【アカデミー賞】『あの夏のルカ』悪友との友情は思わぬ形で引き裂かれる

あの夏のルカ(2021)
Luca

監督:エンリコ・カサローザ
出演:ジェイコブ・トレンブレイ、マーヤ・ルドルフ、ジャック・ディラン・グレイザー、ジム・ガフィガン、エマ・バーマンetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第94回アカデミー賞に向けて重い腰を上げてディズニー・ピクサーアニメーション『あの夏のルカ』を観た。表面的に社会問題と向き合うイメージが強く、結局のところマジョリティの価値観を押し付けているイメージと汚いビジネス戦略から最近は嫌煙しているディズニー・ピクサー映画ですが、果たして…

『あの夏のルカ』あらすじ

「リメンバー・ミー」「ソウルフル・ワールド」のディズニー&ピクサーによる長編アニメーション。北イタリアの美しい港町ポルトロッソを舞台に、海に暮らす「シー・モンスター」と呼ばれる種族の少年ルカが、あこがれの人間の世界に足を踏み入れる、ひと夏の冒険を描いたファンタジーアドベンチャー。北イタリアの港町ポルトロッソの住民たちは、海に住む未知の存在「シー・モンスター」を恐れていた。しかし、実はシー・モンスターたちもまた、地上に暮らす得体の知れない存在である人間たちを恐れている。それぞれの世界は海面で隔てられ、お互いを恐れ、決して交わることはなかった。しかし、地上への好奇心が抑えられないシー・モンスターの少年ルカは、ある夏、親友アルベルトとともに禁断の地である人間の世界へ冒険に出る。監督はピクサーの短編「月と少年」を手がけ、長編はこれが初監督となるイタリア出身のエンリコ・カサローザ。2022年・第94回アカデミー長編アニメーション賞ノミネート。Disney+で2021年6月18日から配信。

映画.comより引用

悪友との友情は思わぬ形で引き裂かれる

海の世界と地上の世界は、水面という境界線で区切られている。シー・モンスターは、得体の知れない金属を操り魚を殺傷する人間を恐る。また、人間は正体不明のシー・モンスターに恐れをなしている。互いに、干渉しない形で平和がもたらされていた。そんなある日、ルカは不良のアルベルトに導かれ地上に降臨する。シー・モンスターは地上に出ると人間の姿になる。シー・モンスターである時と、体の構造が異なるため、最初は違和感を感じるルカだったが、美しい自然、興味深い人間界の生活に魅了され、閉塞感ある家から離れようとする。そんなある日、少女ジュリア・マルコヴァルドと出会い、一緒にトライアスロンに出ることを決める。

男2人、女1人の黄金比の元、異形のバレるかバレないかサスペンスが繰り広げられる。水に触れるとシー・モンスターの姿になってしまうのだが、周囲には水があり、騒動によってひたすら水に近づけようとする修羅場の釣瓶打ちにくどさを感じつつも軽妙で心地よく楽しめる。

一方で、ルカとアルベルトだけの秘密が暴露される場面がかなり凄惨なこととなっており、自分を守ために咄嗟にアルベルトを売るシーンに辛くなった。本作は、マイノリティの辛さを描いているのは明らかであり、終盤の凄惨な場面は元々アウティングを描こうとしていたのではと思う。先日、ピクサーの従業員がディズニーから同性愛要素の検閲を受けていると告発したニュースが流れていたが、ひょっとしたら本作は同性愛者の息苦しさを検閲通るギリギリのラインで描いた作品であり、血が流れている代物なんじゃないかと考え始めると辛くなってきた。

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※映画.comより画像引用