セクシー・ドゥルガ(2017)
Sexy Durga
監督:サナル・クマール・シャシダラン
出演:ラージャシュリー・デーシュパーンデー、カンナン・ナーヤル、スジーシュ・K・S etc
評価:85点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
動画配信サイトMUBIで開催されている企画A JOURNEY INTO INDIAN CINEMAでは、日本でなかなか観ることのできない作品が多数配信されている。インド映画といえば豪華絢爛な景色の中て歌って踊るイメージが強いのですが、この特集では踊らないインド映画が多数紹介されている。その中の一本『セクシー・ドゥルガ』を観てみました。本作は、第30回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で紹介された作品であり、サナル・クマール・シャシダラン監督はインド社会にある暴力の怖さを描くのが得意らしい。と言うわけで感想を書いていきます。
『セクシー・ドゥルガ』あらすじ
北インド出身女性のドゥルガと、ムスリム男性のカビールが無人の夜道を歩いている。駅まで車に乗せてもらおうとヒッチハイクをすると、いかがわしい車に乗せられてしまう。一方、近郊の村では女神ドゥルガを称える祭が行われており、身体にフックを突き刺す肉体的苦行を捧げる儀式に見物客が群がっている…。インド社会において、女性は女神にも搾取の対象にもなりうるという、その二面性を描く作品である。しかし、本作の見どころはシャシダラン監督の特異な作家性だろう。男女が車に乗った瞬間から不条理な悪夢のループが始まり、とても目的地には辿りつきそうにない。そして平行して描かれる祭の様子は、優れたドキュメンタリー作品のような趣きである。ラストに流れるヘビメタのBGMも印象に残る。ロッテルダム国際映画祭タイガー・アワード(最高賞)受賞作。
※第30回東京国際映画祭サイトより引用
インドで誘拐されてみる?
インドの禍々しい祭の熱気からこの映画は始まる。インド南部ケーララ州の奇祭ガルーダン・トゥーカム(Garudan Thookkam)だ。男の背中に針が通され、まるでデスゲームで死ぬ3秒前の状態でえっさこらさと担ぎ込まれる。ガルダというインド神話に登場する火の鳥になりきるのだそう。『ヘル・レイザー』もピンヘッド男大歓喜の祭を10分近く魅せられると、突然真っ暗ガランとした空間が映し出される。そこにポツリと女の人が立っており、ヒッチハイクをしているようだ。そして、どうやら彼女は男の人と駅を目指していることが分かってくる。
そこに車が通りかかる。乗り込むと、ドス黒い不吉な予感が画面全体に広がってくるのだ。トラベルジャンキーなら一度は経験したことのある修羅場の前兆がそこに見えるのです。助手席に座るスキンヘッドの男が執拗に女の人に語りかけてくる。
「あんた名前は?」
それを相方が「彼女はねぇ」というと、「俺は彼女に訊いているんだ!名前はなんて言うんだ?」と尋問し始める。そんな状況にもかかわらず、男のスマホにちょいちょい爆音で通知が入る。緊迫感があるのに状況はどんどん悪くなり、彼女は咳き込み始める。
「おい、水やるよ、飲めよ。」
と煽り始める。
遂に怒り、男は女を連れて車を降りるのだが、車通りが少ない。別の車を拾おうにもなかなか掴まらない。そこに奴らが現れ、「さっきはごめんよ、だから乗ってよ」とまるでDVをする人のような甘美な声で迫り来るう。仕方なく、再び乗ると、今度は警察が現れたり、なんとかして脱出すると、腰にバスタオルを巻いたような変態おっさんコンビに追い回されたりする。90分しかないのに、誰しもが早く終わってくれと思う嫌な空気が充満し、さて彼らは無事に駅にたどり着けるのだろうか?という絶望を指咥えて見つめることとなる。
東京国際映画祭ではあまり話題にならなかったようですが、文句なしにモノホンのインドの恐怖を味わえる作品である。
P.S.何故かMUBIでの配信では、上映前の映画泥棒の映像的なものが付属していたり、映画の途中で「劇場内でのお酒はダメです」みたいなテロップが出ていて興味深かったです。
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