ局からパワフルなリポートが叩きつけられました。平日金曜日の朝方だというのに結構混んでおり、注目度の高さが伺える『はりぼて』の感想を書いていきます。

『はりぼて』概要


富山県の小さなテレビ局が地方政治の不正に挑み、報道によって人間の狡猾さと滑稽さを浮き彫りにする様子を描いたドキュメンタリー。市議14人をドミノ辞職に追い込んだ「政務活動費を巡る調査報道」で日本記者クラブ特別賞などを受賞した富山のローカル局チューリップテレビが、その後3年間にわたって取材を重ね、テレビ番組放送後の議会のさらなる腐敗と議員たちの開き直りともいえる姿を追う。2016年、チューリップテレビのスクープ報道により、「富山市議会のドン」といわれる自民党重鎮の不正が発覚した。これを皮切りに議員たちの不正が次々と判明し、半年間で14人もの議員が辞職する事態に。富山市議会はその反省をもとに厳しい条例を制定するが、3年半が経過した2020年には、議員たちは不正が発覚しても辞職せず居座るようになっていた。そんな議員たちを取材し、政治家の非常識な姿や滑稽さを目の当たりにしていく記者たちだったが……。
映画.comより引用

富山の《はりぼて》 政治に《はりぼて》取材がメスを入れる

安倍晋三や小池百合子の愚行の数々に辟易することも多かろうここ最近。でも、どうしてこうもポンコツな政治なのだろうか?もう少しスケールの小さい政界を覗いて観るとそのメカニズムが分かってくる。富山市議会で政治家の給与を月給60万円から70万円に引き上げる案が出る。その理由を取材すれば、言葉巧みに「政治家って後ろ盾がなければ2ヶ月5万円ぐらいでやっていかないといけないから、そりゃ新規参入者に可哀想だろ。」と論破されてしまう。

しかし、書面では「除雪作業しているから」、「金沢と同じ仕事をしているから」などといった論理的説得力にかける理由がズラリと並ぶ。それに怒る市民は、市議会や市庁舎前で反対運動を始めるが、案は可決されてしまう。マスコミに対し、政治家は「制度に則って可決されたに過ぎない。それを覆したら制度の暴走だろう。制度の結果だから個人的なコメントを出すまでもない。」と押し切られてしまう。

しかしながら、その後の調査で次々と汚職疑惑が出てくる。富山市が何故か、政務活動費唯一100%消化している点に疑問を抱き調査すると、頑張っても100人しか収容できない公民館での会合に1,800部の印刷費が申請されていたり、酒代は政務活動費に入れてはいけない筈なのに活動写真では酒がガッツリ写っている。これはどういうことなのか?政治家を問いただすも、その場で思いついた滅茶苦茶な言い訳で言いくるめようとしてくる。ガバガバな詰将棋をパワーで押し切ろうとする政治家に、荒々しく詰めていくチューリップテレビ。そして詰めれば、「記憶にございません」とか「もう二度と起こしません」と言い、それでも政治家の座を捨てようとしないのだ。何度、倒しても汚職は出てくる。それは過去のことだ、水に流そうと説得し始める政治家たちだが、厚顔無恥な彼らにつける薬はありません。

安倍晋三や小池百合子もそうだが、どうも政界でトップに胡坐をかく人は、総じてタフな精神力で厚顔無恥を極めた方だそう。それだけに、土下座をはじめとするパフォーマンスは、パフォーマンスに過ぎず面従腹背、腹のなかでは自分を変える気は更々ないのだ。この病理を暴いていくチューリップテレビは、その荒々しい取材のため、編集に危うさが伴い、ドキュメンタリー映画として見辛さがある。東海テレビと比べると撮影や編集技術に雲泥の差がある。要するに《はりぼて》なのだ。そんな《はりぼて》が《はりぼて》に挑む。そしてチューリップテレビの《はりぼて》さを批評しながらマスコミとしての役割を全うしようとするこのドラマに魅了されました。

残念ながら、チューリップテレビの自己批判は、何を批判しているのかが見えにくく、それ故に終盤の展開が蛇足に見えてしまったのだが、今注目のドキュメンタリーであることには変わりない。

※画像は映画.comからの引用

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