【ブルキナファソ映画】『Wend Kuuni』ガストン・カボーレ(31歳・国立映画センター館長)、僕も映画が作りたい

Wend Kuuni (1982)
God’s Gift

監督:ガストン・カボーレ
出演:Serge Yanogo,Rosine Yanogo,Joseph Nikiema,Colette Kaboré etc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Twitterのスペース機能を使ってブルキナファソのワガドゥグ全アフリカ映画祭(FESPACO)トークをすることになった。ブルキナファソに最近まで住んでいた方をお招きしてガッツリ3時間ぐらいトークをすることになったので、イドリッサ・ウエドラオゴ以外のブルキナファソ映画を探していたら『Wend Kuuni』を観ることに成功した。

ブルキナファソは1960年にオートボルタ共和国として独立。翌年、1961年には情報省にCinema Serviceが創設される。アフリカの他国同様、ニュース映画や短編映画を製作する形で映画産業は発達していった。しかしながら当初は、技術的な問題があり製作の過程でパリのラボラトリーを経由する必要がありました。独立してもなお、フランスの影響を受けている事態から脱却するために1970年1月5日に政府は映画館を国有化し、映画会社Société National Voltaique de Cinéma(SONAVOCI)を設立する。そして1977年にはフランス国立映画センター(CNC)を模倣し、国立映画センター(The Direction du Centre Cinèmatographic)を創設する。この館長に任命されたのがガストン・カボーレだ。パリのソルボンヌ大学で植民地支配者によるアフリカへの人種的偏見の歴史を研究していた彼は、映画を歴史を伝えるメディアとして活用しようと考えていたが、段々と映画そのものに興味を示すようになる。そして、1982年に初監督作『Wend Kuuni』を発表。これが第11回セザール賞でフランス語映画賞(Meilleur film francophone)を受賞したことで、ブルキナファソ映画の国際進出の大きな一歩を踏み出した。

さて、そんな『Wend Kuuni』はどんな作品なんでしょうか?


【アフリカ映画】第27回ワガドゥグ全アフリカ映画祭ラインナップ発表

『Wend Kuuni』あらすじ

In pre-colonial times a peddler crossing the savanna discovers a child lying unconscious in the bush. When the boy comes to, he is mute and cannot explain who he is. The peddler leaves him with a family in the nearest village. After a search for his parents, the family adopts him, giving him the name Wend Kuuni (God’s Gift) and a loving sister with whom he bonds. Wend Kuuni regains his speech only after witnessing a tragic event that prompts him to reveal his own painful history.
訳:植民地時代以前、サバンナを渡ってきた行商人が、茂みの中で意識を失って倒れている子供を発見する。意識を取り戻したその子は、自分が誰なのか説明できない無口な子だった。行商人はその子を近くの村の家族に預ける。両親を探した結果、その家族は彼を養子に迎え入れ、ウェンド・クウニ(神の贈り物)という名前を与え、愛すべき妹との絆を深めていく。しかし、ある悲劇的な出来事をきっかけに、自らの辛い過去を明かし、言葉を取り戻していく。

IMDbより引用

ガストン・カボーレ(31歳・国立映画センター館長)、僕も映画が作りたい

子どもを連れて逃げた母。取り残された少年は記憶喪失になって道端に倒れていた。スレイマン・シセ『ひかり』がもしバッドエンドだったらこうなるのかもしれない。目の前が真っ暗になって倒れていた少年は、モシ村に保護される。何も話せない彼。名前も覚えてないようなので「神様の贈り物」という意味を込めてWend Kuuniと命名する。Wend Kuuniはヤギを世話する仕事に就き、徐々に村人と馴染んでいく。

正直、手探りで映画を作っている印象が強く、とりあえず思うがままに自然を撮ってみました、村を撮ってみましたという印象が強く、映画としてはそこまで面白くない。物語もオーソドックスな、記憶喪失の少年が保護されて、記憶を取り戻すと衝撃の事実が明らかになるというもので捻りはない。故に物足りなさはある。

だが、それでもこの作品には映画の神様が降り立つ瞬間がある。それはヤギが水溜りに次から次へと集まるシーン。本作のテーマの一つが共助なのを象徴するように、狭い水溜りに次から次へとヤギがやってくるが喧嘩が発生しない。この場面には力強いものを感じた。

それ以外は…ブルキナファソ映画の専門家が観て研究する考古学的価値がある程度に留まっているのかなという印象である。それにしても、手元にある「ブラック・アフリカの映画」に掲載されているブルキナファソ映画、入手困難すぎて涙目だ。現存するかも怪しいのだが、ちゃんとブルキナファソではアーカイブされているんですよね?

参考資料

・「ブラック・アフリカの映画」(シネママクシオン編)
「Creative Industries and Developing Countries: Voice, Choice and Economic Growth」(Diana Barrowclough、 Zeljka Kozul-Wright著)

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