【MUBI】『DADDY AMIN』エジプトのサザエさんはアメリカのミュージカルに羨望を抱く

DADDY AMIN(1950)
بابا أمين

監督:ユーセフ・シャヒーン
出演:Hussein Riad,Faten Hamama,Kamal Al-Shennawi  etc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今、MUBIではエジプトの巨匠ユーセフ・シャヒーン初期作特集が行われており、日本からでも「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されている『カイロ中央駅』をはじめ、『THE BLAZING SUN』、『DARK WATERS』、『THE DEVIL OF THE DESERT』、そして『DADDY AMIN』の5作品が観られる。エジプトは歴史学的に「アフリカ」という括りから外されることが多く、「ブラック・アフリカの映画」では最古のアフリカ映画として1955年のセネガル映画『セーヌ湖畔のアフリカ(Afrique-sur-Seine)』を挙げている。この本ではサハラ砂漠以南のアフリカをアフリカ(=ブラック・アフリカ※現在の言い方だとサブサハラアフリカ)と定義している。だが、エジプトを含むと、もう少し古くから映画は存在する。事実、ユーセフ・シャヒーンは1950年にミュージカル映画『DADDY AMIN』を製作しているのだ。ということで、今回は本作の感想を書いていく。

『DADDY AMIN』あらすじ

The good-natured clerk Amin lives with his wife and children in modest circumstances. After getting duped into a shady investment, the family is is thrown into chaos and father Amin dies. In the wake of his death, he begins to observe the aftermath of his actions on his family from the afterlife.
訳:お人好しの事務員Aminは、妻と子供と一緒に慎ましく暮らしている。怪しげな投資に騙され、一家は大混乱に陥り、父・アミンは死んでしまう。自分の死後、彼は死後の世界から自分の行動が家族に与える影響を観察し始める。

MUBIより引用

エジプトのサザエさんはアメリカのミュージカルに羨望を抱く

弟と姉が早口バトルをし、カッとなった姉が「おかあさん、彼が変なこと行ってくるんだけど」とぼやく。まるでサザエさんのような光景から始まる本作は、サザエさんはサザエさんでも江利チエミ演じる実写版サザエさんのようなハリウッドミュージカルに対する羨望に満ち溢れた作品だ。

お人好しの父アミンは投資詐欺に遭った挙句幽体離脱するアクシデントに見舞われる泣きっ面に蜂だ。彼の前に「私は父だ」と現れる男が飄々とアミンに語りかける一方で、当の本人は家族のことが気がかりでしょうがない。ほとんど干渉できず指を咥えることしかできない、彼は死後の家族のドタバタを見つめていく。

本作では中盤からミュージカルが始まる。バズビー・バークレーを意識した、豪華絢爛なセットの中で、ダンサーがマスゲームをしていく。正直、バズビー・バークレーが天才過ぎることもあるのだが、マスゲームの魅せ方としてはイマイチだ。∞を描くように男性の黒と女性の白が動く場面。これはバークレー・ショットで撮ると映えるのだが、中途半端な角度から捉えられている。また、四角いフレームを抜けていく場面ではそのフレームと人間の関係性に拘りがなく、沢山フレームが用意されているのに、ただ通過しているだけだったりする。

それでも、部屋に向かってゾロゾロと女性が入り歌が始まる場面や、セットが突然崩壊し明らかに事故現場となっている場所が映っているなど幾つか見所はあった。

また、幽体離脱するアミンや棒からニョキッと藤子・F・不二雄作品のように顔を出す彼の姿がお茶目だったりするので憎めない作品である。面白くはないが、アフリカ映画もといエジプト映画のいにしえを知るきっかけには十分な作品と言えよう。

※MUBIより画像引用

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