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【ネタバレ考察】『アンダー・ザ・シルバー・レイク』と『バーニング劇場版(BURNING)』は同じ映画だった!

【ネタバレ考察】『アンダー・ザ・シルバー・レイク』と『バーニング劇場版(BURNING)』は同じ映画だった!

【ネタバレ考察】『アンダー・ザ・シルバー・レイク』と『バーニング劇場版(BURNING)』は同じ映画だった!

※本記事は、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督作品『アンダー・ザ・シルバー・レイク』と日本未公開作品『バーニング劇場版』のネタバレ記事になっています。どちらも鑑賞してから本記事をお楽しみください。

先日、公開されるや否や、絶賛と酷評が飛び交う賛否両論の渦を巻き起こしている作品『アンダー・ザ・シルバー・レイク』。ブンブンは若干酷評寄りの評価をしたのだが、他のノレなかった人とは違う観点でダメだった。それは、先日、釜山国際映画祭で鑑賞した『バーニング劇場版』とほとんど同じ作品だったということだ。『バーニング劇場版』は、村上春樹の『納屋を焼く』の映画化で、男の前に現れた謎の男の《納屋を焼く》という趣味に取り憑かれていくうちに、主人公の好きな女性が消えてしまうという話。

映画の中に隠された本質や引用、物語運びまでそっくりな2作品。『バーニング劇場版』の素晴らしさを前に、『アンダー・ザ・シルバー・レイク』のオマージュという名のノイズは非常に五月蝿く感じてしまう。ってことで、今回は2作品について比較していきます。尚、『バーニング劇場版』は既に日本配給が決まっているようで、来年には公開される模様です。なので、これは『バーニング劇場版』が公開されたタイミングで読むことをおすすめします。

ポイント1:『華麗なるギャツビー』という軸

両作品とも、劇中チラッとF・スコット・フィッツジェラルドの『華麗なるギャツビー』について言及される。しかし、どちらも物語の軸に強く関係している。『華麗なるギャツビー』とは、謎のセレブギャツビーについて惹かれた男ニック・キャラウェイが彼の謎を解き明かすミステリー。ギャツビーは、階級差故に結ばれることのなかった好きな女性の為に富豪に上り詰めたことが終盤明らかにされる。

それに対して、両作品は《ギャツビーになれなかった者の苦悩》あるいは《ニック・キャラウェイよりも低い位置から指を咥えて眺めることしかできない者の苦悩》が描かれている。『アンダー・ザ・シルバー・レイク』は、有名人になりたいと夢見る青年の前に魅力的な謎や事件が飛び散っているが、決して触れることができず、眺めるしかできないモヤモヤを描いている。『バーニング劇場版』は、貧しい田舎者が定期的に上京して都会を彷徨う。そんな彼の前に現れた富豪の人格者が、主人公の持っていないものを全て所有し、遂には彼が好きだった女性を奪い、妄想で我慢していたペットの猫まで奪われ、その嫉妬から富豪を追い回すようになる話だ。

ポイント2:目線の映画

両作品とも『華麗なるギャツビー』における、《憧れ》という側面を最大限引き出す為に、《目線》とそれが織りなす空間との関係を大切にしている。前者は、主人公サムの執拗な目線を圧倒的手数で表現している。彼はスクリーンを観る。そこには憧れの姿がある。自分も見られる側になりたいと思っているが、周りからは無視される。見られたとしても、スカンク臭い奴として冷たい目で見られてしまう。そして最終的に、好きな女性はスクリーンで拝むことができないという事実を受け入れて物語は終わる。サムの羨望の目に対し、煌びやかでサムを避けるように動く空間が魅力を引き出しています。『バーニング劇場版』の場合も同様に、都会に憧れる主人公を前にセレブの生活が繰り広げられているが、どこか疎外感を感じている。彼は《見ている》のに、誰も見てくれない。そして唯一、富豪だけが彼を見てくれるのだが、それが癪でやるせなくなっていく様子が魅力的に描かれています。

ポイント3:女性はマクガフィン

どちらの作品も主人公が好きな女性が消えてしまい、最後まで何故彼女が消えたのかが分からない仕組みになっている。通常の話であれば、この最大の謎を解決するのに、敢えて解決させない。それは、どちらも失踪事件の謎解きが重要なのではなく、失踪事件解明のプロセスで滲みだされる面白さに着目した作品だからだ。どちらも本当に描きたいのは、憧れに対して拗らせてしまった者の心情だ。

ポイント4:鈍重な物語運び

『アンダー・ザ・シルバー・レイク』は140分、『バーニング劇場版』も148分と長尺な作品となっている。これは、地を這うようにして生きる者の苦しさを観客に体感させる為の時間であり、本来であれば90分ぐらいに収まりそうな話が非常に長く引き伸ばされています。

最後に…

今回、2作品を比較してきて、一本の軸が見えてきた。それは、『ラ・ラ・ランド』のミアとセバスチャンように成功できなかったその他大勢の骸に向き合った映画だということ。それだけに、刺さる人にはとてつもなく刺さる映画出会った。そして、今回のカンヌ国際映画祭でどちらの作品もメイン部門で無冠に終わったのは納得がいく。恐らく、ケイト・ブランシェット他審査員には地を這いつくばる者の苦悩は分からなかったのだろう。また、サブ部門である国際批評家連盟賞を『バーニング劇場版』だけが獲ったのも納得がいきます。来年、『バーニング劇場版』が日本公開された時の反応が気になりました。名画座には、是非この2本立てを企画して欲しいものです。

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