【CPH:DOX2022】『GIRL GANG』キラキラの仮面の裏側にあるドロドロ

GIRL GANG(2022)

監督:Susanne Regina Meures

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今年も世界最大級のドキュメンタリー映画祭CPH:DOXが開幕されました。今年のオンラインは、残念ながら他の映画祭で話題となった作品は軒並み現地上映のみとなってしまった関係で、オンラインのラインナップは小粒となっているのですがそれでもパワフルな作品は見つかるものです。今回紹介するのはインフルエンサーの闇を描いた『GIRL GANG』です。

『GIRL GANG』概要

Likes and followers are hard currency in the new media reality, where the right mix of luck and talent can make you an influencer celebrity from your teenage bedroom. 14-year-old Leonie, better known to her fans as Leoobaly, has succeeded. She lives in Berlin with her parents, who have quit their jobs to boost her daughter’s social media career. Hundreds of miles away, her biggest fan, 13-year-old Melanie, lives and fantasises about Leoobaly’s perfect life. ‘Girl Gang’ is a modern-day adventure of dreams and illusions, of self-perception and of the dark side of social media at a time when 86% of young people have said in a survey that they dream of being influencers. Adrenaline, fame and free sneakers are a seductive combination, even for Leonie’s parents, who remember the hard times of their own upbringing in the former GDR. A film for the times, with a charismatic young woman in the self-chosen lead role.
訳:運と才能をうまく組み合わせれば、10代の寝室からインフルエンサーの有名人になることも可能です。14歳のレオニー(ファンにはレオバリーの名で知られている)は、その成功者です。彼女はベルリンで両親と暮らしており、両親は娘のソーシャルメディアのキャリアを後押しするために仕事を辞めた。何百マイルも離れたところに、彼女の最大のファンである13歳のMelanieが住んでいて、Leoobalyの完璧な人生を空想している。ガール・ギャング」は、86%の若者がインフルエンサーになることを夢見ているとアンケートで答えている今、夢と幻想、自己認識、そしてソーシャルメディアのダークサイドを描いた現代の冒険物語である。アドレナリン、名声、無料のスニーカーは、レオニーの両親にとってさえも魅惑的な組み合わせであり、旧東ドイツで育った自分たちの苦難の時代を思い起こさせる。自ら選んだ若いカリスマ的な女性を主役に据えた、時代に即した映画。

※CPH:DOX2022より引用

キラキラの仮面の裏側にあるドロドロ

『GIRL GANG』の調査によれば、86%もの若者がインフルエンサーに憧れているようだ。確かに、日本でもYouTuberは一時期、小学生のなりたい職業に上るほど注目された。社会人レベルになると、Webライターに憧れる人が散見される。「好きなことをして生きる」希望としてインフルエンサーが映るのだろう。しかし、ディスプレイの前でにこやかに微笑み、キラキラした生活を送るインフルエンサーの裏側はどうだろうか?

Susanne Regina Meures監督は、一人のインフルエンサー・レオニーに迫る。彼女は14歳にしてInstagram等で人気者となっている。そんな娘を応援しようと両親は仕事を辞め、マネージャー業を始める。事務所で、インフルエンサーとはどういう存在かのレクチャーを受け、企業案件に取り組む。確かに一本の動画で、まとまった報酬を受け取れるが、不安定な生活であることを辛辣に捉えていく。案件をこなしたのに報酬が払われなかったり、イベントに登壇するもあまりにもファンの熱気が激しく警察から中止勧告を出されたりと過酷だ。そして、何よりも動画の外側ではレオニーも家族もどこか疲れている。1日15時間以上スマホをいじっており、時たま流れてくるアンチの「インフルエンサーって友達いないよね」という言葉に胸を痛めたりするのだ。

自分も会社の顔と、CHE BUNBUNとしての顔を使い分けて生きており、最近SNSでの仮面に興味がある。特にVtuberのキャラクターになりきる仮面像は興味あり、にじさんじの動画を観たりするのだが、やはりアニメーションの顔を纏っていたとしても、膨大なフォロワーと再生回数等で明確に分かる成果主義、ドラッグと化すキラキラした世界に精神を病んだり、翳りが見え隠れしたりするのを目撃している。また、本作を観ると、数年前にInstagramで目撃した幼稚園児モデルの居た堪れない投稿を思い出す。外見はおしゃれな幼稚園生なのに、投稿の文章が明らかに親やマネージャーの手がかかったもので、「〜させていただきました。」みたいな構文を使い、影響力ある人と戦略的に絡んでいる投稿をアップしていたりしたのだ。これはあまりにもグロテスクである。

『GIRL GANG』はインフルエンサーのディストピアな世界を余すことなく描いた作品であり、これは多くの人に観てほしいものがありました。

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※CPH:DOX2022より画像引用