サンクスシアター映画総括

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2020年、新型コロナウイルス蔓延により困窮するミニシアターを支援するクラウドファンディングMini-Thaeter AIDが発足した。総額3億3,102万5,487円(コレクター数2万9,926人)集まるクラウドファンディング史上最高レベルの盛り上がりをみせました。映画館に育てられたようなものである私も支援しました。本クラウドファンディングのリターンとして、サンクスシアターと呼ばれるインディーズ日本映画が観られる特設VODの観賞権がある。私は80本の権利があったのでこの1年間、いろんなインディーズ映画と出会いました。結構、サボっていたこともあり、全ての権利を行使することはできませんが星評を作ったので総評と共に公開しようと思います。

サンクスシアター映画ベスト

1.バンコクナイツ
2.花に嵐
3.花子
4.息を殺して
5.5windows eb(is)
6.歓待1.1
7.旧支配者のキャロル
8.天国はまだ遠い
9.東京人間喜劇※第二話:椅子のみ
10.螺旋銀河

サンクスシアター映画星評

1. 14の夜 ★★★★
2. 息を殺して ★★★★★
3. ユートピア ★★★
4. 足手 ★★★
5. 堀切さん、⾵邪をひく ★★★
6. あさっぱら ★★★★
7. Mother Said. I Sing. Wife Listens. ★★★
8. 花に嵐 ★★★★★
9. 遭難フリーター ★★★
10. 22/3ドーナッツ ★★
11. ウルフなシッシー
12. 豆大福ものがたり ★★★★
13. OUR CINEMAS ★★★
14. 恋愛依存症の女
15. 螺旋銀河 ★★★★
16. コンシューミング・スピリッツ ★★★
17. ECHO ★★
18. あいが、そいで、こい ★★★★
19. 23話目
20. ひかりの歌 ★★★★
21. ジョギング渡り鳥
22. All Night
23. /デュオ ★★★
24. 8.14, 2330 ー最後の空襲、熊谷ー ★★★
25. あとのまつり ★★★★
26. 5windows」+「5windows mountain mouth ★★★★
27. 5windows eb(is) ★★★★★
28. 彼方からの手紙 ★★★★
29. ドキュメンタリー 頭脳警察(第1部のみ) ★★
30. 旧支配者のキャロル ★★★★★
31. 百円の恋 ★★★★
32. ★★★
33. ハーメルン ★★★
34. Every Day ★★★
35. バンコクナイツ ★★★★★
36. 尊く厳かな死 ★★
37. 蹴る ★★★★
38. 神宿スワン ★★
39. 心臓2つ/父と歴史 ★★★
40. お嬢ちゃん ★★★★
41. 映画の妖精 フィルとムー ★★
42. 天国はまだ遠い ★★★★
43. 永遠に君を愛す ★★★
44. THE DEPTHS ★★★
45. PASSION ★★★★
46. 親密さ ★★★★
47. 椅子 ★★★
48. 東京人間喜劇 ★★★(「椅子」のみ★★★★★)
49. 歓待1.1 ★★★★★
50. ほとりの朔子 ★★★
51. ざくろ屋敷 バルザック「人間喜劇」より ★★★★
52. 自転車と音楽(深田晃司短編集) ★★★★
53. 鳥(仮)(深田晃司短編集) ★★
54. ジェファソンの東(深田晃司短編集) ★★
55. ポルトの恋人たち~時の記憶 ★★
56. 怯える ★★★★
57. いたくても いたくても ★★★★
58. ロマンス・ロード ★★★
59. イエローキッド ★★★
60. 極東のマンション ★★★
61. ほぞ ★★★★
62. 絶体絶命8 ★★★
63. SYNCHRONIZER ★★
64. Playback ★★★★
65. スパイの舌 ★★★
66. 五億円のじんせい ★★★
67. 夜、逃げる
68. おとぎ話みたい ★★★★
69. おやすみ、また向こう岸で ★★★★
70. たちんぼ ★★
71. 狛犬 ★★
72. echoes ★★
73. おばあちゃん女の子 ★★★★
74. 花子 ★★★★
75. 愛しのダディー殺害計画 ★★
76. うつくしいひと ★★
77. 恋のクレイジーロード ★★★★

サンクスシアター映画総括

サンクスシアターには深田晃司、濱口竜介、瀬田なつきなどといった2010年代以降から頭角を表してきた新鋭監督の作品が沢山あります。2010年代インディーズ映画は大きく分けて3つに分類することができる。

1.会話劇
2.閉塞感もの
3.黒沢清再構築

会話劇は低予算でできるものの、如何にただの会話の垂れ流しや演劇から逃れられるかが重要である。会話劇といえば、エリック・ロメールに始まりジム・ジャームッシュ、ホン・サンスなどいるが、画の拘りや、強固な哲学なくして真似ると大火傷する。『ウルフなシッシー』、『恋愛依存症の女』はその哲学がないようにみえ、貧乏くさい画の中でダラダラと会話をしているだけに見えた。『尊く厳かな死』のように尊厳死に斬り込んだ会話劇もあったが、問題的の手段として映画を使っている印象が強く、映画としての魅力がない作品もあった。

一方で、抑圧される女性をネガティブと対極にあるロメール調の色彩の中で捉えた『お嬢ちゃん』、イキッて個展を開くがパーティに誰もこない辛辣さを生々しく描いた『東京人形喜劇』第2話「椅子」のシュールで最悪な訪問者といったように、テーマに対して視覚のメディアである映画ができることを見つめた作品は自ずと私の心が踊らされました。

ハッピーアワー』、『寝ても覚めても』で日本でも知名度が上がった濱口竜介監督は、映画における会話を鋭く分析していると思う。彼は、アベル・フェラーラに近いものがある。映画の中でのみ肯定されるクズの存在を通じて、人間の複雑な心理を掬い取る手法を濱口竜介監督は得意としている。『永遠に君を愛す』では結婚前夜、家族という柵の外側にいる者の迷いを、謎の仲介者を通じて暴いていた。これを見ると、のび太がしずかちゃんと結婚する際の迷いを描いた『STAND BY ME ドラえもん 2』は濱口竜介が手がけた方が良かったのではと思う。

また、男性の監督は理詰めで会話劇を描くイメージがあるが、女性監督はそこに情熱や感性の爆発を見ることが多かった。山戸結希もそうだが、何と言っても瀬田なつきが凄まじい。大林宣彦映画を彷彿とさせる言葉のドッヂボールとフワフワと揺れ動く少女のマリアージュを通じて、一貫して思春期の肉体から溢れんばかりの感情を表象していて、観ていて楽しい。特に『5windows eb(is)』で、中村ゆりか演じる女の子が、キザに気取る染谷将太を真似してピンクのポッキーをパクつく動きには感動しました。

『あみこ』で一躍日本映画ファンの間で注目された山中瑶子の作品『おやすみ、また向こう岸で』は、ガールズトークを小津安二郎ばりの厳格な空間分割で描く意欲作となっていて、こうした女性監督の活躍をみると、河瀨直美や蜷川実花が日本を代表とする女性監督の立場から手を引く段階にきていると感じました。

長引くコロナ禍で映画業界は疲弊している。また、SNSによって映画業界のパワハラセクハラが明るみになってきました。一方で、clubhouseやスペースでは映画業界の人やインフルエンサーが映画業界の問題とどう向き合うのかを真剣に語り合うようになった。日本のインディーズ映画の世界には沢山超絶技巧な監督がおり、濱口竜介が先頭を切ってベルリン国際映画祭を制し明るい道ができつつある。日本映画界がいい意味で世代交代することを祈りたい。

 

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