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カイエ・デュ・シネマベストテン2018発表 今年はゴダールの『イメージの本』…ではなく謎の監督マンディコの『ワイルド・ボーイズ』

カイエ・デュ・シネマベストテン2018発表 今年はゴダールの『イメージの本』…ではなく謎の監督マンディコの『ワイルド・ボーイズ』

カイエ・デュ・シネマベストテン2018発表 今年はゴダールの『イメージの本』…ではなく謎の監督マンディコの『ワイルド・ボーイズ』


当ブログが毎年追っているフランスの捻くれ映画雑誌カイエ・デュ・シネマがベストテンを発表しました。

今年は、てっきりゴダールが遂にモノリスそのものになってしまったらしく、カンヌ国際映画祭でパルムドールを超えるスペシャル・パルムドールを獲った『イメージの本(Le Livre d’image)』に1位の座を与えるのだろうと思っていたのだが、本作はまだフランスで公開されていないこともあり、落選しました。そうなってくると、何が1位になるのだろう?イ・チャンドン?ポール・トーマス・アンダーソン?いやいやガッツリ表紙を飾り、膨大な文字数によるインタビュー&考察記事を放ったラース・フォン・トリアー?とワクワクしながら発表を見たら、なんと意外なことにベルトラン・マンディコの『ワイルド・ボーイズ』が1位の座を仕留めました!!

さて、今年も1位から順番にまとめていきます。

※青字のタイトルを押すとブンブンのレビューが読めます

1位:ワイルド・ボーイズ(LES GARÇONS SAUVAGES)

監督:ベルトラン・マンディコ
出演:Vimala Pons, Anaël Snoek, Pauline Lorillard

今年、シネフィル向けVODサイトMUBIで特集され、MUBIガチ勢の間で話題なったフランスのベルトラン・マンディコ。先日、アンスティチュ・フランセの交差する視点 – 日仏インディペンデント映画特集で上映された本作は、まるで『蝿の王』ないし『十五少年漂流記』をサイケデリックにアップグレードしたような作品だ。

Les Garçons sauvages est nacré comme une perle, blanc comme le sperme et noir comme le sang, étincelant comme un diamant, et traversé d’éclats technicolors sidérants.
ブンブン意訳:『ワイルド・ボーイズ』は真珠の中の真珠であり、精液のように白く、血のように黒く、ダイヤモンドのように輝いており、驚異的天然色による成功が貫いた。

カイエ評がキレッキレでした。これはアンスティチュ・フランセに行っておけばよかったと後悔。

2位:CoinCoin et les Z’inhumains

監督:ブリュノ・デュモン
出演:アラヌ・ドゥラエ、リューシー・カロン、ベルナール・プリュヴォスト

カイエ・デュ・シネマは大のブリュノ・デュモン好き。彼に対する愛はデヴィッド・リンチ並みに強く、常にランクインさせている。しかも、テレビシリーズだろうと容赦なく入れてくる。さて、本作はかつて1位の座を与えたテレビシリーズ『プティ・カンカン(P’TIT QUINQUIN)』の続編にあたる作品だ。ベルナール・プリュヴォスト扮するおとぼけ警官がまた新たな珍事件に巻き込まれる作品。これまたテレビ映画だ。『プティ・カンカン』が明らかにフランス版デヴィッド・リンチワールドだっただけに、どんだけカイエ誌はツイン・ピークス好きなんだよと思いました。本誌でもガッツリ特集組まれていました。

“Ç”【カンヌ映画祭特集】ブルーノ・デュモンの異色ミステリー「プティ・カンカン(前編)」
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3位:ファントム・スレッド(Phantom Thread)

監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ヴィッキー・クリープスetc

一狩り行こうぜ♪と嫁を主演にモンスターハンターを撮っているどこかのアンダーソンとは違い、こちらのクレイジーシネフィル監督の一度掴んだら映画ファンの心を決して離さないアンダーソンは、今回も無事カイエの心を鷲掴みにしました。クラシカルで、凡庸なストーリーテリングにも関わらず、監督自ら振り回す滑らかなカメラワーク。そしてダニエル・デイ=ルイスの顔芸にカイエも平伏したようだ。現にカイエは次のようにコメントしています。

Phantom Thread atteint sans doute sa limite dans cette façon d’envoyer des signaux contradictoires : le film est plus déstabilisant que bouleversant. Mais cette excentricité est aussi sa force : comme Reynolds Woodcock capitulant devant Alma, il faut se rendre à sa somptueuse étrangeté.
ブンブン訳:『ファントム・スレッド』は恐らく、矛盾した信号を送るような手法の中で彼の限界に達していることでしょう。この映画は心を揺さぶるというよりかは不安定だ。しかしながら、これの偏心は監督の強みでもあります。レイノルズ・ウッドコックがアルマに固執するように、豪華な異常さに平伏さねばなりません。

4位:バーニング 劇場版(버닝)

監督:イ・チャンドン
出演:ユ・アイン、スティーヴン・ユァン、チョン・ジョンソetc

先日、NHK4K放送で短縮版が放送されたイ・チャンドン久しぶりの新作にしてまさかの村上春樹『納屋を焼く』の映画化だ。日本公開は2/1とまだまだ先。一応年末にNHK通常放送でも短縮ドラマ版が放送されるのだが、恐らくようやく本編が始まろうとする90分付近で切られると思うので、是非とも劇場で観て欲しい。そんな異色の作品『バーニング劇場版』はカイエも燃えたようだ。

La suprême élégance de Burning, c’est de ne pas brûler tous ses vaisseaux à l’écran, mais de les laisser s’infiltrer dans les canaux les plus secrets de notre imaginaire.
ブンブン意訳:『バーニング』の最高なまでの優雅さは、スクリーンに映る全ての船を燃やし尽くすのではなく、我々の持つ想像力の隠然を極めたる運河へ浸透させます。

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5位:PAUL SANCHEZ EST REVENU!

監督:Patricia Mazuy
出演:Laurent Lafitte, Zita Hanrot etc

カイエ誌は唐突に、なんも変哲もない凡庸そうに見えるサスペンスやコメディをベストテンに入れてくることがある。今回その枠に選ばれた作品がこれ。10年前に失踪した男が突然現れたことによるサスペンス。予告編を観ると、フランスあるあるサスペンスにしか見えないし、カイエのコメントもキレを感じないのだが、どうも傑作のようです。アンスティチュ・フランセで上映された際には挑戦してみよう…

6位:ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書(The Post)

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス、メリル・ストリープ、サラ・ポールソンetc

ヌーヴェルヴァーグの王ゴダールが、スピルバーグに嫉妬し、事あるごとにツンデレを魅せる影響か、カイエは伝統的にスピルバーグフィルモグラフィー上、主流ではない作品を褒める傾向がある。具体的には『宇宙戦争』や『リンカーン』をベストテンに入れていたりします。今年は、多くの映画ファンを熱狂させた『レディ・プレイヤー1』に対して

On pourrait s’en amuser, mais la régression infantile des geeks n’est pas qu’une névrose pathétique, c’est aussi l’ajustement à tout un marché, économique et politique…
ブンブン意訳:我々は楽しむことができる、しかしオタクの幼児退行は哀れな神経症というよりかは、市場全体の経済的、政治的な調整にすぎません。

という形で☆1の酷評をした上で、本作を褒め称えました。

7位:夜の浜辺でひとり(밤의 해변에서 혼자)

監督:ホン・サンス
出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョetc

カイエ誌はどこもベストテンにホン・サンスを入れてくれないと拗ねているのか、毎年意地でもホン・サンスを入れてきます。フィリップ・ガレルとホン・サンスは、ベストテンの後ろの方でもいいので、とにかく入れるという強迫観念に取り憑かれているのだ。なので今年も無事ランクイン。恐らく、カイエがこちらよりも好きであろう『草の葉』は12/19フランス公開なので、今回は入りませんでしたが、ブンブンは断言します。来年のベストテンにはきっと『草の葉』を入れることでしょう。もしかすると、『川沿いのホテル』の方を入れる可能性もあるが、ホン・サンスが作品を作り続ける限り、カイエは彼の作品を讃えます。

8位:THE HOUSE THAT JACK BUILT

監督:ラース・フォン・トリアー
出演:ライリー・キーオ、マット・ディロン、ソフィエ・グロベル、ブルーノ・ガンツ、ユマ・サーマンetc


カイエ誌は映画雑誌だけに、表紙になった作品はベストテンに入れる傾向がある。今年は『犬ヶ島』という競合もあったが、見てください。このラース・フォン・トリアー回の本気の表紙!中身も、日本語にしたら数万字あるであろう大ボリュームで監督インタビューから考察までガッツリ書かれていました。星評を観ると観るに値しないと最低評をつける方も多かったのだが、無事8位に滑り込みました。この作品は、ブンブンも爆笑し、震え上がり、絶賛した作品。日本公開が早く決まりますように…(『ニンフォマニアック』の時とは違い、モザイクポイントは皆無だから配給しやすいとは思うぞ!)

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9位:Leto

監督:キリル・セレブレニコフ
出演:テオ・ヨー、イリーナ・スタルシェンバウムetc

今年のカンヌ国際映画祭で『バーニング劇場版』に並び批評家に好評だった話題作。キリル・セレブレンニコフ監督が、旧ソ連時代のロック歌手ヴィクトル・ツォイの人生を描いた作品で、何故かヴィクトル・ツォイ役を韓国人俳優テオ・ヨーに演じさせた意欲作だ。キリル・セレブレンニコフ監督は映画祭期間中、詐欺容疑で逮捕され自宅軟禁でカンヌ入りはできず、様々な憶測が飛び交ったのも後押しし話題となりました。フランス公開は12/5なのですが何故かランクインを果たしました。

10位:L’ÎLE AU TRÉSOR

監督:ギヨーム・ブラック

日本では『女っ気なし』で紹介され、エリック・ロメール系バカンス映画の新鋭として注目されているギヨーム・ブラック。今年は2本撮り、遂にカイエの目に留まりました。一本は2部構成の短編オムニバス『Contes de juillet』でもう一つはドキュメンタリーである本作だ。どちらもエリック・ロメールの『友達の恋人』の舞台にもなったリゾート地セルジー・ポントワーズを舞台にしている。カイエはどちらの作品にも満点をつけていることから、これから積極的に彼の作品を応援していくようだ。恐らく、来年のカイエ週間でも上映されるだろうから、チェックしておきたい作品である。

最後に…


いかがでしたでしょうか?実はブンブン11月にカイエ予想を出していたのですが6本的中となかなかいい線をついていました(ギヨーム・ブラックは惜しい!『Contes de juillet』を予想していました)。カイエの選出は、結構変な作品も多いが、ブンブンの好みも多い。来年も面白いベストテンが出ることを楽しみにしています。

カイエ・デュ・シネマベストテン記事

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“Ç”フランス版キネマ旬報「カイエ・デュ・シネマ」を読もう(2014年のベストテン)

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