『DUNE/デューン 砂の惑星』ヴォイスが我々に語りかける

DUNE/デューン 砂の惑星(2020)
DUNE PART1

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ゼンデイヤ、ジェイソン・モモア、ハビエル・バルデム、デヴィッド・ダストマルチャン、デイヴ・バウティスタ、ステラン・スカルスガルドetc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

アレハンドロ・ホドロフスキーが頓挫させ、デヴィッド・リンチが失敗させてしまった悪夢の映画化『DUNE』にドゥニ・ヴィルヌーヴが名乗りを挙げた。すっかりSF超大作の人となった彼が『DUNE/デューン 砂の惑星』を映画化。2部作の前編が日本で公開された。Twitterでの評判はお葬式モードでした。確かに、それも納得な作品である一方で、『十戒』、『ベン・ハー』、『天地創造』といった50~60年代の超大作を彷彿とさせる見応え抜群な映画となっていました。

『DUNE/デューン 砂の惑星』概要

「ブレードランナー2049」「メッセージ」のドゥニ・ビルヌーブ監督が、かつてデビッド・リンチ監督によって映画化もされたフランク・ハーバートのSF小説の古典を新たに映画化したSFスペクタクルアドベンチャー。人類が地球以外の惑星に移住し、宇宙帝国を築いていた西暦1万190年、1つの惑星を1つの大領家が治める厳格な身分制度が敷かれる中、レト・アトレイデス公爵は通称デューンと呼ばれる砂漠の惑星アラキスを治めることになった。アラキスは抗老化作用を持つ香料メランジの唯一の生産地であるため、アトレイデス家に莫大な利益をもたらすはずだった。しかし、デューンに乗り込んだレト公爵を待っていたのはメランジの採掘権を持つハルコンネン家と皇帝が結託した陰謀だった。やがてレト公爵は殺され、妻のジェシカと息子のポールも命を狙われることなる。主人公となるポール役を「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメが務めるほか、「スパイダーマン」シリーズのゼンデイヤ、「アクアマン」のジェイソン・モモア、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、オスカー・アイザック、レベッカ・ファーガソンら豪華キャストが集結した。

※映画.comより引用

ヴォイスが我々に語りかける

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は長編デビュー作である『Un 32 août sur terre』から一貫して、画に執着している。まるで、アートブックを作るように、広大な大地や都市を捉える傾向があり、それが時として物語に遅延を引き起こし、アクションへの注意を怠ってしまう。正直、日本のワーナーがあれだけダサいCMを打ってしまったのもなんとなく分かる。1時間半程経過しないと盛り上がるアクションにたどり着くことができない。しかも、そのアクションが軽やかに人間が動きすぎて重みが感じされないのだ。デヴィッド・リンチ版で特徴的だった、ドロイドとの修行シーンは淡白な剣試合に留まり、それも画から本気度が伝わってこない。話も、映画に慣れていないと飲み込みづらいところがある。故に、私は冒頭5分で寝てしまい、友人に起こされてしまう状況でした。

確かに退屈な作品ではあるのだが、50~60年代の大スペクタクル映画のようにジッと豪華絢爛な画に身を任せていると段々と魅力を感じてくる。そして、映画館で「体験」できたことに感動を覚えるのだ。

まずなんといっても、ハンス・ジマーの音楽を含めた「音」の扱いだ。ティモシー・シャラメ演じるポール・アトレイデスは母ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)から「音」を使って相手を操る能力を教わる。この能力を観客も体感することができる。声が届くよりも先に振動が観客の心を打つ。その独特な感覚、現実では滅多に味わえぬ感覚を序盤に提示され、一気にDUNEの世界に引き摺り込まれるのだ。

そして、大きな政治の中で駒としてコントロールされるポールが、夢見る未来の一ページを段々と自分の感覚の中に取り込み、一寸先は死の世界で感覚を研ぎ澄ませながら政治をコントロールする側になっていくこの成長譚に熱くなる。『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』など、未熟な者が大人社会に揉まれながら段々と目つきが変わっていく映画が好きな私には刺さる。そして、その感情の変化というのは現実もそうだが、小さな積み重ねの上、長い時間かけて熟成されてこそのところがある。故に本作において2時間半は必要な時間だった。

まあ、原作のファンでもないし、結局ホドロフスキー版の脚本40ページぐらい読んだが、そこまで『DUNE』熱は高くないのでそこまで書くことないですが、続編は作られて欲しいなとは思った。

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※映画.comより画像引用