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【釜山国際映画祭・ネタバレなし】『The House that Jack Built』《最悪》のエレクトリカルパレード

【釜山国際映画祭・ネタバレなし】『The House that Jack Built』《最悪》のエレクトリカルパレード

ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト(2018)
The House that Jack Built


監督:ラース・フォン・トリアー
出演:ライリー・キーオ、マット・ディロン、ソフィエ・グロベル、
ブルーノ・ガンツ、ユマ・サーマンetc

評価:95点


先日、釜山国際映画祭に行って来ました。今回最大の目玉は、Midnight Passionで上映のラース・フォン・トリアー最新作『THE HOUSE THAT JACK BUILT』です。Midnight Passionとは、BUSAN CINEMA CENTER HANEULYEON THEATERで23:59から3本立てする企画。

1本目はカンボジアのガン=カタ映画『THE PREY』で、2本目がマッツ・ミケルセンが南極でサバイバルする『ARCTIC』で、最後が本作となっている。どちらもサイコーに面白く、全く睡魔が襲ってこず、テンションアゲアゲな状態でトリアーのモンスター映画に挑んできました。

【釜山国際映画祭・ネタバレ】『The House that Jack Built』トリアー流、ドナルド・トランプ、ポリコレ批判


↑チケット引換所。レイトショー過ぎてコンセッションもやっていませんでした。



↑これがチケットです。それにしても1000円で3本立てって中々凄い。日本では絶対にありえない価格設定である。




↑会場に集まる人は、いかにも映画秘宝が好きそうな人だらけでした。映画館内は、まるで浅草公会堂。なので、したまちコメディ映画祭の映画秘宝まつりに近い雰囲気がありました。基本的に飲食禁止ですが、割と緩いのでみんな飲み物を持ち込んでいました。流石に、ポテチをおっ広げていた若者集団は、係員に怒られていましたw

『The House that Jack Built』あらすじ

殺人鬼ジャックの12年に及ぶ殺人譚を6つのパートで描いていく。ジャックは何故、人を殺すのか?彼は殺人の先に何を見たのかを描いていく…

ラース・フォン・トリアーは再び、モラルという殻に挑む…

ラース・フォン・トリアー監督といえば、一貫して常識やモラルで隠した人間の悪を暴き出すスタイルが有名だ。『メランコリア』がカンヌで上映された際にナチス擁護発言をして、出禁となったが、次の作品は正々堂々5時間に及ぶセクハラポルノ映画『ニンフォマニアック』を撮った。そして、今回も数年前から、「殺人鬼の映画を撮るよ☆」とカール・テオドール・ドライヤーの『吸血鬼』のオマージュ写真をチラつかせながら公言していた。にも関わらずカンヌは本作の上映を認め、結果として100人近い途中離脱者を出した。詰まる所、映画というのはポリコレとか云々の前に面白いかどうかが重要だと監督は訴え続けているのだ。

さて、今回もシニカルな面白さは健在だ。『ニンフォマニアック』がキェシロフスキの『愛に関する短いフィルム』なら、こちらは『殺人に関する短いフィルム』だ(トリアーの場合、《長いフィルム》といった方がよかろう)。

《最悪》のエレクトリカルパレード

ジャックという殺人鬼の半生を6パートに分けて描かれる。トマス・ピンチョンか、はたまたマルセル・プルーストか?ジャックの殺人に関する癖を、ゴーギャンやバッハ、ノートルダム大聖堂の建築構造から多角的に観察し、徹底的にジャックのサイコパスっぷりを暴き出す。これが、あまりにシュール過ぎて会場からはドッカンドッカン爆笑が巻き起こる。いつも通り、常軌の逸した世界観の構築が素晴らしい。また、マット・ディロンが、『ダークナイト』のジョーカー張りのサイコパスなオーラを常時チラつかせるので、観る者は「次には何が起きるんだろう?」とワクワクしながら観る。

そして、デヴィッド・ボウイの『Fame』がこれまた映画を盛り上げる…

しかし、本作を観るような人はどんな人か、ラース・フォン・トリアーは完璧に理解していた!

第3章から、ピタッと笑いがなくなる。その代わりに悲鳴が劇場を木霊し始めるのだ。「おめぇらポリコレって言葉嫌いなんだろ?じゃあ魅せてやるよ!これが本当のアンチポリコレを!」と、目を背けたくなるような惨事がエレクトリカルパレードのように次から次へと押し寄せて来るのだ。しかも意地悪なことに、カメラは十字架があろうと、子どもや弱者が悲鳴をあげようと決してぶれることなく、殺戮の一部始終を魅せていくのだ。そして何度もフラッシュバックして、同じ場面を繰り返し繰り返し観客に魅せつけるのだ。

ハードコアな映画に強い韓国の若者たちも10名程、この時点で離脱してしまいました。終盤になると、あまりの怖さにすすり泣く声が聞こえてきました。

そして、あとはラース・フォン・トリアーの掌で我々は転がされ、目の前の惨劇を指咥えて見守ることしかできなかった。

最終的に、我々は気付く。ラース・フォン・トリアーのからくり屋敷から、誰一人出られなかったことに。混沌の終着点で我々はすっかり、この作品の迷宮に閉じ込められてしまったのだ。一説によるとジャックはドナルド・トランプをモチーフにしてキャラクタライズされたようだ。日本公開したら、色んな人の考察を読みたいと思った。とにかく、最強最悪な大傑作でした。

【釜山国際映画祭・ネタバレ】『The House that Jack Built』トリアー流、ドナルド・トランプ、ポリコレ批判

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