【CPH:DOX2022】『A HOUSE MADE OF SPLINTERS』そのシェルターは悲しみでできている

A HOUSE MADE OF SPLINTERS(2022)

監督:Simon Lereng Wilmont

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

CPH:DOXでウクライナに関するドキュメンタリーが配信されていた。『A HOUSE MADE OF SPLINTERS』はサンダンス映画祭でワールドシネマドキュメンタリー部門で監督賞を受賞しており、アカデミー賞ノミネートが期待される作品である。これが強烈な内容であった。

『A HOUSE MADE OF SPLINTERS』概要

In a large ramshackle house near the front line in war-torn eastern Ukraine, a group of Ukrainian women run an orphanage. Here, children whose homes have been shattered by poverty, violence and alcohol can stay safely for up to nine months until a decision is made on whether to return them home, foster them or move them to another orphanage. But when one child checks out of the orphanage, a new one always checks in, missing her parents – like Kolia, who smokes cigarettes on the sly, steals and draws tattoos on his arms, but also looks after her younger siblings and collapses crying into her drunk mother’s arms in Simon Lereng Wilmont’s award-winning film.
訳:戦火の絶えないウクライナ東部の最前線に近い大きなおんぼろ住宅で、ウクライナの女性たちが孤児院を運営しています。ここでは、貧困や暴力、アルコールなどで家庭を崩壊させられた子どもたちが、家に返すか、里子に出すか、他の孤児院に移すかが決まるまで、最長9カ月間、安全に過ごすことができるのです。しかし、一人の子供が孤児院をチェックアウトすると、必ず新しい子供がチェックインしてくる。コリアのように、こっそりタバコを吸い、盗みを働き、腕にタトゥーを描きながら、弟妹の世話をし、酔った母親の腕の中で泣き崩れる。サイモン・レレン・ウィルモントの受賞作であるこの作品では、このように両親を恋しがる子供が登場する。

※CPH:DOXより引用

そのシェルターは悲しみでできている

仄暗い場所、女性職員は子どもたちを起こす。衣食住すら満足に提供されてない、激しい水漏れもあるようなこの空間は崩壊した家庭から子どもたちを一時的に預かるシェルターとして機能している。あくまでシェルターなので、最長9ヶ月の保護期間が終わると「親元に帰る」「里親に引き取られる」「孤児院に移送される」のいずれかが実行される。子どもにとっては運命の瞬間である。その重大さは言語化できないが、子どもたちの中で不安という形で付き纏う。だから、不安げに電話をしたり、自分を傷つけたりしそうになったりする。このシェルターは悲しみでできているのだ。崩壊しそうだが、この空間は絶望の淵にいる子どもたちを少し和らげる。職員は、愛情を注ぎ、吐露の吐口になったりする。また十分な教育はないけれども、子どもたちが無邪気に戯れる場となることで、対話の機会を生み出しているのだ。行き場はない、でも安全圏は作ることはできる。

どこか、アンドレア・アーノルド『フィッシュ・タンク』のような行き場のない世界のもがきをこの映画に感じました。日本公開してほしい一本である。

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※CPH:DOXより画像引用