『CENSOR』映画検閲のミイラ取りがミイラになった話

CENSOR(2021)

監督:Prano Bailey-Bond
出演:ニーヴ・アルガー、マイケル・スマイリー、ニコラス・バーンズ、ヴィンセント・フランクリン、ソフィア・ラ・ポルタetc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

何ヶ月か前に知った、映画検閲者を題材にしたホラー映画『CESOR』を入手したので、観てみました。日本でも映倫は、度々映画関係者や映画業界人の間で話題になる。だが、映画を検閲する側を題材にした映画は全く見かけないので新鮮でした。

『CENSOR』あらすじ

After viewing a strangely familiar video nasty, Enid, a film censor, sets out to solve the past mystery of her sister’s disappearance, embarking on a quest that dissolves the line between fiction and reality.
訳:映画の検閲官であるイーニッドは、奇妙に見覚えのあるビデオ・ネストを見たことをきっかけに、妹の失踪という過去の謎を解き明かすため、虚構と現実の境界線を溶かすような旅に出ることになる。

imdbより引用

映画検閲のミイラ取りがミイラになった話

スプラッターホラーを真顔で見る映画検閲者イーニッド(ニーヴ・アルガー)。試写室ではなく、個室で小さなテレビにVHS再生させアウトな描写をメモしていく。どこか退屈そうで映画に憎悪を持った眼差しで検閲を行う。そしてある日、検閲しているビデオの中に疾走した姉の妹を見つける。そして既に妹のことを諦めてしまっている両親を振り切って、妹を探すうちに虚実が曖昧になっていく。

ヒッチコック映画のような、あるいは『第七の犠牲者』のような気配はあるのに探しているうちに蠢く虚構の中に取り込まれていく恐怖を幻想的な映像で演出していく。なんと言っても、虚構が主人公の精神を取り込む場面では、画面のサイズがスタンダードサイズとなり、まるでスプラッター映画の世界に紛れ込んでしまったかのような錯覚を引き起こす。

そしてそれが、あることに夢中になるうちに現実が認識できなくなる姿を客観的に捉える演出として強い説得力を持っている。現実世界では陰謀論等にのめり込んでしまった人は現実の外側にいる人として、人と人との間に大きな壁ができてしまう。映画の場合、そこに穴を開けることができ、観客は穴の先にある精神状態を観測することができる。これは映画がなせる業だと言える。

単に映画検閲者に憎悪をぶちまけるのではなく、人間の心理変化と誠実に向き合っているので、個人的には胃もたれしてしまった映画ではあるものの悪くないと感じました。

日本だと未体験ゾーンの映画たちやのむコレに来そうな映画である。

※imdbより画像引用