【アカデミー賞】『白い自転車』イスラエルのワンカット痴話喧嘩

白い自転車(2019)
White Eye

監督:Tomer Shushan
出演:ダニエル・ガドetc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第93回アカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされているイスラエル映画『白い自転車』を授賞式前の追い込みで観ました。これがユニークな作品でありました。尚、ネタバレ記事です。

『白い自転車』あらすじ

盗まれた自転車が他人に使われていることに気付いた男。人間としての一線を越えずに何とか自転車を取り戻そうと男は奮闘する。

※SHORTSHORTSより引用

イスラエルのワンカット痴話喧嘩

本作は盗まれた自転車を取り返す物語をワンカットで描いた異色作だ。主人公の男は、道に繋がれた白い自転車をどうにかしようとしている。彼の盗まれた自転車だ。傷跡からして明らかに自分のものである。警察に電話をするものの、たらい回しにされてしまう。近くにおじさんがいたので、声をかける。取り合ってもらえないようなら、チェーンを外して持ち帰ってしまおう。ただ、運が悪いことにそこに警察官が現れる。逆にチャンスかもしれないので、警察官に泣きつくが、犯人がその場にいないとどうにもできないとのこと。

そうこうしているうちに、犯人らしき人が現れる。彼は誰かからその自転車を購入している。彼は移民だ。なけなしの金で自転車を買ったのに、それが盗難車だった。じゃあ明日からどうやって娘の送り迎えをすればいいのか?「自転車代をくれ!」というが、男は断る。さっきまでチェーンで切断するために即決でお金を支払おうとしていたのに、同額で貧しい移民から自転車を取り返すことは拒絶するのだ。そうこうしているうちに、彼は移民として警察官に連行されてしまう。

本作は、単にワンカットの技術的難しさに寄りかかることなく、組織や社会的地位によるデッドロックによってドンドンと最悪な方向に転がっていくのを脚本で魅せていく。同じ金額でも、お金を払ったり拒絶しようとしていたする様子に人間の一貫性のなさを鋭く斬り込んでいて良かった。

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